【IDF Spring 2003レポート】「ムーアの法則」+「メトカーフの法則」の相乗効果

      [2003/02/24]

    なぜIntelはコンピューティングと通信機能の"コンバージェンス"(融合)を進めているのか? 最終日に行われたIntel CTO、Pat Gelsinger氏の基調講演では、その理由に焦点が当てられた。

    同氏は、コンバージェンスの試みをマイクロコンバージェンスとマクロコンバージェンスに分けて説明した。マイクロコンバージェンスは、複数の技術や製品の統合によって、コストが引き下げられ、新たな製品や機能が生み出されることを指す。例えば、スピーカー+マイク=ヘッドセット、PDA+携帯電話=Handspring Treoなどだ。一方、マクロコンバージェンスは、マイクロコンバージェンスによって、新たな利用モデル、インフラ、ビジネスモデルなどに広がる様子を示している。例えば、エンジン+荷馬車=自動車の誕生によって、高速道路システムが整い、トラック輸送やレンタカーなど新たなビジネスが生まれ、そして人々の生活範囲も飛躍的に広がった。

    さて、Intelがマイクロコンバージェンスを担うことで、どのようなマクロコンバージェンスが起こるのか。その可能性の一つとして、医療分野での試みが紹介された。ゲストとして登場したのは、Intel ResearchのProactive Health ResearchのディレクターであるEric Dishman氏だ。同氏は、医療分野での半導体技術の可能性を検証するために15人の社会科学者を率いている。Intelと社会科学者という組み合わせは意外な感じがするが、Dishman氏が率いるグループは高齢化による医療コストの増加を解決するソリューションを研究しているのだ。

    2050年時点での、60歳以上の高齢者の割合を現したマップ。日本は30%強

    ベビーブームの影響で先進国はどこでも高齢化問題を抱え始めている。米国の場合、2010年には半数の家庭で高齢者の面倒を看るようになるそうだ。「自ら進んで施設に入りたいという人はいません。それに自宅で高齢者の面倒を看られるようになれば、医療コストの大幅な削減にもつながります」(Dishman氏)。

    壇上には5台の小型カメラを設置したリビングルームが作られていた。Gelsinger氏がリビングルーム内を動き回ると、ビデオデータからGelsinger氏の動きがリアルタイムで分析され、マップに反映される。


    5台のカメラによってGelsinger氏の動きが分析され、上の画面に表示されている

    このように人の動きはかなり正確に認識されるのだが、難しいのは日常の動きと非日常の動きを正確に判断するプログラムを作ることだと言う。例えば、対象者がガスコンロの前で立ちつくしていた場合、それがガスコンロの使い方を思い出せなくなって困っているのか、それとも手の込んだ料理を作っているのかをコンピュータが正確に判断するのは難しい。

    だが、このデモを見て、米アルツハイマー協会が強い興味を示し、すでに同協会の協力を得た研究がスタートしているという。「アルツハイマー症の患者がいる家を訪問すると、家中に注意書きが貼ってあるのに驚かされます。例えば"ひげを剃るにはまずお湯を出す"、"知らない人を家には入れない"などです。こういったケースではコンピュータがより効果的に注意をうながしたり、警告を発したりすることができるでしょう」(Dishman氏)。

    薬の飲み忘れも医療コストを引き上げる要因になっているそうだ。この点についても、患者がテレビの前に座ったら、画面に飲んでいない薬が表示されるというようなソリューションが考えられる。このようにはっきりと非日常が認識できる部分を中心に、Intelはトライアル・プログラムをスタートさせるという。

    Gelsinger氏がテレビを見ようとするとアレルギーの薬を飲むように画面に指示が出た
    アルツハイマー症患者をかかえる家庭に貼られていたという注意書き

    Dishman氏につづいてIntel ResearchのBiotechnology ResearchディレクターであるAndy Berlin氏が登場した。社会科学者の次はバイオテクノロジーの専門家である。同氏は、分子レベルでのメディカル・スキャンを可能にするマイクロフルーイディックス(Microfluidics)技術の研究を明らかにした。今日の細胞解析は、数多くのサンプルから割り出した特性をベースに推定している。だが、もしMEMSとマイクロフルーイディックスによって、特定のDNAまたはタンパク質を調べられるようになれば、より正確に早い段階での病気の発見につながる。

    「我々は1つの分子を分析できるようになりたい。我々のリソグラフィー・スケールはDNAやタンパク質分子よりも微細なのだから決して不可能ではないと思う。その分子分析から、さらに(病気の)早期の兆候が現れる個々の細胞解析も可能になる」(Gelsinger氏)。

    講演の後に行われたプレス対象のQ&Aセッションでは、研究段階であるという前提にもかかわらず、実用の見通しに関する質問が相次いだ。高齢化社会という現実の問題に対するソリューション(マクロコンバージェンス)、それを提供するIntelの技術(マイクロコンバージェンス)という内容がアピールされたようだ。

    メトカーフの法則の提唱者Bob Metcalfe氏と話すPat Gelsinger氏

    前後するが、講演の最初にイーサネットの発明者であるBob Metcalfe氏がビデオ中継によるゲストとして登場した。Metcalfe氏は「"ネットワークの価値"はユーザー数の二乗に比例する」というメトカーフの法則を提唱している。

    同氏は、プロセッサの年間出荷数が約80億になったという最新レポートを紹介し、その一方でネットワークに接続されているのはそのうちの2%以下、または1%以下の可能性もあると指摘した。それはプロセッサの真の価値が活かされていないことを示す事実であり、「全てのチップに通信機能を統合するというコンセプトは将来的に大きな価値を生み出すだろう」と「Radio Free Intel」(すべてのチップに無線技術を搭載する構想)を支援した。

    (Yoichi Yamashita)

    【News Special】IDFレポート
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/02/08/02.html

    【IDFレポート】生き続けるムーアの法則、その影響力の広がり
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/03/04/13.html

    【IDFレポート】ムーアの法則は常に変化する - 米インテルCTO語る
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/04/16/05.html

    【WinHECレポート】802.11を統合した「Banias」、Intelがデモ
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/04/19/24.html

    Intel
    http://www.intel.com/

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