情報処理学会・3日目からは、まずIPv6の特別トラックの中から「インターネット電話の現状と今後の展開」と題されたパネルディスカッションの模様をお伝えする。同セッションではいよいよ本格的な商用サービスが立ち上がり始めたIP電話に関して、ソフト開発者や通信キャリアの立場から今後の戦略に関する発表が行われたほか、IP電話の普及にあたっての問題点などについて活発に議論が交わされた。
○単に「安い電話」ではなく、他のサービスと融合したリッチなサービスを目指す
今回のセッションで最初の論点となったのが「IP電話は現在、単に『安い電話』として認知されてしまっているが、果たしてそれで良いのか?」という点。これについては各パネリストとも「単なる安い電話ではない、IP電話ならではのサービスを提供していく必要がある」という点で見解が一致した。
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| ソフトフロントの村田利文氏 |
ソフトフロントの村田利文氏は「IP電話事業者は今後ICSP(Internet Communication Service Provider)とでも呼ぶべき、電話とそれ以外のコミュニケーションサービスを統合したサービスを提供する事業者に移行する」と述べた。同氏はその理由として、単にインフラ整備やソフト開発が進むからというだけではなく、「ただ安いだけのIP電話では事業者はなかなか収益を挙げられないので、事業者としてはいろいろなサービスを上乗せすることで収益を挙げていかざるを得ない」という背景があることを指摘した。
続いてフュージョン・コミュニケーションズの平山義明氏は「サービスの開発という面でも、従来の電話は非常にギャランティ型かつ閉鎖的なサービスだったため新サービスの開発のハードルが高かったが、IP網に移行したことで新サービスの開発・提供が非常にやりやすくなる」と述べ、技術面においても新サービスの提供が比較的簡単に行えるため「従来の電話は完全に独立したサービスだったが、IP電話はIPネットワーク上の1サービスとして他のサービスと融合していく」との見解を示した。
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そして日本テレコムの奈須野裕氏は「日本テレコムの人間としてではなく一技術者としての見解」と前置きをした上で、緊急通話ができない・ユニバーサルサービスではない・悪意呼(いたずら電話など)の拒否機能がないなどのIP電話が現状抱える問題を挙げ、「現状では、IP電話は固定電話を100%代替できるものではない以上、固定電話にないサービスを提供することで発展していくしかない」と述べた。また奈須野氏は「現在のIP電話は『ブロードバンド回線を売るための販促ツール』でしかない」「サービスレベルが劣るものを売れればいいという姿勢で持ち上げるのはどうか」とも述べ、現在のIP電話ブームともいえる状況に警告を発した。
○IP電話の当面の課題はインタフェース条件と管理システム?
続いての論点は、IP電話がまず解決していかなければいけない課題について。前述のように固定電話にある機能でIP電話では実現できていない機能が数多い上、IP電話ならではの問題(事業者間の相互接続、管理システム等)もあり、まだまだ問題は山積している状況だが、"とりあえず片付けなくてはいけない問題は何か?" についていろいろと意見が出た。
まず奈須野氏が挙げたのが「インタフェース条件の確立」。同氏は現在のIP電話において、IP電話事業者同士が相互接続する際のネットワーク条件(NNI:Network Node Interface)や、ユーザが電話機を買ってきてIP電話網につなぐ場合のインタフェース条件(UNI:User Node Interface)がまだきちんと確定していないという問題を指摘し、「ユーザが量販店でIP電話用の電話機を買ってきて、ケーブルをつなげばすぐに電話が使えるようにするためには、最低限UNIの統一は行うべきではないか」と述べた。この点については平山氏も「UNIとしては事実上、SIP(Session Initiation Protocol)がその役割を果たしているとはいえ、SIPを採用している端末同士の相性問題が存在する」と述べており、SIPをベースとした詳細なUNIの策定の必要性を認めている。
また村田氏・平山氏の両名が挙げたのが、企業向けの「IPセントレックス型IP電話」の立ち上げ。村田氏は「企業ではVoIPとグループウェアの統合が進められる方向にあり、それにはIP電話と情報システムの管理を1カ所で集中して行えるIPセントレックスの導入が不可欠」「今年はIPセントレックス元年になるだろう」と述べた他、平山氏は同社で現在東京ガスなどに提供しているIPセントレックス型IP電話について「将来的にはWebアプリとの連携も考慮に入れている」と述べるなど、IPセントレックスにより企業内の情報システムとIP電話を積極的に連係させていけるメリットを強調していた。
ただひとつ気をつけておかなければいけないのが、IPセントレックスによる「管理の集中」が決して「トラフィックの集中」を意味するわけではないこと。最近ではMicrosoftが「Greenwich」の一機能として、IP電話やインスタントメッセージングによるトラフィックを全て管理サーバに集中させ、企業内での電話やメッセージングの内容を容易に記録することができるといったモデルを提案したりしているが、これについては3氏が共に「SIPの良いところは、セッションそのものはP2Pで接続されるためトラフィックの分散が図れる点にある以上、トラフィックを1カ所に集中させるのはその良さを殺してしまうことになる」と口を揃えてそのモデルを否定する見解を示していた。
○IP電話が普及しても固定電話はなくならない
最後に出たのが「IP電話の普及により固定電話、特に公衆電話はなくなるのか」という話題。まず固定電話については、奈須野氏が「現在の固定電話と同等の信頼性をIP電話に求めるのは難しい」との見解を示した上で「固定電話がなくなることは考えにくい」と述べたほか、村田氏も「現在の回線数の5~10%程度は固定電話のまま残るだろう」と述べ、固定電話の高信頼性を求めるユーザが一定数存在する以上、サービスとしては生き残るだろうという見解でパネリストが一致した。
一方、公衆電話については、奈須野氏が「現在は携帯電話や公衆無線LANなどさまざまな手段が普及しているし、NTT自身公衆電話については赤字であることを認めている以上、将来全廃される可能性もあり得る」と述べ、村田氏もその意見に同意したのに対し、平山氏は「サービスの公共性を考慮すると、公共の場所においてある程度の数は今後も確保しないといけないのではないか」と述べ、パネリストの見解が分かれた。これについてはどちらの意見も一理あり、現時点では何ともいえないところだろう。
(佐藤晃洋)
情報処理学会レポート
情報処理学会
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