【インタビュー】Pentium Mの父、David Perlmutter氏に尋ねる(2)

○VAIO U101に搭載されたCeleron 600AMHzとは一体?

--話は変わりますが、昨日Celeronについて質問がありましたよね?で、貴方はCeleronは将来の計画としてはあるというお答えでした。ところでSONYは新しいVAIO U101をリリースしましたが、これにはULV Celeron 600AMHzが搭載されています。これはPentium Mベースのプロセッサの様ですが、で、これは何でしょう?

それはSONYに聞いてくれ(笑)

--Intelとしては特にコメントはない、と? (横からインテルの広報担当氏が)現状公開しているのは、130nmプロセスを使い、512KBのL2キャッシュを搭載し、400MHzのFSBを搭載したCPUと言うことだけです。

うん、彼に聞いてくれ(笑)

--貴方からも是非(笑)

ノーコメント(笑)

--ちょっと個人的な質問ですが、ULV Pentium M 900MHzはTDP 7Wですよね? これだと、例えばこのノート(CASIO FIVA206VL)に入れるにはちょっとだけTDPが高すぎます。このノートはTransmetaのTM5600を使っているんですが、正直言ってちょっと遅い。もしIntelがこのノートに入るようなプロセッサを正式に出してくれたら大変嬉しいのですが、そういった予定はないのですか?例えば700MHzとか800MHzのULV Pentium Mですね。

我々は、Pentium Mを全てのセグメントで展開する。

--それはつまり、このサイズのノートでも、現状のULV Pentium Mが利用できるという意味ですか?

あー、(そのノートの)詳細なスペックは知らないのだが、OEMメーカーはそうした事に対処できると思う。

--それはつまりVAIO U101の様に?

その通りだ。

--Celeronのその他のバリエーションについては、教えてもらえないんですよね?(笑)

公開できる情報は、昨日発表したことが全てだ。我々が情報を公開するのは、OEMベンダーがそれを使った製品を出荷してからだ。それがIntelのスタイルだ。大変に競争力があり、大変に良い。日本のノート市場に最適な製品だと思うよ。メーカーが製品の出荷を開始したら、我々も情報を公開するよ。で、次の質問は?(笑)

○90nmプロセスとPentium M、Mobile Pentium 4とMobile Pentium 4-M

--昨日、現状の130nmプロセスのPentium Mのクロック向上についてお聞きしましたが、その時の答えは「130nmで無理にクロックを上げる努力をするより、もうじき登場する90nmプロセスを使えば簡単にクロックが上がるわけで、より経済的だ」という返事でした。

その通り。90nmプロセスは、現状の130nmプロセスのものより、より高速に動作する。Intelはこれまでも、プロセスを進化させることで、前の世代よりも高速動作させることに成功してきた。これを当てはめて考えれば、Dothan(次世代Pentium M : コードネーム)はBaniasより高速に動作するのは間違いない。勿論、ではどの程度の周波数でDothanが動くかという数字は、今日は明かせないが。

--いやそこまで先の話をしているわけではなくて(笑) 1.7GHz動作のPentium Mは、130nmの世代で実現できるんでしょうか?それとも90nmプロセスに移ってからになるんでしょうか?

我々が公開しているのは、1.6GHz動作しているということであって、将来の製品の詳細を語ることはできない。ただ、1.6GHzというのは、130nmプロセスの最高速という訳ではない。というのは、この業界では学習曲線というものが重要である。新しいアーキテクチャ、あるいは新しいプロセスの場合、最初は学習曲線の初めの方にいることになる。ところがその後、どんどん学習曲線の真中の方に移動してゆき、次第に性能が上がってゆく。Intelはこの学習曲線に則って、毎四半期ごとに動作周波数を上げてゆける能力がある。我々の設計チームはプロセッサの設計やプロセス技術のチューニングを行っており、より高速な製品をリリースし続ける事で、競争力を保ち続けられる訳だ。プロセス技術自体も2年毎に進化し続ける。2005年には65nmプロセスが登場するし、その時にはより高速で、ローパワーの、より良い製品がIntelから出ることになるだろう。

--話はまた変わりますが、セグメント分けの図で、トランスポータブル、あるいはフルサイズノートブックのマーケットには引き続きMobile Pentium 4-Mが使われるという話がありました。ちょっと確認したいのですが、このマーケットに使われるのは、Mobile Pentium 4-MとMobile Pentium 4のどちらでしょう? いくつかのOEMベンダーから、Mobile Pentium 4-Mとは別に、-Mの付かないMobile Pentium 4という製品がこのマーケット向けにリリースされるという話を聞いたのですが。

多分それは混乱しているんじゃないかな?昨日の発表では私もしばしば間違えたが(笑)、正式な名称はMobile Intel Pentium 4-Mであって、-M無しの製品はない。全く同じものだよ。2種類の製品は無い。

○Enhanced Speed Step - 適切な周波数とは 新に採用された3つの分岐予測

--話をテクニカルな方向に戻します。Enhanced Speed Stepに関してですが、現状では600MHz/800MHz/1GHz/1.2GHz...という具合に200MHz刻みで変化します。これを例えば100MHz刻みにせず、200MHz刻みとしたのは何故でしょう?

技術的な観点で言えば、任意のスピードにすることは可能だ。ただ、ただ複雑さを最小限にするためには、200MHz刻みの方が好ましいと判断した。実際、100MHz刻みとしても、平均の消費電力にそれほど大きな違いはない。しかも、100MHz刻みとすることでより複雑さが増し、設計に時間が掛かり、バグも増える。200MHzというのは良い判断だと私は思っている。これを100MHz刻みとしても、バッテリ寿命が数分増える程度だと思うよ。これは設計の複雑さとバッテリ寿命のトレードオフであって、技術的というよりはビジネス上の判断だ。例えば全ての周波数を連続的に変化させることも可能だが、それをするとものすごく複雑さが増す。エンドユーザーにとっては、リーズナブルな金額で長いバッテリ寿命が手に入る事が重要だからね。

--もう一つお聞きしますが、最低の周波数が600MHzなのは何故でしょう?例えば300MHzとか400MHzとか、もっと色々選べるはずですが。

多分これも設計の複雑さに起因すると思う。多分メモリのスピードや演算性能などとのバランスの観点から決められた筈だ。実際、この周波数における平均消費電力は非常に低いからね。どんな数字になるにしても、それはエンジニアリングあるいは経済性の観点から検討されたものである筈だ。勿論もっと下げることは可能だが、それにはよりコストが掛かることになるだろう。ここで、開発のコストと製品のコストは分けて考えて欲しい。製品のコストはトランジスタの数に関係し、これは余分な消費電力となる。低い周波数で十分な性能を確保するために余分なトランジスタを使うと、それは消費電力を上げることに繋がる。これは別にBaniasに限った話ではないがね。

--次にAdvanced Branch Predictorについてお伺いします。これはBi-Modal、Local、Globalの3種類から構成されていますが、このうちGlobalについてもう少し詳細を教えて欲しいのですが。

あー、これに関しての詳細は実は知らないので(笑)、もし興味あるなら戻ってから調べて返事をしよう。

--なぜかというと、Mooly Eden氏が確かMicroProcessor Forumで多少詳細を公開したのですが、その際にLoopの検出を行っているといった話があったので。

確かにその通りだ。これに関する細かい話は今は判らないので、後で返事を送る。ただ一般的に言えば、分岐予測は正しい分岐の履歴を使ってプログラムを正しく動作させる仕組みだ。異なるプログラムは異なる分岐の仕方をする。例えば簡単なループなら、それはローカルでぐるぐる廻るだけだ。Do(true)なんてループなどはこれにあたる。こうした場合、分岐予測は100%に近い確率で成立する。これに対し、Globalは大域ジャンプ、例えばサブルーチンとかライブラリのCallなどがこれにあたる。こちらは分岐がもう少し複雑で、飛び先は煩雑に変わるから予測が難しく、しかも(予測に)失敗するとCPU時間を無駄にする。我々のアーキテクチャチームは、これを認識して解決するようなメカニズムを色々研究している。分岐予測がうまくいけば、パイプラインはスムーズに流れ、CPUは効率的に処理ができるからね。これはそのまま無駄な消費電力を減らすことになる。

--確かにこれは判ります。で、この分岐予測メカニズムをPentium M以外の、例えば将来のPentium 4などに組み込むという事はありえるのでしょうか?

勿論! Intelでは、アーキテクチャ間で情報の共有を行う事になっているから、可能性は十分ある。

--では例えば近く登場する、例えばPrescottはこれと同じ分岐予測メカニズムを持つとか?

そこまでは知らない。そもそもPentium Mで必要とするアーキテクチャが他のアーキテクチャでも必要とされるとは限らないからだ。それに異なるパイプライン構造だし、異なるテーマで開発されているから、少なくとも同じメカニズムを持っていってもうまく動作しないだろうね。可能性としてはありえるかもしれないが。

--話題が外れますが、将来のプロセッサ開発において、ItaniumではCMPの方向性が述べられていますが、あなたとしてはシンプルなコアをダイに複数搭載するといった方法と、複雑なワンチップのプロセッサを作るのと、どちらが望ましいと思われますか?

いい質問だが、答えたくないな(笑)。サーバーとモバイルでは、異なるプロセッサが必要だと思う。というのは、利用するアプリケーションの種類が異なるからだ。それにサーバーは巨大なもので、モバイルはかなり小さいものだからね。勿論、将来のプロセッサのことを考えるといろいろな可能性があるから、ちょっと現時点では答えるのは難しいな。

--モバイルマーケットではマルチプロセッサの機能は不要、と考えておられます?

いやいや、そうは思わないよ(笑)

--最後に、我々の読者になにかコメントをいただけませんか? あ、「Centrinoを買え」というのだけは勘弁してください(笑)

Centrinoは最初からモバイル向けに設計をされた製品だ。我々はCentrinoをこのマーケットに最適化している。私はあくまでもエンジニアなので、その観点から言わせていただくと、モバイル向けマーケットにのみフォーカスして開発を行ったことで、大変良い製品が出来上がったと思っている。我々は、必要と考えた機能を全て盛り込んだと判断している。モバイル向けには最適な製品だと思う。

(大原雄介)

【インタビュー】Pentium Mの父、David Perlmutter氏に尋ねる(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/13/43.html

【特集】 Centrino - パフォーマンス・消費電力・そのすべてに迫る
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2003/centrino/

【レポート】世界一周Centrino発表イベント、最後はビジネスの街NYを占拠
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/13/36.html

【レポート】「モバイルに革命を起こす」 - Centrinoの発表イベントが開催
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/12/08.html

【レビュー】初モデルチェンジしたVAIO Uは驚嘆・快適! 進化したPCだ - ソニー バイオU PCG-U10
http://pcweb.mycom.co.jp/pcbuyers/review/2003/vaiou101/

Intel
http://www.intel.com/



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