DMCAをめぐる刑事訴訟で「ElcomSoft無罪」の陪審員判断

      [2002/12/18]

    ロシアのソフトウエア・メーカーElcomSoftに対してデジタルミレニアム著作権法(Digital Millenium Copyright Act:DMCA)違反の疑いが持たれていた裁判で、12人の陪審員が「無罪」という判断を下した。同裁判は、DMCAのもとで起こされた初の刑事訴訟として注目されている。

    98年に米国で制定されたDMCAには、著作権保護技術を無効にする技術や製品の流通防止が含まれている。ElcomSoftは、Adobe SystemsのeBookフォーマットのコピー防止機能を解除する製品「Adobe eBook Processor」をオンラインで販売。2001年の7月、米ラスベガスで開かれたハッカーのコンファレンス「Defcom」でElcomSoftのDmitry Sklyarov氏が講演を行った際、eBook Processor試用版のコピー500部を持ち込み、完全バージョンの購入情報を提供したために、講演終了後に同氏がFBIに逮捕された。

    しかし、この逮捕に激怒したプログラマの団体がAdobeに対する抗議活動を開始。不買運動にも発展したところで、AdobeはSklyarov氏に対する訴訟を取り下げた。最終的には、米司法省を原告、ElcomSoftを被告とする訴訟となり、有罪の場合は最高200万ドルの罰金とさらなる刑罰の可能性があった。

    裁判で司法省側は「ElcomSoftは違法ファイルを広める可能性があるツールを作成し、そのツールの合法性に疑いが持たれているにも関わらず販売していた」と主張。一方、ElcomSoftは、eBook ProcessorはeBookファイルのバックアップおよび他のデバイスに転送できる機能を持たせる製品で、著作権法上の公正使用にあたると説明した。さらにSklyarov氏は、eBook Processorで使用されている技術の開発はAdobeの著作権保護技術の研究だったと述べている。また、ElcomSoft側の弁護士は、Adobeから警告を受けた後、すぐに製品の販売を取りやめたことからも、ElcomSoftが著作権保護技術を無効にすることを目的としていたのではないと主張した。

    陪審員判断のポイントとなったのは、担当したRonald M. Whyte判事が、「有罪判断には、ElcomSoftがコピー防止機能を無効にする製品を販売したという事実認定だけでは十分ではなく、同社がDMCAを認識していながらこれを破る目的で行動したと認定する必要がある」というガイドラインを陪審員に示したことだ。その結果、ElcomSoftにDMCAを破るという意志があったと判断する決め手がなかったため、無罪という結論に達したと見られている。

    デジタルコンテンツの著作権保護の強化は不可欠だが、現時点のDMCAは曖昧かつ複雑であり、混乱を招く可能性があると指摘されることが多い。例えば、セキュリティの脆弱性を指摘するホワイトハットやグレイハットのハッカーですら排除する可能性があるし、少数派OSのデジタルコンテンツへの対応も難しくしている。今回の訴訟によって、DMCAの問題点が取り上げられ、ハッカーの倫理や研究・開発者のルール作成などの議論が活発化したのは好影響だったと言える。一方、DMCAを破る意志の有無が今回の無罪判断のポイントとなったことで、今後、捜査当局がプログラマや研究者などから証言を得ようとする動きに発展する可能性が出てきた。

    (Yoichi Yamashita)

    Digital Millenium Copyright Act
    http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/z?c105:H.R.2281.ENR:

    ElcomSoft
    http://www.elcomsoft.com/

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