【インタビュー】数々の「ものづくり」職人芸が光る新バイオ(3)

      [2003/03/12]

    ○ロゴに関する試行錯誤

    --天板に埋め込まれたロゴも美しいですね。

    腕時計の文字盤のような質感を"VAIO"のロゴにも

    安形) U101に貼ってある光沢のあるロゴは、(腕時計の部品である文字盤のシートを取り出して)これをヒントにしたんですよ。本当は、2000枚作った中で使えるものは1枚しかないという、ロレックスの文字盤がほしかったんですけどね。2000枚のうち1999枚は捨ててしまうので「それください」と言ったんですが、ダメでした(笑)。ヘアライン処理をしたロゴとか、溝を掘ったロゴとかも作ってみたんですけど、最終的には光沢のあるものを選びました。でも、この光沢タイプを作るのが一番難しいんですよ。1シートに何枚かのロゴを一度に作るんですけど、ヘアラインのは1シート全数が良品なのに、光沢だと1シートのうち数枚しか使えるものが取れない。

    --Zのロゴはヘアライン処理で、U101のロゴは光沢というのは、どういう選択なのでしょうか。

    片岡) U101の場合、バイオのロゴを大きくして目立たせるのではなくて、何らかの価値のある仕上げにしてあげれば、より小さく高級感を出せる。大きいけど薄く浅いものよりも、小さくても密度のあるもののほうが、価値としては高いのではないかと思って、この素材を選びました。Zは元々ボディがシルバーなので、そこに光沢の強いロゴを乗せると「キラキラ」というより「ギラギラ」になってしまいます。

    安形) マグネシウムに対してこの光沢を貼るというのも初めてで、接着剤とか加工法とかに工夫を重ね、試行錯誤の連続でした。試作した後、ちゃんとくっついているか確認するために、ロゴの上にテープを貼ってビーッとはがすんです。はがしたとき、テープにくっついてしまってはダメと。だからこれの設計者は毎日毎日ひーひー言いながらテープを貼ってははがしてまた貼ってははがして……。設計の部署にはロゴのはがれたフタがたくさん転がっています(笑)。量産直前くらいになってようやく、はがれないものができました。

    Zのロゴはヘアライン処理の入ったアルミ素材。1枚1枚手作業で貼り込んでいる

    光沢のあるU101のロゴは、腕時計の文字盤にも使われているニッケル素材

    ○ものづくり精神からにじみ出る、一見では分からない数々のこだわり

    片岡) Zではパワースイッチにもこだわりました。パソコンのパワースイッチって、はっきり言ってショボいじゃないですか。だけど、シンプルな中でここだけは飾りを付けて、1日1回の儀式というか、起動するときのワクワク感というか、「これから始まるぞ」という気持ちを演出してみました。

    安形) U101は、実はバイオで初めて、どこから見てもネジが見えない作りになっているんです。立って使うと底も見えてしまうので。

    片岡) LANポートのフタも、ただ丸を描いたように見えますが、丸の上側が少し切れていて、開けるときに指をかけられるようになっているとか。あと、ゴム足が二重丸になっていますが、内側の丸はすこしくぼんでいて、ツルツルしていて、グリップしたときに人差し指の先が当たって少し気持ちいいという。

    色の境目に合わせて、円形のフタの上部をわずかに切り取ることで、開くときのきっかけに

    ゴム足の二重丸の内側はツルツルしていて、無意識のうちに指先で触れてしまう

    --言われないとたぶん誰も気付きませんよね。でも、気付かないけど、無意識のうちに人差し指がこのツルツルの部分を触ってしまう。

    安形) ここまでデザインされたゴム足というのは、僕も初めてですよ。言われなければ気付かない。でもそれでいいと思うんです。嫌なことってすぐ分かるものですが、良いこととか快適なことというのはなかなか分からない。そういう意味での「いい製品」にしていきたいなと思っています。

    よく見るとパーティングラインまでもが連続している。そして、シンプルなデザインの中で唯一飾りのあるパワースイッチ

    片岡) あとZもU101も、液晶の開きを推奨角度にすると、パーティングライン(部品の合わせ目)がつながるようになっている。たぶん遠目には全く分からない。けど、これもこだわり。デザイナーや設計者がちょっと気を利かせるだけで解決できるものってたくさんあると思うんです。

    --ユーザーの想像を超えたこだわりと職人芸、まさに「ものづくり」の世界を体現したのが今回の2製品というわけですね。

    佐野) バイオの開発も、ウォークマンやってる人間とか、ハンディカムやってる人間とかが集まって、いいところをひとつの製品に注入するというものなので。本当は、そういうノウハウを文書で残していければいいんですよね。でも、図面だけでは表せない何かがあって。だから、下の世代に口で伝えていくしかないなというところです。コスト削減のため海外で生産するような製品もあるかと思いますが、それで伝わるのは図面にあるスペックだけであって、我々が求めているのはそこではない。スペックだけでは語れないところを求めています。

    藤田) 工業製品というのは、1回作れば同じ物ができるはずなんですけど、作る時点で、作る人の意志とか心の持ちようとかセンスとか気合いの入れ方とか、最終的にできあがる物はそれによってしまう。ボタンだから押せればいいとか、それなりの場所にあればいいとか、それでも作れるんですけど、でもそうじゃいけないと思うんです。今回は特に「持つ喜び」のようなコンセプトを前面に出しているので、時間の許す限り、自分が納得行くまでこだわった製品になっています。

    バイオノートZ、バイオU101を作りあげたソニーの"職人"の皆さん。

    後列左:バイオUプロジェクトリーダー 安形顕一氏
    後列右:バイオノートZプロジェクトリーダー 藤田賢治氏
    前列左:デザイン担当 片岡哲氏
    前列右:バイオノートZメカ設計担当 佐野光邦氏

    (日高彰)

    【インタビュー】数々の「ものづくり」職人芸が光る新バイオ(1)
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/12/09.html

    ソニー、銀色のSXGA+「バイオノートZ」と新バイオU「バイオU101」を発表
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/12/17.html

    ソニー バイオ
    http://www.vaio.sony.co.jp/

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