【情報処理学会レポート】ウェアラブル特別トラック基調講演(2) - 服にコンピュータを取り入れる

      [2003/03/27]
    大阪市立大学 志水英二教授

    続いてふたつ目の基調講演として行われた、大阪市立大学工学部の志水英二教授による「ウェアラブルコンピューティングの可能性」では、ウェアラブルコンピュータの将来像に関する紹介が行われた。

    志水教授によれば、ウェラブルコンピュータは装着型よりも衣類型の方がより適しているという。ウェアラブルコンピュータの目的を、人間の仕事を24時間サポートすることとした場合、装着型では24時間のサポートは不可能だからだ。そのため、講演では、衣類へのコンピュータ応用に関するさまざまな提案が紹介された。

    まず、人がなぜ衣服を着るかということを考えた場合、衣類には 1.寒さなど外的環境から守る、2.羞恥心やプライバシーを守る、3.自己表現・装飾性・異性吸引、という3つの目的があるという。

    そのため、志水教授は、これら3つの目的を踏まえ、ウェアラブルコンピュータのアプローチ方法を考えていったというのだ。中でも志水教授が進めているのが、3番目の自己表現の分野。服にコンピュータを取り入れることで、今よりも鮮やかな自己表現が可能になるというのが志水教授の考えだ。そのため、服飾デザイナーなどとも積極的に意見交換を行っているとのこと。

    今後、例えば、恋人と一緒にいる時などに、服同士が通信し合って相手が誰であるかを判断し、恋人だとわかると、服が勝手に光ったり音楽を鳴らしたりして、ムードなどを演出してくれるといった服を作ることも技術的には可能だとのこと。

    しかしながら、志水教授は、現在の課題として、コンピュータシステムを身につけるにはシステム技術が未完成過ぎるという点を挙げている。

    例えば、以前、志水教授は、高所で作業をしている電力会社の作業員のために、ヘルメットにカメラをつけて、作業員同士がお互いの作業を見えるようにしたヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を開発した。ところが、作業員の安全のために作ったにもかかわらず、HMDが視野をさえぎることで、より危険が増してしまったという。HMDはウェアラブルデバイスの代表格と言われているが、一方で実用化にはほど遠い存在とも言われるのである。

    そのため、作業員のためのディスプレイとして、袖に有機ELディスプレイを縫い込むといったアイデアも出されている。それを医療現場へ導入することも検討されている。いずれ、医者が手術着の袖に装着したディスプレイを見ながら、手術をするといったことも行なわれるようになるだろう。単独の使用に限らず、HMDやそれ以外の新しいディスプレイと併用することも考えられている。

    また、服としてウェアラブルコンピュータを装着する場合、位置情報が検出できるようにすることで、用途は大きく広がる。位置情報の検出方法としては、1.GPSを使う、2.携帯電話やPHSを使う、3.自律型位置検出を行なう、という3通りが考えられる。しかし、1.GPSを使う場合、屋外の時は有効的だが室内では受信できないという欠点がある。そのため、2.PHSなどを使うというのが、非常に有効的だと考えられている。また、3.自律型位置検出とは非常に高機能の万歩計といったイメージで、動き回るコンピュータの位置を的確に検出することができるというもの。現在、志水教授は、自律型位置検出を利用した知的消防衣に取り組んでいる。常に危険と隣り合わせである消防士の制服に、位置検出が可能な機能や生理センサを取り付けることにより、消防士の現在いる場所がリアルタイムに把握できるほか、生理センサからの情報により、消防士の現在の健康状態がわかり、現場の安全性などを把握ことができるという。

    一方、HMDでなければできない分野もある。例えば、加齢黄斑変性の場合である。加齢黄斑変性とは、高齢化によって網膜の一部が機能を果たせなくなることで、視野の一部が抜けてしまい見えなくなるという、一種の老化現象。しかし志水教授は、HMDを応用したメガネを開発し、機能を果たさなくなった網膜とは違うところに映像を写すことが可能であることを実証している。

    つまりウェラブルコンピュータは、障害者を救うことができるツールにもなり得る。また、ウェラブルコンピュータが21世紀の基幹技術となり得るためには、必需品を作ることが最短の道であるとしている。

    (山田久美 k-yamada@pc.mycom.co.jp)

    【情報処理学会レポート】ウェアラブル特別トラック基調講演(1) - 自然や機械もコンピュータを着る
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/27/29.html

    情報処理学会レポート
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/03/27/01.html

    情報処理学会
    http://www.ipsj.or.jp/

    東京大学 環境情報学研究室
    http://www.itao.pe.u-tokyo.ac.jp/

    大阪市立大学 電子回路研究室
    http://www.ec.elec.eng.osaka-cu.ac.jp/

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

        イチオシ記事

        新着記事

        特別企画

        マイナビニュースマガジン