【レポート】ユビキタス時代を担う"Embedded Processor"(2) - 種別ロードマップ

○ARM ~同族の食い合いに~

Embedded Processorでは現在最大勢力を誇るのが英ARM。Photo06を見れば判るとおり、何しろライセンスを受けている会社の数が他を大きく引き離している。当然ながら販売数量、金額ともに他を圧倒している。さて、そのARMだが、現在リリースされているプロセッサは表1に示すとおりだ。一番ローエンドにあたるのがARM7で、36MIPS@40MHz、つまり0.9MIPS/MHz程度の性能を持つコアである。これに続くARM8は、しかし製造しているベンダーは殆どなく、ARM9に飛ぶことが多い。このARM9はパイプライン構造を4段→5段にしたほかThumbと呼ばれる16bit命令セットを追加するなどしており、また動作速度も最大で200MHz程度、この際の性能は220MIPSに達し、1.1MIPS/MHz程度になっている。

 Photo06:各アーキテクチャのライセンスを受けているクライアント数の比較。TensillicaはCPUではなくDSPなので、ここでは除外する。
 表1

これに続く製品がARM10である。アーキテクチャ的にも大きく変わっており、ベクタプロセッサやDSP ISE、SIMD演算(ただし整数のみ)などの外部プロセッサをサポートするほか、Jazelleと呼ばれるJavaを高速に処理できる命令などをサポートしているのが特徴である。処理性能も更に上がり、1.2MIPS/MHz程度にIPCも上がり、かつ動作速度が300MHzを超える事で、ほぼARM9の倍程度の性能を叩き出せるようになっている。更に今年10月に発表されたARM11では、マルチプロセッサや浮動小数点演算をサポートし、またパイプライン自体もかなり深くなっている。このあたりの詳細はコチラ( http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/10/28/15.html )に書いたので省略するが、性能的には500MHz以上で動作し、1200MIPS程度の性能レンジを狙う、としておりかなり意欲的な製品になっている。

というわけで、一応ローエンドからかなりのハイエンドまでをカバーするARMだが、昨年から今年に掛けて次第に目立つようになってきたのが、「他のアーキテクチャのシェアを奪う代わりに、同じアーキテクチャ同士での争いに変わる」といった状況である。勿論マーケットシェアがかなり大きくなってきたから、これは当然と言えば当然なのだが、これがちょっと厄介な話になりつつある。

まず前提知識として、ARMの製品の販売形態について説明しよう。ARM自体はFablessのメーカーであり、また自社で製品を作って売る、という事は原則として行わない。例えばMPF2002で発表があったARM1136J-S/JF-Sにしても、確かに実際にARMから製品は登場した(ファウンダリはTSMC)が、これは別に売るためのものではなく、評価用とか、そもそもちゃんと動作しますという証明の様なものである。この点が同じファブレスでも、製品自体を売るVIAのC3とかとは大きく異なるところだ。では何を売るかといえば、設計図である。ARMからライセンスを受けているのは、日本のメーカーだと例えばNEC/富士通/シャープ/ソニー/etc...がある訳だが、こうしたメーカーはARM社からARM7とかARM9の設計図を購入し、これを自社で製造、販売するという仕組みである。一般的には、まず設計図を買う際に設計図代が、ついでこれに基づいて製品を作って売る際にロイヤリティが、それぞれARM社に支払われるという仕組みだ。

さて、この設計図も大きく2種類存在する。一般にはハードコアとソフトコアと呼ぶが、前者は言ってみれば回路のマスクをそのまま買う様なものである。これに対し、後者は設計の指示書とでも言うか、マスクを作るための設計図というのが適切なところだろう。前者を購入する場合、回路変更とかを行うのは非常に難しいし、半導体の製造工程毎にマスクは異なってくるから、例えばTSMC用のARM9のマスクとUMC用のARM9のマスクは当然異なっており、従って製造会社を変えることは非常に困難である。そんな訳で、最近はソフトコアを購入するのが世界的に一般的になってきている。例えば昨年10月時点での、アーキテクチャ別のライセンス数は

ARM761
ARM946
SecurCore6
ARM10xx5
ARM V61


※数字の出展はPhoto03と同じくMPF2002の資料より

という状況で、要するにローエンド向けの製品を出しているところが大半なのである。この理由の一つは、ARMプロセッサの需要を考えた場合、こうしたローエンドの製品のニーズが高いからということだが、もう一つはライセンスフィー(つまり上で説明した設計図代のこと)の問題である。要するにハイエンドになるほどライセンスフィーは当然上がるわけで、これも支障になっていると思われる。2001年からARMは"subscription deals"という、包括ライセンス(従来ならば、ARM7とARM9とARM10で、個別にライセンスフィーを払う必要があったが、このsubscription dealsを導入すると、契約で合意した複数のプロセッサを製造できる)の仕組みを導入してこのライセンスフィーの低減に努めているが、それでもあまり効果が上がっているようには見えず、結果として世間にARM7/ARM9が溢れまくるという状況に変わりはない。これはエンドユーザーにとっては喜ばしい状況ではあるが、逆にベンダーにとっては同じARM7/9コア同士だから差別化も非常に難しい。勢い付加価値をどう付けるか、という話になるが、改めてPhoto04を見ていただければ判るように、ARMのマーケットはかなり飽和状態にあるのだ。ARM7で36MIPS程度、ARM9でも220MIPS程度でしかない訳で、現在の観点では決してこれらは高い性能とは言いがたい。従って以前ほどこれらのプロセッサに対する需要はなくなりつつあるし、そうなると付加機能といっても難しい。

例をあげてみよう。例えば米Conexant( http://www.conexant.com/ )のCX82100( http://www.conexant.com/products/prodparts.jsp?id=665 )というプロセッサがある。ARM9ベースのコアにEthernetのMACを2つとUSBコントローラ集積し、IA機器向けに設計、製造されているものである。最大168MHzで駆動できるが、多くの製品は140MHz程度で利用し、158MIPS程度の性能となっている。このプロセッサ、2001年はブロードバンドルータ向けに馬鹿売れしまくった。大体30Mbps~40Mbps程度のルーティング性能を持っており、ADSLやケーブルモデム向けには十分と思われたからだ。ところが2002年に入ると、このマーケットに向けて他社製品(例えばコレ( http://www.samsungusa.com/cgi-bin/nabc/semiconductors/search/productview.jsp?BV_SessionID=@@@@0238977695.1041196233@@@@&BV_EngineID=ccccadchdmhmiilcfejceefdfggdhgk.0&prd_code=33025 ))が似た製品を投入してきたことで、売れ行きは当然鈍ることになる。また、一部のマーケット(主に日本だが)は更に高い性能(ルーティング性能が90Mbps以上)を求めるようになってきており、こうしたマーケットには到底CX82100では適応できない。一応Conexantは付加価値戦略として、CX82100にxDSL向けの回路を追加したCX82110( http://www.conexant.com/products/prodparts.jsp?id=773 、ただし一般ユーザーは参照できず)をリリ-スはしているが、それほど大きく売れている訳ではないそうだ。

更に厄介なのは、もう一つのライセンス形態があることだ。アーキテクチャ・ライセンスと呼ばれる、ソフトコア/ハードコアよりも更に一段上のレベルのライセンスは、回路そのものではなく命令セットレベルのライセンスとなっている。具体的な例が、旧DECがARMと共同開発し、その後Intelが取得したStrongARMや、その後継としてIntelが開発したXScaleである。StrongARMはARM V4、XScaleはARM V5にそれぞれ互換性があるが、100%互換ではない。例えばXScaleにはWireless MMXなるSIMD演算命令が追加されたが、これはARM10のSIMD演算命令と何の互換性もない。この結果何が発生しているかというと、同じARM陣営の中でのアーキテクチャ争いである。例えばWindows CE.NETは幅広いアーキテクチャをサポートするが、この上で動作するPocketPC 2002がサポートするのはStrongARM互換製品(StrongARMもしくはXScale)であり、同じARM系プロセッサであってもARM10ではPocket PC 2002が動作しない、という状況になっている。実は、似たようなアーキテクチャライセンスをTIも受けており、これをベースとしたARMコア+DSP製品を製造、販売している。PDCharm3と呼ばれるPDC携帯電話向け製品は、ARM9ベースのコアだが、実際には機能拡張がなされており、ARM9と100%互換な訳ではない。同社はARM10/11をベースに、やはり独自拡張を行った製品をリリースしていく予定である。当然ながらこれは、IntelがXScaleをベースとした携帯電話向け製品であるPXA210/250とも互換性はなく、この結果ARMが強いとされる携帯電話向けマーケットの中で、ARMプロセッサとIntelのXScaleとTIのARMコア内蔵DSPがしのぎを削る、という洒落にならない状態になっている訳だ。

その一方、全く別種の問題がARMの前には聳え立っている。それは性能面でのディスアドバンテージである。ARM11でやっと動作クロックは500MHzに達し、性能も1000MIPSを超えるところまで来たが、もともとのコアは性能よりも効率(性能/消費電力)優先の設計だから、ハイパフォーマンス向けの市場開拓はまだまだこれからといった状況になっている。しかも、実際の性能はというと、ARMアーキテクチャはそれほど高効率ではない。先ほどブロードバンドルータの話をちょっとしたが、最近の90Mbpsクラスのブロードバンドルータは何を使っているかと言うと、これがまた判で押したかのようにいずれも米BRECIS Communications( http://www.brecis.com/ )のMPS2000( http://www.brecis.com/prod_MSP2000.html )を使っていたりするのが面白い。このMPS2000はMIPS TechnologyのMIPS32 4Kmというコアを内蔵し、180MHz程度で動作される。MIPS32 4Kmの場合、200MHz駆動で240MIPS、つまり1.2MIPS/MHzなので、180MHz駆動なら216MIPSという計算になるわけで、CX82100の158MIPSとそんなに性能の開きがある訳ではないが、実際のスループットはOver 90Mbpsで、倍以上の性能差があると考えてよい。まぁここで示しているMIPSとはDhrystone MIPSの値だから、実際のアプリケーションの性能を正しく示しているとはいえない訳だが、それにしても差が大きい事が判る。近年、IA機器はいずれも高性能化が進んでおり、その負荷はかなり高くなりつつある。例えばそれはカーナビであったりHDDレコーダに代表されるSet Top Boxデバイスであったりするわけだが、こうした今後伸びるマーケットに対し現在のARMプロセッサではやや非力と認識されている。従って早急にARM10以上、現実にはARM11以上のプロセッサが投入される事が望ましいわけだが、先ほども書いたとおり「まずはARM7から」のルールがある以上、そうそう簡単にコアを入れ替えるわけにはいかない。この結果今年は、出荷数量という意味では昨年と変わらないかそれ以上だと思うが、シェアとしてはやや下げる事になるのではないかと筆者は考えている。つまりローエンド~ミドルレンジに関しては現状維持が続くが、今後伸びるハイパフォーマンス向けに関してはARMの採用が進まず、この結果トータルではやや伸び悩むのではないか、というのが筆者の想像である。

○MIPS ~ローエンドにどこまで進出できるか~

次にMIPS Technologyについて紹介しよう。元々はプロセッサメーカーとして設立されたMIPS Computer Systemsが1992年SGIに買収され、1998年にSGIから再び独立する際に社名を変更、ビジネスモデルも大きく変えてしまった。ちょうどARMの様に、製品ではなくIPを販売する形態にした訳だ。ライセンス形態も良く似ており、ハードコア/ソフトコアによるCPUコアの提供のほか、ISAライセンスという形態での提供を行っている。

 表2

さてそのMIPS Technologyだが、現在提供しているコアの種類は表2の通りだ。MIPS32 4Kp/4Kc/4KSについては性能表記がないが、これはMIPS Technologyから発表がないためでもある。まぁ、MIPSの場合性能とか動作クロックは単なる目安でしかない。例えばMIPS32 4Kmの場合、0.25μmプロセスを使うと動作クロックが150~200MHz、性能が180~240MIPS、ダイサイズは2.8平方mmだが、0.18μmプロセスだとそれぞれ200~280MHz、240~335MIPS、1.4平方mmとなる。このあたりは、利用するファウンダリやプロセスに大きく依存するため、一概には言いにくい。一応4Kpに関しては4Kmよりやや劣る程度、4Kcは同等程度(ただし携帯機器向けなので、動作クロックは落として使うのが普通)、4KSシリーズは更に動作クロックを落とすので、4Kmの半分程度と考えれば無難だろう。

昨年は不調の年と言ってよく、売上はというと

2002年第2四半期(2001/10~2001/12) 1200万ドル
2002年第3四半期(2002/01~2002/03) 1270万ドル
2002年第4四半期(2002/04~2002/06) 1000万ドル
2003年第1四半期(2002/07~2002/09) 940万ドル


と言う具合に右肩下がりが続いている。同社の製品が採用されているのは、ARMとは逆に割と先端的な製品が多く、これが不景気とあって見事に売れ行きを落としていることと無関係ではないだろう。ただ、そうした中でも着実にライセンシーを増やすと共にマーケットシェアを増している事も事実である。特にスマートカード向けに関しては(他に有力な競合製品が無いということもあり)、今後ICカードが更に普及してくにつれてロイヤリティ収入が増えていくと考えられ、また家電機器として比較的好調な液晶プロジェクターとかSTBに多く採用されているという事などから、今後の見通しには比較的楽観的である。

ところでMIPSアーキテクチャは、これもARMと極めて対照的な様相を呈している。ARMは最近になって、アーキテクチャライセンスを持っている同士での互換性の無さが問題になってきているが、MIPSは早い時期からコレが発生している。例えばPS2に搭載されるEmotion EngineはMIPS64をベースとしながらも、データ幅を128bitに拡張するなどの独自拡張が施されており、もはやMIPS64と互換性があるとは言いにくい状況である。ところが面白い事に、(シェアの少なさ、もあるのだろうが)案外と互換性の無さが問題になっていない。複数のMIPSライセンシーが独自拡張したMIPSコアを持って同一マーケットで争う、という状況が殆ど発生していないのだ。強いて言えばネットワークプロセッサの分野では、多くのベンダーがMIPSコア(それもMIPS64 20Kcクラス)を利用した独自製品を投入していたりするが、この製品が使われるマーケットは1台数億円のコアルーターだの数千万のエッジルーターだの、といった特定用途向けである。従って、そもそも互換性とかを考える必要が余り無い(各ルーターメーカーが自社専用にコアを作っている状態に近い)訳で、結果として殆ど問題がない状態である。

今年の展開を見ると、新コア投入とかいう話は、今のところ皆無である。なにしろプロセスをシュリンクするだけで、簡単に高クロック動作のプロセッサを利用出来る。ネットワークプロセッサ向けには、1GHz動作をさせているもの(旧SiByte、現BroadComのSB-1コア)もあるほどで、別に新コアを投入しなくても性能面でのヘッドルームは十分にある。むしろライセンシーによるローエンド向け製品への再参入が今年の焦点になりそうだ。例えばAMDはAlchemyシリーズのプロセッサでPDAなどへ参入しようとしているし、携帯電話マーケットに参入を考えているベンダーもいくつかある。スマートカードマーケットは上述の通りなかなか有望であり、こうした分野で今年はARMと改めて激しい争いが起きそうである。

○Motorola 68K/Coldfire ~老兵は死なず、ただ消え去るのみ?~

かつてはEmbedded Processorマーケットで最大勢力を誇っていたのがMotorolaの68000系プロセッサ。68000/68020/68030の各CPUコアと、これをベースにしたSoCは非常に多くの分野に利用された。例えばDragonBallと呼ばれる、68000に周辺回路を搭載したチップは、その後DragonBall EZ/VZ/SZと進化しながら発展していった。また、68000をベースに通信制御系に必要な回路を統合したQUICC(Quad Integrated Communication Controller)と呼ばれるチップもあり、こちらはISDNルーターなどに幅広く利用されいている。また、68000ベースのままではどうしても性能向上に無理があるということで、この68000命令のサブセットを処理できる、ColdFireと呼ばれるRISCエンジンを開発した。最初のColdFireは最終的に製品化されず、ColdFire V2から始まってパイプライン構造を拡張したColdFire V3、スーパースケーラを搭載したColdFire V4、パイプラインを更に拡張したColdFire V5までが発表されており、これに続くColdFire V6ではスーパーパイプラインが導入されることになっている。

 図1:Motorola Embedded Processor相関図

ところがこのColdFire、なぜか完全に68Kを置き換える事にはなっていない。例えばDragonBallの場合、DragonBall SZと同時期にARM9コアを内蔵したDragonBall MX1が発表され、以後DragonBallはARM系プロセッサに移行することになっている。同様に通信制御系に関しても、CPUをPowerPCに置き換えたPowerQUICCがリリースされ、その後順調にラインナップを増やしつつある。このあたりの相関を図1にまとめたが、結局ColdFireは純粋に68000系(特に68030/68040)に特化したアプリケーション向けに継承されるのみで、あんまり積極的にこれでEmbedded Marketに討って出るといった位置付けにはなっていないようだ。大体Motorolaは、抱えているCPUコアの数が非常に多い。今取り上げた68K/ColdFire/ARM/PowerPC以外にもM-Coreと呼ばれる、また異なったアーキテクチャのRISCコアをEmbedded向けにリリースしており、どれにフォーカスしているかが判りにくい。一応ポジショニングとしてはローエンドがColdFire、ミドルレンジがARM、ハイエンドがPowerPCという事らしいが、こんな全方位政策でColdFireが大きくシェアを伸ばせるわけもない。結局、次第にマーケットシェアを縮小しながら細く長く売ってゆくという形になるだろう。

○IBM PowerPC ~今年もじっくり?~

PowerPCというアーキテクチャは、元々はIBMのPowerプロセッサのサブセットとして誕生したものである。このプロセッサが大きく普及するきっかけになったのは言うまでもなくAppleによるMacintoshへの採用な訳だが、PowerPC自体は単にMacintosh向けだけではなく、早くからEmbedded Processor向け製品が登場している。その最初の製品となったのはPPC401だが、これに続き動作クロックを上げ性能を改善したPPC403シリーズや、内部パイプラインを高性能化したPPC405、そしてデスクトップ向けのPPC750のパイプライン構造を導入したPPC440などが存在する。特に1999年に初めて発表され、2000年から出荷が始まっているPPC440(PPC440GP)の場合、0.18μmプロセスで1000MIPS@555MHzとかなり高い性能を持っており、その後登場したPPC440GXでは0.13μmプロセスで667MHz@1334MIPSに達しており、MIPS64と同等以上の性能を誇っている。またPowerPCの場合、デスクトップ向けの製品であるPPC603をEmbedded Processorとして流用するケースも目立っており、ある程度のパフォーマンスを必要とする用途に、確実に利用されるようになってきている。

このPowerPC、今年になったから何か大きく変わるという訳ではないのだが、IBMとMotorolaの間の妙な緊張関係が面白い構図を構成している。PPC440は、先ほどちょっと触れたMotorolaのPowerQUICCIIIを上回るスペックとなっており、通信制御の分野でシェアを奪い取れる可能性がある。その一方でMotorolaはe500と呼ばれる新しいコアを用意しており、AltiVecをも搭載することでEmbedded向け最高速PowerPCの座をPPC440GXから奪い取ろうとしている。一見すると2社で限られたパイを奪い合っている様にも見えるが、逆にエンドユーザーからみるとPowerPCアーキテクチャを搭載する、よく似た性能の製品の選択肢が増えた事にもなるわけで、こうした動きを歓迎する向きもあるようだ。結果として開発ツールの充実などにも繋がるといったメリットもあり、こうした動きもあって(大々的に、という訳ではないが)次第にシェアを増やしてゆくのではないかと予測される。

○Hitachi SuperH ~どこへ向かうかSH~

純日本産のコアである日立のSuperH。ただそのシェアは、日立が予定するほどには伸びないままでいる。SuperHの場合、日立自体によるコアの販売の他、SuperH( http://www.superh.com/ )によるIPのライセンス販売も行われている。コアの方は(DreamCastの生産中止などはあったものの)携帯電話向けなども好調ではあるが、ライセンス販売の方が伸び悩んでいるのがちょっと悩みの種である。

 Photo08:再びMPF 2002のセミナー資料より。SH-7に関しては講師も懐疑的だった。

製品ロードマップとしては、現在発売中のSH-4/SH-5に続き、来年中にはスーパースケーラを搭載したSH-6、2005年度にはマルチスレッドをサポートしたSH-7を予定しているらしいが、「現状のSH-5ですらそれを利用するクライアントがそう多くないのに、SH-7は誰をターゲットにしているのか?」という指摘があるほどだった。(Photo08)実際、携帯電話向けには(このロードマップには出てこない)SH-DSP(SH-3コアにDSPを内蔵したもの)が大量に出荷されている状態で、まだSH-4にすら移行していないのだから、これも無理はない。

また、ARM/MIPS/PowerPC共に、ハイエンドの用途の1つには必ずNetwork Processorが挙げられている。例えば先に出たBroadcomのSB-1は、Broadcomの10Gbpsオーバー向けNetwork ProcessorであるBroadcom 12500に採用される。IBMはOC-48(2.4Gbps)~OC-192(7.6Gbps)向けのNetwork ProcessorであるIBM Rainier(NP4)の制御プロセッサとしてPowerPC 405を搭載する。ARMですら、IntelのIXP2400/2800/2850 Network Processorに制御プロセッサとして内蔵されているほどだ。(*1)「ハイエンド向けEmbedded ProcessorはNetwork Processorに採用されるべき」とは言わないが、高い性能を生かしやすく、また実際に高い性能を必要とされる用途だけに採用しやすいわけで、逆にこうした用途に採用されていないのは製品の展開という意味ではやや苦しい気がする。

今後も日立は積極的にSHシリーズの展開を行っていくだろうが、現状「SuperHならでは」という、言わばキラーアプリケーションを欠いているのはやはり辛いだろう。急にシェアを落とす様な要因は見当たらないが、逆に急にシェアを増やす事も考えにくいのが正直なところだ。

 Photo07:今年10月に行われたMIPS32 4KSdの発表会資料より。結構身近にMIPS製品が溢れている事が判る。
 図2:IBM PowerPC相関図

○という訳で

書き上げてみると、元旦から何を書いとるんだ? という原稿になっており、われながらどうかしていると思わなくもないのだが、今年もこの調子でやっていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。

(大原雄介)(*2)

(*1) 流石にXScaleあたりではパケットルーティングには不十分であり、XScaleは純粋に制御だけ。パケットルーティングは内部の複数のMicroEngineで行われる。
(*2) 旧年中は業界の事情と言う奴で、高梨遊のペンネームでお世話になりましたが、今年からは大原雄介に戻す事が可能になったので、今後はコチラで書いてまいります。

【レポート】ユビキタス時代を担う"Embedded Processor"(1) - 増大する需要
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/01/01/03.html



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