【レポート】着実に進行する電子自治体の実現 - オープンソースに求められる役割

      [2003/02/19]

    リナックスカフェやサン・マイクロシステムズ、富士ゼロックス、金沢工業大学などで組織される電子政府・先進自治体の実現に向けたオープンソースソリューションを提案するOSTA(Open Source Technology Alliance)は、地方自治体の情報担当者を対象とした「先進自治体モデルのためのセミナーとデモ」を開催した。

    セミナーでは、OSTA事務局長の平川克美氏(リナクッスカフェ 代表取締役)が開催の挨拶を行ったほか、企業や行政にて電子政府や自治体の情報化(IT化)に携わる各氏のプレゼンテーションが行われた。ここでは、サン・マイクロシステムズ ソリューション営業本部統括部長 e-Japan Project統括責任者である中村彰二郎氏と、千葉県市川市 企画政策部 情報システム課 参事の井堀幹夫氏のプレゼンテーションをご紹介する。

    ○オープンソース導入は情報システムの構造改革につながる

    サン・マイクロシステムズ ソリューション営業本部統括部長 e-Japan Project統括責任者 中村彰二郎氏と

    中村氏は電子政府・先進自治体(e-Japan計画)実現のためのオープンソース戦略として、「メインフレームからの脱却」「情報システム構築の構造改革」「デファクトスタンダードからの脱却」の3点を掲げた。

    氏によれば自治体の情報システムにかかるコストの中で、大半がメインフレームの構築・保守・点検に費やされてしまっており、システムの構築についても、自治体→メーカー→地元IT企業という「丸投げ」構図になってしまっているという。いずれも高コストを招いてしまうほか、システム構築に関しては地元企業は下請けになってしまっており、地場産業の育成という点からも問題が多いとする。

    デファクトスタンダードからの脱却については、デファクトスタンダードは裏を返せば選択肢を狭めることに繋がりかねず、対して、オープンスタンダードは選択が自由であり、低コスト化を実現することができるとした。この点については、現在、最も多い組み合わせであるWindows-Unix-メインフレームという自治体内の情報システム構成をLinux-Linux(Unix)-Unixとすることによって競争が生まれ、低コストな環境構築が可能になると主張した。

    それ以外にも、これからの自治体運営に欠かすことのできない中央依存からの脱却という点に関しては、地方分権を実現させるためのIT活用方として「特定のベンダーに依存しない」「強固なセキュリティ」「TCOに対して十分に配慮されていること」の3点が必要であるとした。この点については同社としてもテクノロジーセンターの設立などを通じて、雇用促進を併せた地域への注力、人材育成が必要になるとの意見を述べた。

    ○もっとも大きなハードルは「人」

    千葉県市川市 企画政策部 情報システム課 参事の井堀幹夫氏

    自治体の電子化の例としてプレゼンテーションを行った千葉県市川市 企画政策部 情報システム課 参事の井堀幹夫氏からは、市川市の提供するサービスの紹介と、問題点の報告が行われた。

    市川市は平成11年から、コンビニエンスストアの持つサービス網を使用しての各種行政サービスの提供を行っている。利用者への利便性提供はもちろんのこと、自治体の財政危機を解決するための合理化を推進する中でのIT化であったそうだ。

    このサービスでは各種公共施設の利用申し込みや手続きの申請を行うことができるが、サービスの提供開始以来、施設利用希望者は2倍に増加したのとことで、IT化を推進したことによって地域活性化を促進することのできた好例といえるだろう。

    コンビニエンスストアと連携した電子行政サービスの図

    システム面については、コンビニエンスストアのもつシステムに自治体側があわせるかたちとなっており、これは「(役所側がシステムをあわせたという点で)画期的なサービス」であるという。

    こうしたIT化について、もっとも大きな問題は「人」であると井堀氏は言う。人的問題というと技術面がクローズアップされがちであるが、氏が最も重要な点として指摘したのは職員のモチベーションであった。「現状を変えようとする自治体職員や住民のモチベーションを如何にして(具体的な行動に)変換できるかがポイント」とのことだ。

    Linuxをはじめとしたオープンソースソリューションが注目されて久しいが、脚光を浴び始めた当初は「無料OS」というようなニュアンスで語られることも多く、Windowsにおけるマイクロソフトのような強力なサポート組織を持たないことも弱点であるといわれ続けてきた。

    OSTAはLinuxをはじめとするオープンソース技術を有する企業・大学・NPO・事業協同組合などで組織されており、プログラミングから保守・運用までをアライアンスの参加メンバーでまかなうことが可能になっている。

    これまで一貫したソリューションといえば一企業の提供するものであったが、OSTAはアライアンス参加メンバーでプロジェクトチームを組み、プロジェクトを推進する。そのなかではOSだけでなく、ミドルウエアやソフトウェアまでを含めたシステム構築を手がけるほか、事前調査から保守・運用までを参加メンバーの得意分野を生かす形で提供する。

    しかし、OSTAはすべてをオープンソースソリューションにするべきと主張しているのではなく、システム構築に際しての選択肢、多様性を提供するとしている。その選択肢を提供することによって、一つのベンダーに依存しない、柔軟かつ安価なシステムを提供できるとしている。

    政府・自治体といったこれまでオープンソースソリューションがあまり普及していなかった分野に対して、有償保守サービスまでを含めたトータルソリューションを提供するOSTAの存在は大きなオープンソースソリューションの導入を考える政府・自治体にはアピールになるだろう。今回、自治体の情報担当者を対象にしたことからみてもOSTAのねらいは明確だ。

    2003年、政府・自治体にてオープンソースソリューションが急速に普及することになるのか、注目される。

    (渡邊宏)

    リナックスカフェ
    http://www.linux-cafe.jp/

    サン・マイクロシステムズ
    http://jp.sun.com/

    市川市
    http://www.city.ichikawa.chiba.jp/

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