私たちの生活に結びついているという点では、非常に身近な存在の組み込みデバイス。省電力というISSCCのテーマに沿うように、今回は日常生活からの電力生成、ポータブルシステムでの消費電力の効率化などが技術のカギとなっていた。
Infenion Technologiesは、布地に電子回路を埋め込む究極のウエアラブル・エレクトロニクスを披露した。布地はポリエステルで、いくつかの縦糸をシルバーとポリエステルでコーティングされた銅ワイアに置き換えている。要所にレーザー加工でコネクターが配置され、Printed Circuit Board(PCB)が接続される。PCBは完全に密閉されており、雨に濡れたり、洗剤を使って汚れを落とす程度なら壊れずに機能する。MMCとバッテリーが着脱可能なMP3プレイヤーのほか、サーモカップルを使った体温発電、織物ラジオなどの利用コンセプトが紹介された。
Infenionのスマート布地にピッタリと思えるのが、NTT Microsystems Integration Labsが発表した体温発電の無線機である。Bi-TE(Thermoelectric)を用い、体温と外気との温度差を利用して電気を生じさせる。これをSeitched Capacitor(SC)タイプのDC-DCコンバータを経由させて、無線の受信回路や制御回路を駆動させる。無線回路に必要な0.5~1Vの電圧は、5度ぐらいの温度差があれば供給できるそうだ。
Hitachiが発表した無線IDチップは、「パウダー LSI」というネーミングも話題となっていた。0.09平方ミリという文字通りパウダーのような、2.45GHzのRFIDチップである。0.18μmCMOSプロセスで製造され、厚さは60μm。実際には、メタリックフィルムのアンテナに接着して使用する。RFIDチップは両面でアンテナに接着できるようになっており、アンテナのスペースだけで柔軟にIDデバイスをデザインできるのが特長だ。RFIDとリーダーの通信距離は最大300mmとなっている。
○MEMSはニッチを抜け出せるか
初日には「MEMS、イメージセンサー、ディスプレイは、IC産業成長のカギとなるか?」というパネルディスカッションが行われた。
Micro-electronicals(MEMS)デバイスの可能性が指摘されるようになってからしばらく時間が経つが、MotorolaのRay Roop氏は「MEMSデバイスは生産が難しく、量産できるほどの歩留まりに達していないし、信頼性という点でも不安が残る」と指摘する。しかし、「CMOSだって最初はそうだった」と続けるのだ。
パネリストの多くはMEMSについて、多くの課題を指摘するが、その可能性を否定してはいない。MEMSの信頼性と歩留まりを高める方法が半導体企業にとって大きなビジネスチャンスであるという点では意見が一致していた。業界別では、自動車や航空産業などは比較的上手くMEMSをビジネスに利用しているが、ほとんどの産業では活用するきっかけをつかめていない。コンサルタントのDaniel McGrath氏は、いずれ他の産業にも波及するだろうが、これまでとは違ったビジネスモデルが必要になるため時間がかかると言う。
MEMS関連の発表を3つ紹介しよう。STMicroelectronicsとフランスのCEA-LETIは、LSIに集積可能なRF-MEMSスイッチを発表した。ポータブルターミナルが環境に適応するためには、あるスタンダードから異なるスタンダードへと柔軟に切り替わり、さらに送信電力をコントロールする効率的なスイッチ機能が求められる。RF-MEMSスイッチはICレベルの上に配置されているため、そのSoCデザインは"above IC"アプローチと呼ばれていた。2GHz時に挿入損失が0.4dBで、アイソレーションが54dB。0.25μmプロセスのBiCMOS技術で製造されており、MEMS部分の面積は400μm×50μmとなっている。
Palo Alto Research CenterのK.Van Schuylenbergh氏は、集積回路の表面に配置できる自己形成型のコイルについて発表した。コイルはスパッタ堆積のモリブデン・クロミウム・フィルムから作られており、引張応力を用いてらせん上のコイルをBiCMOSチップの表面上に作り出せる。このコイルはHigh-Qインダクタとして利用でき、2次元的なスパイラル・インダクタと比べて、フェーズノイズが100kHzで12.3dB減少したとしている。
機械システムを極小レベルまでスケールダウンするMEMSだが、Massachusetts Institute of Technologyが縮小したのはジェットエンジン。切手の半分ぐらいのサイズのシリコン・タービンエンジンについて発表を行った。炭化水素を燃料として、MEMSがタービンブレードを回転させる機構を管理する。安定して動作させるには毎分100万回転が必要になるそうだ。実際に燃料を発火させた実験は行っていないが、机上実験では毎分100万回転以上が得られているという。安全性という点でまだまだ課題が多いが、上手く動作すれば、極小サイズのモーター、またはジェネレーターとしての利用が検討されている。
(Yoichi Yamashita)
ISSCC
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