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| 産業技術総合研究所 中島秀之氏 |
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| 大阪大学 塚本昌彦助教授 |
講義に続いて、坂村健氏、徳田英幸氏に加え、セミナーのコーディネータを務めた産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センターの中島秀之氏と、ウェアラブルコンピューティングについて研究する大阪大学助教授の塚本昌彦氏を交えてのパネル討論会が開かれた。まず冒頭、中島氏と塚本氏によって追加のプレゼンテーションが行われた。
自らも無電源小型情報端末「CoBIT」など、ユビキタスコンピューティングに関連するデバイスの研究を行う中島氏は「ユビキタスコンピューティングはデジタル空間だけでなく実空間を意識したもの」「インターネットだけでは不足。求めるのはhigh-throughputではなくlow-latency」「光、振動発電などユビキタス電源が必要」といった点が、講演を行った3氏から共にコメントされたとまとめる。
塚本氏は"モバイル"、"ウェアラブル"、"ユビキタス"という3つの言葉の関係について「モバイルを中心に言えば、持ち歩くモバイルの究極がウェアラブルで、持ち歩かない究極がユビキタス」と話すが、ネットワークなどユビキタスのインフラはウェアラブルでも利用するし、ウェアラブルデバイスはユビキタスコンピュータとも言え、それぞれ対極にあるものではなく本質的には同じ状況を描くものと説明する。そして、プレゼンテーションの機会がある度に話していること、と前置きして「ウェアラブルは1年以内にブレイクする」「近いうちに渋谷・原宿の若者の50%がHMD(Head Mounted Display)を装着するようになる」「10年後には赤ん坊がHMDを装着するようになる」と3つの"予言"をした。
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○駅はユビキタスの実験場
討論会は会場から寄せられた質問票の内容を紹介しながら進行した。「ユビキタス環境を駅や鉄道で構築することでどんなメリットが得られるか」という意見に対し、中島氏は「私がサイバーアシストの研究を始めた動機が『駅がどんどん不便になっている』ということだった。昔は駅員さんに言えば切符も乗り換えも案内してくれたのに、最近は券売機の操作が複雑になって切符の買い方すらわからない。ユビキタスコンピューティングというなら、人がやっていた以上のサービスを提供しなければ意味がない」と話す。
徳田氏も「今は立ち止まらないで受けられるサービスが非常に弱い。駅に無線LANが設置されて乗り換え案内サイトが利用できるといっても、ユーザーがそこへ行って立ち止まり、PCやPDAを操作しなければならない。そうではなくて、ユーザーが歩いているだけで乗り換えるべき路線などが表示され、事故で不通になったらすぐに代わりの経路が出てくるようなものでないと意味がない」とし、アクセスポイントの整備だけがユビキタスではないと述べる。
また、JR東日本のICカード式乗車券「Suica」について坂村氏は「プリペイドカード方式というのは現実的で賢明な判断」と評価する。「クレジット決済機能を持たせるなんて話もあるが、それだと公開鍵暗号方式を採用しなくてはならず、今の超小型チップの性能では1秒以内にゲートを開けるようなスピードは無理。PCやインターネットの世界でハッキングが起こっている現状を見ると、エンドユーザーに小型コンピュータを持たせて社会に導入するのは慎重に慎重を重ねないといけない」と指摘した。
○プライバシー、セキュリティ、利便性のバランス
プライバシーとセキュリティの話題になると徳田氏は「IT関係の人たちはつながるメリットばかりを強調するが、つなげない権利、ディスコネクトできることを保証する技術も必要」と話す。「バスやタクシーの位置をWebで公開しているシステムがあるが、テロのない社会という暗黙の前提があるからできること。公開すること自体が危険性をはらんでいると意識する必要がある」という。
一方で塚本氏は「なんだかネガティブな話になってきてしまったが、今日は皆さんにユビキタスを推進したくなる気持ちで帰っていただかなくてはいけないので(笑)」と注を付けた上で「いままでの現実社会だって危険なことはいっぱいある。街中でクレジットカードを使うことだってものすごく危ないことだし、インターネットも未成熟なままこれだけ社会に出てきてしまって、問題が起きている。確かに学会ではそれを議論する必要があるが、しかしそれとは別に、草の根のビジネスでいまからできることがあると思う」といい、ユビキタスはシステムや規範が整ってから推進するというよりも、やれるところから手をつけるべきとする。
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| 「隠すことではセキュリティは守れない」(坂村氏) |
坂村氏は「とにかく情報をオープンにすることが重要。システムの一部を隠すことでセキュリティを守るのが無理なのは明らか。プライバシーについても、このシステムはどんな情報を取っているかユーザーに公開する必要がある」としながら「『個人情報保護』というが、どこまでが個人情報か。名前だけなら公開してもいいという人がいれば、名前もダメという人もいて、プライバシーは100人100通りの考え方がある。究極的には、プライバシーが危険な区域はそう表示し、賛同しない人はそこに近づかないことだ」と話し、さらに踏み込んだ考えを示した。
終わりに「携帯電話で周囲にどんなレストランがあるかわかるなど、既にLocation-awareなアプリケーションは存在している。これからはそういう原体験がある人ばかりの時代になるので、その世代がどんどん新しいアプリケーションを開発してほしい」(徳田氏)、「ユビキタスコンピューティングが急に叫ばれるようになったが、言っている内容はコンピュータの進化の延長上にある自然な話なので、5~10年くらいでユビキタス社会と言われているような世の中になっていくのだと思う」(塚本氏)、「リアルタイムの組み込みシステムというボトムの部分を長くやってきたが、非接触通信ひとつ取っても非常に大変。そういった基盤部分をちゃんと解決しないと産業的にも広がらない」(坂村氏)と3氏からコメントが述べられ、討論会は閉じられた。
(日高彰)
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