全国大会の期間中、メディアホール1F大教室では、ウェアラブルコンピューティングをテーマとした特別トラックが行われている。2日目となる26日(水)は、15:30~16:30、ザイブナーの代表取締役山村道男氏による「ウェアラブルコンピューティングのビジネス展開」と16:30~17:30、キヤノンの田村秀行氏による「複合現実型情報強化環境―モバイル、ウェアラブル、ユビキタスの次にくるもの―」の2つの招待講演が行われた。
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| ザイブナー代表取締役山村道男氏 |
まず、ザイブナーの山村道男氏による「ウェアラブルコンピューティングのビジネス展開」では、ウェアラブルコンピューティングの特徴や効果といった一般論をはじめ、これまで同社が取り組んできたウェアラブルコンピューティングのビジネス展開に関する事例や現在、市場が抱えている課題、今後の見通しなどに関する紹介が行われた。
米国に本社を持つザイブナーは、1990年代の初めからウェアラブルコンピュータの分野に向けたマシンを提供し、産業界で用途開拓を進めてきたウェアラブルコンピュータの草分け的存在であり、ウェアラブルの特許を権利化した最初の会社でもある。米国で公告したのは1994年、日本で公告したのは1999年のこと。
山村氏は、「ウェアラブルコンピュータは、現在最も期待されている分野のひとつではあるが、ビジネス展開をしているところは少ない」と言い、まず米国ザイブナーがビジネスとして取り組んできたウェアラブルコンピュータの事例について説明した。
米ザイブナーが最初に開発したウェアラブルコンピュータは、戦車の整備や電子戦闘機といった軍事用途のもので、それを徐々に民生へ展開していった。
1994年、Windowsをベースに、コンピュータをハンドフリーで使える「MA(=モバイルアシスタント)」という商標の商品第1号「MA I」を提供したのを皮切りに、現在、2001年発売のMA Vまで続いている。また、Windows CEベースのマシンも開発しているが、腰につけるCPU、HMD(=ヘッドマウントディスプレイ)、フラットパネルディスプレイといった基本的な商品構成は変わっていない。
講演では、米ザイブナーが米国でビジネス展開した具体的な事例として、航空会社FedExの飛行機のメンテナンス作業に導入したケースやトラック製造会社やホテルで導入したケースなどが紹介された。
FedExの場合、短時間で複数の飛行機を離発着させなければならないが、飛行機の情報や技術マニュアルなどの文書を管理しているオフィスと飛行機を置いてある場所とは遠く離れており、しかも作業者は技術マニュアルを頻繁に見る必要があったため、作業者はオフィスと飛行機のある場所までを何度も往復しなければならなかった。そして、その膨大な時間のロスをどうにか削減したいと考えていた。そこで、ザイブナーのウェアラブルコンピュータを導入したところ、現場で、リアルタイムに機材の状況を把握したりマニュアルへのアクセスができるようになり、修理部品のオーダーもその場で行えるようになった。その結果、発着の遅れを削減できたという。
また、米国ヒルトンホテルでは、ホテルマンがフラットパネルディスプレイを使って宿泊客のチェックインをサポートすることで、顧客はわざわざフロントに行く必要がなくなり、チェックインのために顧客を待たせるといった問題が解消されたという。
企業だけでなく教育現場へ導入し大きな効果を上げたケースもある。自閉症で一言もしゃべることができない児童にウェアラブルコンピュータを持たせ、例えば、レストランなどで児童にコンピュータを使って自分でオーダーさせるなど、コミュニケーションツールとして応用したところ、周りとのコミュニケーションが取れるようになり、その結果、12歳の児童が生まれて初めてしゃべれるようになったという。
以上のように、ウェアラブルを使うケースとしては、ホテルのチェックインのようにほぼ常時使用の場合、保守点検などのように定期的な使用の場合、リモートメンテナンスや緊急医療などのように非常時に使用する場合の3通りが考えられている。
米国では数々の実績を上げているウェアラブルコンピューティングではあるが、日本市場での導入事例は、現在のところ数える程度しかない。山村氏は、今後はまず、産業用や業務用に特定用途のツールとして使われていくだろうと見ている。またそのためには、使い方(ソフトウェア)と機器(ハードウェア)の相互の発展が重要であり、将来的には、その使い方の一部がキラーアプリになって民生用途に発展していくだろうと予測している。
導入が期待される市場は、造船から航空/鉄道、防災、農業、医療、アミューズメントなど幅広いが、その中でも防災や農業のポテンシャルが高いという。
ウェアラブルでの作業内容には、情報を見る、情報を見て結果を入力する、情報を見て結果を入力しリアルタイムで音声画像通信を行なう、動くシステムコントローラとして働く、人間の機能の手助けをするなどが挙げられるが、将来的には、人間のよきパートナーとしての役割も担っていくだろうと山村氏は考えている。
また、ウェアラブルによる効果としては以下を挙げている。
・空間を超越することによる時間短縮
・個々の作業の精密な分析
・正確なフィードデータの収集
・特殊な場所での情報収集
・複数人での作業の軽減
・顧客満足
・個人満足
現在、まだまだ厳しい状況の日本市場だが、普及への突破口を見出すためには、
・見やすいHMDを開発すること
・センサや周辺機器など色々なものと接続するため、接続方法を統一すること
・小型・軽量化し、日本人の体型に合ったサイズにすること
・バッテリライフを十分な長さにすること
・防水、防滴、耐衝撃性
・用途に合わせたアプリケーションソフトの提供
などが重要なポイントとなるが、大いに検討する価値はあるとしている。
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(山田久美 k-yamada@pc.mycom.co.jp)
【情報処理学会レポート】ウェアラブル 招待講演(2) - ウェアラブル×ユビキタス=Mixed Reality?
に続きます
情報処理学会レポート
情報処理学会
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