【インタビュー】Pentium Mの父、David Perlmutter氏に尋ねる(1)

中央がVice President, Mobile Platform Group, General ManagerのDavid Perlmutter氏、左がTechnical Assistant to the Vice President/General ManagerのEyal Davidovits氏、右がインテル株式会社でプラットフォーム&ソリューションズ マーケティング本部 モバイル&ワイヤレス マーケティング モバイル&ワイヤレス マーケティングマネージャのRobert Young氏

12日に行われたCentrinoの発表イベント(【レポート】「モバイルに革命を起こす」 - Centrinoの発表イベントが開催)のために来日したDadi Perlmutter(ダディ・パルムッター)氏に、直接インタビューを行う機会を得ることが出来た。氏は同社モバイル・プラットフォーム事業本部 副社長 兼 事業本部長であり、イスラエル開発センタ担当部長を兼任する人物。

大変タイトなスケジュールの中、長時間のインタビューに応じて頂くことができたので、ここでその全部をご紹介したい。ちなみにインタビューにはPerlmutter氏の他、Eyal Davidovits氏とRobert Yang氏が同席した。

○開発は4年前からスタートした

--まず最初にイスラエルR&Dの役割を説明してください。

基本的にはPentium M CPUや855PMチップセットの開発が我々の使命だ。

--何人位の人間がこれに携わっているのでしょう。

何百人という単位になる。

--私の記憶では、TimnaがイスラエルR&Dの最初の製品で、Banias(Pentium Mのコードネーム)は2番目という認識なのですが、これで正しいでしょうか?

大まかにはその通りだが、多くのIntel関連製品を他にも手がけてきた。x87系FPUやx86など、例えばPentium/MMXやMobile Pentium/MMXの開発も行ってきたし、その後にTimnaがあってBaniasに続くという感じになる。

--Pentium Mの開発はいつ頃始まりましたか?

そう、大体4年前になる。MicroProcessorの開発には、かなり時間がかかるものだからだ。ただ、最初はIntel社内での共同開発であって、単独での設計が始まったのは2年前になる。

--確かに何もないところからMicroProcessorを作るのには時間がかかります。ただ、Pentium MはPentium IIIをベースにしているので、普通ならそれほど時間が掛からないように思うのですが、いかがでしょう?

なぜかというと、Pentium IIIをベースにしていないからだ(笑)

--Timnaは確かKatmaiコアをベースにしていたと思うのですが、Baniasはそうではない、と(笑)

Baniasはモバイルのための新設計だ。

--では、例えばCoppermineとか、Mobile Pentium IIIをベースにしたという訳ではない?

そうではない。

--そういえば2001年秋のIDFで流されたビデオクリップの中のフロアプランと、現在のフロアプランがだいぶ違いますが。

2001年秋のIDFで流されたビデオクリップ 解説しているのはGeneral Manager, Israel Development Center, Mobile Platforms GroupのMooly Eden氏

その時どんなビデオが流れたか覚えてないんだ(笑) ただ、同じ製品であることは間違いない。一般にMicroProcessorの開発は非常に複雑で、長期間かかる。まず仕様を決め、設計を行い、試作をして、デバッグを社内で行い、顧客の所で試してもらい、こうした全てのシーンで問題があれば修正を行ってゆくわけだ。だから、2001年の時点で見たものが、今のBaniasと同じモノであることは間違いない。我々は今もプロトタイプの設計を行っており、これは2004年とか2005年とかに製品化を行う予定だ。そして、この2月には、2006年に製品化を予定するモノの設計を開始した。その意味では、我々はPCベンダーからの要求を非常に歓迎している。これは非常に辛く、困難な作業ではあるがね。

○Pentium Mの内部構造は - メインテーマは効率的な処理

--ところで、現状、Pentium Mの内部構造は殆ど明らかになっていません。7つの特徴、つまりAdvanced Branch Prediction、Dedicated Stack Manager、MicroOps Fusion、400MHz FSB、1MB L2キャッシュ、SSE2、Enhanced Speed Stepは公開されていますが、それだけです。それ以外の特徴、たとえばパイプラインの構造とかステージ数、実行ユニットの数、同時処理命令数、などに関しての情報は相変わらず不明のままです。こうしたことについて、何か教えていただけませんか?

確かに我々は(そうした情報は)公開していない。結果を見れば性能の高さは明らかだからね(笑) 結果は、Pentium IIIと比べて40~50%高速であることを示しているし、これだけの性能差があればMicroArchitectureが全く異なる世代の製品であることが明白だからだ。実際、かなり異なっている。並列性や命令処理効率などは大幅に上がっている。大容量キャッシュや多くの省電力技術……結果が物語っているよ(笑)

--いやそれはそうなんですが(笑) 例えば昨日の質問で、ある種のベンチマーク、例えばSYSMark2002ではPentium Mの成績が悪いという話がありました。こうした成績の高低は、MicroArchitectureの違いに起因するものと考えてよろしいですよね?

その通り。ただ、MicroArchitectureは進化する。最初に作る製品(つまりBanias)から全てを望んだら、結局何も手に入らなくなるからね。だから、今回は現在のモバイルユーザーにフォーカスを当てる事にした。そして将来は、モバイルユーザーがもっとコンテンツ生成を普通に利用するようになると信じているし、その時には進化したMicroArchitectureを搭載したプロセッサで、もっと良いベンチマークの結果が出ることになる。約束するよ(笑) ただ、今はこれ以上話すことは出来ないんだ。

--それは判るんですが(笑) 我々の読者にとって一番重要なのは結果なんですが、次に興味を持つのは「どういうメカニズムなのか」という話でして。「どういう構造なのか?」とか「既存の製品からどう変わったのか?」という読者の関心に対し、私はどう答えたらいいんでしょう?(笑)

パイプラインの段数に関して言えば、Pentium IIIにかなり近い。Pentium 4のHyperPipelineよりもスマートだ。ただ、より並列動作をさせやすくなっている。ちょっと例を挙げてみよう。分岐予測、MicroOps Fusion、スタック管理、その他の機能はすべて見直しをした。リオーダバッファにも変更を加えている。全ての機能は更に効率が上がり、より有効に処理を行えるようになっている。ちょっと例を挙げてみよう。Pentium IIIの主要な原理は、アウトオブオーダ発行/完了による処理効率の向上だ。Pentium 4では、とにかく処理クロックを高速にする事をテーマにしており、その改良は現在も続いている。Pentium Mは、その中間のアプローチだ。Pentium MはPentium IIIより高速なコアだが、より投機実行に関して洗練されている。というのは、投機実行はしばしば電力の浪費になるからだ。Pentium Mの全てのメカニズムは効率的に処理を行う、という事に特化している。だから消費電力を無駄に浪費することはない。目的の処理を最小の時間で行い、あとは待機するというのがPentium Mのテーマだ。このために、多くの技術や機構を費やしている。

--実は私も既にいくつかPentium Mのテストを行いました。Advanced Branch Prediction、MicroOps Fusion、Dedicated Stack Managerの3つに関しては、確かに効果があることは確認しています。ただPentium Mが高速な理由を説明するには、この3つの結果だけでは不十分なのですが。

全部を喋ると、競争相手が喜ぶだけなので(笑)。細かく語ることは出来ないが、とにかく色々なことをやっている。例えば大容量キャッシュもその一例だ。ただ、今のプロセッサというものは、そうした個々の詳細をいくら語っても、全体を語ったことにはなれないほどに複雑だ。だから、私は先に述べた通り、テーマを述べるほうが適切だと思っている。例えば、MicroArchitectureに関してはPentium IIIとは異なったテクノロジーだが、プロセスに関しては同じ130nmプロセスを使っている。でも、Mobile Pentium III-Mは1.2GHzまでしかいかないが、Baniasは最初から1.6GHzでスタート出来ている。これは、アーキテクチャを変えたから可能となった訳だ。パイプラインに関してもより高速に動作するようになっているが、メインテーマは効率的な処理だ。

--ところで、Pentium Mは4トランジスタ構成のSRAMセルを使っていますが。

いや、Pentium Mは6トランジスタ構成だ。(ここでキャッシュのプレゼンテーション(※1)を見せる)

(※1 【特集】新モバイルプラットフォーム Centrino - パフォーマンス・消費電力・そのすべてに迫る のPhoto34を参照)

--おお、知らなかった(笑)。で、以前Mooly Eden氏(*2)に「Intelは普通、信頼性の確保のために6トランジスタ構成にしていますが、何故Baniasは4トランジスタ構成なのですか?」と聞いたところ、「Baniasは他の方法で信頼性を確保しているので、4トランジスタ構成で大丈夫」と言う返事が返ってきました。この信頼性を確保した方法についてもう少し教えていただけませんか?

(※2 General Manager, Israel Development Center, Mobile Platforms GroupのMooly Eden氏。【MPF 2002 レポート】Baniasの詳細が更に明らかにを参照)

いや、私は(4トランジスタ構成と聞いて)驚いているほどだから(笑)

--でもこれはIntelのプレゼンテーション資料ですよね?(笑)

そのようだ(笑) (横からDavidovits氏が)私はこの資料を持っている(笑) あー、確かに4トランジスタ構成だね(爆笑)。これに関しては戻ってから調べて返事をするよ。ただ私は、Pentium Mは、他のCPUと同等以上の信頼性を持っていると確信しているよ。ところで、良いキャッシュデザインじゃないか(笑)。

(大原雄介)

【インタビュー】Pentium Mの父、David Perlmutter氏に尋ねる(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/13/44.html
に続きます

【特集】 Centrino - パフォーマンス・消費電力・そのすべてに迫る
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2003/centrino/

【レポート】世界一周Centrino発表イベント、最後はビジネスの街NYを占拠
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/13/36.html

【レポート】「モバイルに革命を起こす」 - Centrinoの発表イベントが開催
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/12/08.html

Intel
http://www.intel.com/



人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事