【IDF Spring 2003レポート】番外編 - AMD Briefing

今回のIDFでも、AMDによるPress Briefingが行われた。今回のお相手も、またもやJohn Crank氏。コチラ(MPF 2002レポート Hammerに関するもう少し詳細な解説(1) )で「いつも会っている様な気がする」とか書いたが、もはや「気がする」ではなく「いつも会っている」である。

○ロードマップ変更について

Platform Conference終了後の1月31日、AMDはAthlon 64のリリースを9月に延期する発表を行い、その代わりにBartonコアのAthlon XP 3000+を2月初旬にリリース、また今年中旬を目処に、同じくBartonコアのAthlon XP 3200+をリリースする予定を明らかにした。

既にAthlon XP 3000+の性能はコチラ( 新コアBartonの恩恵は如何に? - AMD Athlon XP 3000+を試す )で検証した通りほぼPentium 4/3.06GHzと肩を並べたことから、決して見劣りするわけではないが、当初のスケジュール(2002年中に発売)から考えると9カ月もの遅延になるわけで、ちょっと只事ではない。

これに関してCrank氏の説明は「Athlon XP 3000+/3200+は既存のSocket Aユーザーに取って良いマイグレーションパスだし、Athlon 64はこれにスムーズに繋がるものになる」と、余り答えにならない答えが返ってきた。「でもOEMや一部のユーザーはAthlon 64を待ち望んでいる訳だが?」と問うと、「ビジネスモデルを考えた場合、Athlon 64をすぐに大量に出すのは難しいため、やや遅らせた方が賢明と判断した」という返事だった。

このあたりは要するに130nmのYield(歩留まり)がやはりかなり低いためと思われる。Crank氏は「Yieldには問題はない。証拠にOpteronは4月から出荷開始する」と言っていたが、これはやや詭弁に近い。サーバー向けのOpteronは、何しろコストが高いから(後述するが、IntelのXeon MPに匹敵するシステムコストで提供するそうで、という事はプロセッサの価格は数千ドルのオーダーになる筈だ)かなり低いYieldでも十分ペイする。が、数百ドルで売らなければいけないAthlon 64は、高いYieldを保持しなければ売るたびに赤字が増えてしまう事になる。出荷量が少ないこと自体、Yieldがあまり高くない傍証ともいえる訳だ。

つまるところ現在のYieldでは、Opteronの出荷には差し支えなくてもAthlon 64には不十分(恐らく10~20%に達するかどうか、という程度だろう)であると考えられるのである。このためOpteronを先行しつつYieldを高める努力をしながら、9月の発売に向けて生産量の乏しいAthlon 64を作り溜めるといったことが行われていると思われる。

○Athlon XPについて

ところで気になるのはThoroughbredベースのAthlon XP 2800+である。BartonベースのAthlon XP 2800+が既に大量量産され、Athlon XP 3000+すらバルク出荷が始まったのに対し、Thoroughbredベースのそれは相変わらず市場では殆ど見かけない。

これを確認したところ「ThoroughbredベースのAthron XP 2800+の生産は中止しており、Bartonベースの製品を今後も発売してゆく」との事だった。また、Bartonベースのコアは当初2500+/2800+/3000+の3製品の予定だが、2500+がほとんど市場に見えないことについて確認したところ「いやそんな筈はない。2500+もWorld Wideで発売されている筈だ」という返事が返ってきた。ただ後で確認したところ、AMDのプロセッサ価格のページに2500+の項目はなく、どうも情報が混乱しているようだ。

○Mobile Athlon 64について

1月31日のAMDのプレスリリースでは、Athlon 64と同時にモバイル向けのMobile Athlon 64がリリースされることが示されたが、今回、その動作するプロトタイプが示された(Photo01)。ただし気になる動作速度とかTDPの発表はなかったが、プロトタイプの容量を考えると、TDPは35Wあたりが上限と思われるので、おそらくこのあたりにあわせてきていると思われる。内部構成はPhoto02の通りだ。ちなみにThin & Lightへの取り組みは考えているが、現時点では難しいという話だった。

Photo01:この写真だと分かり難いが、ほぼA4フルサイズノートの大きさ。
Photo02:詳細はかくのごとき。"Desktop Replacement Proof of Concept"が示す通り、直接的なライバルはCentrinoやMobile Pentium 4-Mではなく、Mobile Pentium 4(-Mが付かない、"TransPortable"あるいは"DeskNote"と呼ばれるマーケット向けにIntelがこの秋投入予定のプロセッサ。もちろん現時点では未発表)ではないかと思われる。内部構成も見せてもらえなかったが、電池を入れる場所はあるのだろうか?

○Opteronに関して

とりあえず前回の宿題(「Opteron/Athlon 64がHyperTransport SwitchのSpecification Release 1.05をサポートしているかどうか」 http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/01/30/16.html )に関しては、「現在のOpteronはVersion 1.0のHyperTransportがインプリメントされている」そうで、今のところHyperTransport Switchへの対応はなされないとの事だった。もっとも将来バージョンではサポートを考えるとの事だった。

またOpteronのDDR400サポートに関しては、「公式には今のところ予定はない」としながらも、Crank氏個人の見解としては、「Opteronが今年中にDDR400をサポートすることになっても不思議ではない」としており、DDR IIに関してはその後になるだろうという見解だった。

ちなみにOpteronのポジションはIntelのXeonクラス、それもXeon MPが「Primary Competitor」になるとしており、従ってシステム価格(プロセッサ価格ではない)も当然これと競争力のあるものになる、との事だった。裏を返せば、4Pシステムで数百万円クラス~数千万円クラスになるわけで、対抗プロセッサの価格(例えばIntel Xeon MP 2GHz/2MB L3 Cacheは1,000個ロット時価格458,800円;2月24日現在)を大きく下回る可能性は少ない、という事だ。「Athlon 64が遅れるならいっそOpteron」という事をチラッと考える人も中にはおられようが、ちょっと手が出る価格ではなさそうだ。

なお動作中の4Pシステムが、Briefing会場で展示されていた(Photo03,04)。

Photo03:初公開というわけでもないが、内部構造が展示された状態の4Pシステム。昨年のMPFで展示されたシステムよりも一回り大きい。プロセッサは2つずつまとめてシールドシャーシに収められ、まとめて冷却される構造。 
Photo04:最初はIBMのDB2がUnitedLinuxで動いているデモだったが、「これじゃ何プロセッサ動いてるかわからない」とゴネてShellでtopコマンドを実行してもらった。ちゃんと4プロセッサで間違いなく動作しており、めでたしめでたしである。

○しかし……

氏に、「『今すぐ購入したい!』と思う人にとって、もはやAthlon XPは良い選択肢ではないのではないか?。アップグレードパスはAthlon XP 3200+で切れてしまい、その後はもう一度マザーボードの買いなおしになるではないか」と振ってみたところ、「そんな事はない。Intelを見てみろ。またFSBが変わってマザーボードが買いなおしになるじゃないか。それに来年Prescottが出ると、またマザーボードの交換が必要だ。AMDならAthlon 64の時に1回だけだ!」と強弁していた。

確かに嘘ではないし、間違ってもいない。Pentium 4の800MHzへのトランジットはかなり急なものだが(通常だとFSBの遷移はもっとゆるやかだ)、いきなり旧製品をばっさり切る事は少ない。公式には何の表明もないが、来年Prescottは800MHz→1066MHz FSBに移行すると見られている。ただその際も、800MHz製品が根絶するわけではないし、これまでのトランジションを見ると今度はバリューマーケットでサポートされてゆくから、800MHz FSBのSocket478の寿命はかなり長いのではないかと筆者は予想している。しかも既に報じた通り( http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/02/21/30.html )Prescottの性能はかなりよさそうである。

ということで、現時点での筆者のお勧めは第2四半期まで待って、800MHz FSB対応のマザーボードを購入→Prescottに乗り換えという感じになる。これを上回るだけの性能をAthlon 64がたたき出せるか、正直言ってちょっと微妙なところというのが正直な感想だ。

(大原雄介)

【News Special】IDFレポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/02/08/02.html



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