【Platform Conference 2003レポート】絞込みを図るエルピーダ

昨年、社長交代やIntelへの出資依頼、あるいはメモリベンダーでNo.3のポジションを狙うといった発言などで多くの話題を提供したElpidaだが、発表されたロードマップは案外にコンサバティブなものだった。もっともこれについて同社の関係者は「全く新しい事業形態ならばともかく、メモリの分野でNo.3なりNo.2なりのポジションを狙うためには、PCマーケットを避けて通る訳にはいかず、となるとどうしてもそれほど大きくロードマップをいじるわけには行かない、との事である。この結果、今年はDDR400とPC1066の生産をメインに据え、来年にはDDR IIにシフトするという大まかなロードマップになっている(Photo01)。

 Photo01:Elpidaの分析するメモリトレンド。基本的にはこのトレンドにあわせて製品を投入していくとする。

○デスクトップ向け

まずデスクトップ向けだが、今年はSDRAM/DDR400/RDRAMの3品種を製造する予定だ。このうちSDRAMについては、速度こそPC133までだが、512Mbit品への移行が本格的になってくる模様だ。次いでDDR400に関しては、今年から製造が開始されたそうである。というのは今年1月に広島工場の130nmプロセスが生産を開始したためで、これを利用することでDDR400の製造が可能になったとの話だ。

ただし、本格量産というのはなかなか大変らしい。例えば歩留まりについて今回は明示されなかったが、一番早くから製造に掛かっているSamsungですら現状の歩留まりは40%足らずであり、Elpidaにしてもこれを大きく上回るということはとても無理で、良くてSamsung並といったところらしい。加えて、広島工場の生産ラインは取り合えず立ち上がったとは言え、現状はとりあえずラインが1本整ったという程度で、その稼働率は50%を切っている(実質30%程度らしい)レベル。このため現状では、ある製品をとりあえずラインに流してしまうと、他に何も作れないといったレベルの様で、従ってDDR400をメインにラインを動かすのはかなり難しい様である。ただし技術的な問題は殆どクリアしているようで、純粋にラインのキャパシティが上がればDDR400の製造を積極的に行っていけるとしている(このあたりは今後の投資計画如何だろう)。

一方DRDRAMについては、既存のPC800に加え、やはり130nmプロセスでPC1066の生産が予定されている。ただしSamsungの様にPC1200やPC1333の製造を手がけるかというと、そのあたりは様子見といった具合の様だ。あくまでもPC1066までが主体で、しかもデスクトップマーケットに関してはその寿命は2003年一杯とみなしている。ただ、通信機器向けや情報家電系にDRDRAMが多く採用され始めている現状から、こちらに関しては引き続き一定のシェアが見込めると見なしている様で、この結果PC1066よりもPC800が生産の主流になる可能性が高い。

ちなににDDR II世代に関しては、2004年以降に本格的に立ち上がると見なしている。同社はデスクトップ向けのUnbufferedタイプ以外にサーバー向けのRegisteredタイプも重視しており、DDR II400を搭載したPC2-3200から製品をリリースするようだ(Photo02)。また、一時期はモジュールタイプについても、168pin/240pinのいわゆるDIMMではなく、200pinのSO-DIMMあるいは244pinのMini DIMMがデスクトップ向けにも多く使われる事を示唆したロードマップを出した事があるが、現状はサーバー向けはRegisteredの240pin、デスクトップ向けはUnbufferedの240pinが主流になり、SO-DIMM/Mini DIMMはやはりノート向けのみといった扱いになっている。

 Photo02:メモリモジュールのトレンド遷移。今年はPC3200、来年はPC2-3200/4300の生産がメインになるとしている。
 Photo03:昨年11月頃は、Desktop向けにもSO-DIMMが入るというプランがあったが、これを見る限り完全に消えている。

当初、SO-DIMMの意向は、配線長の短縮(データレートの向上に伴う信号の乱れを最小限にする)や、チップあたりの容量増加に伴い必ずしも16チップを搭載しなくても十分に容量を確保できるといった事が理由として挙げられていた。ところが信号に関してはODTの採用でかなり安定性を確保できることがあり、また容量に関しては、必ずしも全てのモジュールが256Mbit/512Mbitメモリだけを使って構成される訳ではないし、何よりx4チップが使えなくなるといったあたりが、技術的というよりは商品構成の観点で問題だったようで、結局240pinのDIMMが引き続き使われることになるようだ。

○モバイル向け

モバイル向けに同社が以前からラインナップしているものに、Mobile RAMという製品がある。電気的にはSDRAMの延長にある製品だが、省電力動作をし、またパッケージサイズも非常に小さなものである。このMobile RAMや、一部のDDR/DDR II SDRAMがモバイル向け製品としてラインナップされている。これらの製品は付加価値をつけやすい(=価格を高く保てる)事もあってか、かなり力をいれているようである。実際、モバイルグラフィック向けに同社のDDR II SDRAMが今度採用されるといった話もあり、こうしたマーケットを今後は更に増やしていきたい意向を示していた(Photo04)。

 Photo04:Mobile RAMのスペック。これはあくまでもPDAとか携帯の主記憶などに使われるもので、モバイルグラフィック用のメモリにこのMobile RAMが採用されたわけではない。

○サーバー向け

今回、同社はDDR II400とDDR II533を利用したRegistered DIMMに関する検討結果の発表を行っているが、これ自体は純粋に技術的な話でそれほど面白い訳ではないのでここでは割愛する。ただDDR333を使ったPC2700のRegistered DIMMについて面白い話があったので紹介しておく。

Registerd DIMMの場合、現在出回っている製品の殆どがPC2100で、PC2700は余り見かけず、またあっても非常に高価である。これは何故かというと、JEDECでRegisteredタイプのPC2700は、FBGAベースのDRAMチップを使うことを前提にしており、このFBGAタイプのチップが殆ど無いために高価になっている、という話だ(Photo05)。

ではなぜFBGAタイプになっているかというと、DIMMの中央にRegisterを設置する関係で、TSOPタイプのパッケージだと配線長が長くなりすぎてしまい、タイミング的に厳しいため、という話である。ところがElpidaではシステムの条件を2Rank(2バンクの意味)/3スロットに制限すれば、既存のTSOPパッケージを使ってRegistered DIMMを構成しても十分に動作することを確認しており、現在これをJEDECに提案中であるという話があった(Photo06)。

 Photo05:RANKというのは、要するに(電気的に)片面実装か両面実装かという話である。つまりDIMMの裏表に実装されるチップが8ないし9ならばSingle RANK、16ないし18ならDouble RANKとなる。
 Photo06:今回の場合、30mm高のガーバーを使うのがポイントだ。逆に以前の大きなガーバーを使うと、データラインの負荷が大きくなってしまい、動作に問題が出てきてしまうそうだ。

現時点ではRegisteredタイプのPC2700を利用するケースは殆ど無いが、今後Canterwoodなどではこれを利用する場合もあるわけで、こうしたケースで今回のRegistered DIMMの規格が採択されれば、より入手しやすくなりそうだ。

○その他の話

冒頭でも述べたとおり、同社の製品ロードマップには殆ど変更が無い。ただし社内的な組織に関しては今年1月に大きな変更が行われており、メモリ業界でTop3を狙うに足りるだけの組織に変わったという。後は、広島工場の稼働率をいかに早く上げるかが同社の課題ということになるようだ。このあたりについては、いかに早く必要な装置の導入と立ち上げを行うか、に掛かっている訳である。従来のElipdaは、日立とNECの共同出資とあって、このあたりの意思決定に時間がかかり、結果として投資タイミングを失敗するといった動きだった訳だが、昨年から元UMC Japanの坂本 幸雄氏を社長に招き、社内組織も改変したことで、このあたりの意思決定を迅速にするような体制に切り替えつつあり、あとは結果が出てくるのを待つばかり、といった状態である。

ところで話は変わるが、VIA Technologyは昨年、米Kentron Technology( http://www.kentrontech.com/ )のQBM(Quad Band Memory)Technology( http://www.quadbandmemory.com/ )を採用したチップセットをリリースする事をアナウンスしている。ところがこのテクノロジー、採用チップセットベンダーあるいは機器ベンダーこそ多いが、これに対応したメモリチップをリリースするベンダーが存在しない。これについてちょっと聞いたところ、「もし要望があれば、メモリチップを供給することは出来る」(QBMはバスインターフェースの技術であり、メモリチップ自体は既存のDDR SDRAMで対応できる)としながらも、そこから一歩踏み込んでQBM Allianceに加入して専用モジュールを販売するといった計画は今のところ無いという話だった。一つには、現在のDDR400に続き、DDR II533やDDR II677が出てくると、QBM Technologyを利用するのは難しくなる訳で、従ってDDRからDDR IIの狭間に登場するニッチ製品という位置付けから脱するのは難しいという判断の様だ。これは単にElpidaだけでなく、今回Platform Conferenceに出てきた殆どのメモリベンダーに聞いた答えもほぼ同じであり、現状QBMが立ち上がる可能性はきわめて薄い様に思われる。このあたりVIAがどう考えているか、がちょっと興味深いところだ。

(大原雄介)

Platform Conference 2003レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/01/31/02.html



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