【レポート】ロボット研究の20年を振り返る - 日本ロボット学会講演会(1)

 

2003年1月で創立20周年を迎える日本ロボット学会は、去る10月12~14日「創立20周年記念学術講演会」を開催した。3日間に渡る会期中、数十もの専門的なセッションが行われたほか、2日目の10月13日には、学会創立20周年を記念して、会員以外の一般参加者にも公開された特別セッションや講演会などが開催された。ここでは、それら公開行事の模様をお届けする。

午前中に行われた特別セッション「ロボット工学の過去未来 I」では、ロボット学会創立以来の日本のロボット研究のまとめと、今後の展望について講演が行われた。

○20年前から続く研究課題、90年代は産業用ロボットから

神戸大学 高森年氏

神戸大学の高森年氏は、20世紀中のロボット技術開発の変遷を総括。1960年代から本格的に始まった産業用ロボットの研究は、70年代に実用・普及レベルに達し、80年代に全盛期を迎えている。日本ロボット学会は1983年に発足したが、現在でも研究課題である知能ロボット、プログラミングによるロボット制御、ホームロボットなどは、この80年代に登場している。

1990年代には、産業用ロボットから離れる動きが強まり、研究は人間型/知能型ロボットへと移るようになった。レスキューロボット、福祉ロボットのような応用が積極的に考えられるようになったのもこのころである。1996年には本田技研工業(ホンダ)の2足歩行ロボット「P2」、1999年にはソニーのエンタテインメントロボット「AIBO」が登場するなど、記憶に新しい話題も多い。2000年代はまだ始まって間もないが、島津製作所の田中耕一氏がノーベル賞を受賞したことを受け、「ぜひロボットの分野からもノーベル賞を」と高森氏は提唱する。

○「ロボット知能」とは知覚と行動のつながり

立命館大学 有本卓氏

立命館大学の有本卓氏は「ロボット知能」をテーマに、今後ロボット研究が進むべき道を示した。有本氏は、1983年に当時MIT人工知能研究所長だったP.H.Winston教授が行ったスピーチの中の "Robotics is the intelligent connection of perception to action." という一文を引用し、「ロボット知能の本質とは知覚(perception)から行動(action)に至る道筋をつけること」としている。そして、ロボット研究はこのことを20年間忘れていたのではないか、と強く訴える。

現在のロボットは、センサで得られたさまざまな情報を、移動や姿勢制御など、主にリアルタイムでの行動のために利用している。一方、人間の乳児を見ると、手足をバタつかせたり這い回ったりして物体と触れることで、次第に空間というものが認識できるようになっていき、その結果、物を正確につかむなどの新しい行動を獲得していく。つまり、センサで得られた情報の蓄積が新たな知覚を生み、新たな行動生成を可能にしている。

有本氏は、センシングの本当の役割はリアルタイム制御のためではなく、ロボットと現実空間との幾何学的な関係を蓄積、集約し、将来の知覚にフィードバックさせるためのもので、そのメカニズムなしにはロボット知能の発達はあり得ないとする。そして「知覚と行動のふたつがコネクトするところで何かを作るという観点が、将来人間の生活の中で役に立つロボットを生むことにつながる」と話している。

○高次元化するセンシング

東海大学 増田良介氏

東海大学の増田良介氏は「ロボットセンシングの研究開発とその展望」と題し、センシング分野の中で特に視覚と触覚について講義。なお「センシング」とは、センサそのものだけでなく、センサによって得られた情報の処理や、制御も含めた広い範囲を指す言葉として用いられている。

本格的なロボット研究が始まる以前から、画像処理の研究はテレビジョンの開発として始まっており、そういった意味では視覚に関するセンシング研究の歴史は長い。古くは大型コンピュータを利用して行われていた物体判別などの技術が、半導体技術の進展により小型化し、現在ではロボットに内蔵することができるようになっている。また触覚についても、人工触覚を利用したパターン認識(物体の形状検出)など30年以上の研究の歴史を持つ技術がある。現在ではシート状のセンサを利用して接触した場所の2次元的な位置を検出する技術や、ヒューマノイドロボットに着せる全身スーツ型センサの研究も進んでいる。

センシング技術の進化方向としては、高感度・高速・高分解能化と、立体計測や位置検出といった高次元化が挙げられる。しかしそれだけでなく、同一感覚の複数のセンサや、視覚・触覚・聴覚といった異なる感覚のセンサを融合して利用する「マルチセンサフュージョン」活用の拡大が重要だという。また、センサが小型で安価になりつつあることで、どこにでもセンサを取り付けられるようになってきており、これまでにない応用が生まれることが期待される。

増田氏は、今回のロボット学会の専門セッションの約半数でセンシングが取り扱われていることに触れ、最後には「センサを制するものはロボットを制する」と述べ、センシング技術がロボットの進化に大きく関係していることを伝えた。

○聴衆も交えて今後のロボット像を議論

上記3テーマに加え、京都大学の吉川恒夫氏がマニピュレーション(ハンド・アーム技術)について、東京工業大学の広瀬茂男氏がロコモーション(移動技術)についての総括を行ったほか、セッション終わりの質疑討論時間には聴衆からも活発に意見が出された。「産業界からロボットを見ると、ロボットがどういう分野でどう使われ、人間社会にどう貢献するのかというビジョンをもう少し明確にする必要があると思う」「今後ロボットはコンピュータのように、いろいろな目的のための共通のツールになるのではないか。アプリケーションの開発も求められる」「普通の家電製品の寿命は7年から10年だが、ロボットも10年くらい持たないと商品して成立しないのではないか。機械・電気の分野だけでなく素材・材料研究分野との連携も必要な時期に来ているのでは」など、ロボット研究により幅広い視点を求める声が目立っていた。

京都大学 吉川恒夫氏
東京工業大学 広瀬茂男氏

また、翌日の10月14日には特別セッションの後半「ロボット工学の過去未来 II」が行われ、13日のセッション前半に比べより応用的な分野について、同様の講義と質疑討論が行われた。電気通信大学の高瀬国克氏が、ロボットを遠隔操作する「テレオペレーション」、豊田工業大学の梅谷陽二氏が、月や惑星探査用の「宇宙ロボット」、早稲田大学の長谷川幸男氏が、道路や建物などの建設現場で活躍する「建設ロボット」、工学院大学の三浦宏文氏が、昆虫記判型ロボットなどの「マイクロロボット」について概説。そして東京大学の井上博允氏が「ヒューマノイド」をテーマに、経済産業省・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「人間協調・共存型ロボットシステムの開発」などを紹介した。

会場では、この夏に開催された「レスキューロボットコンテスト」のデモンストレーションも行われた
"僕らのロボット" "ロボットのある
生活"をテーマにした「こども絵画コンクール」への応募作品展示

【レポート】立花隆氏「ロボットが戦艦大和にならぬよう」- 日本ロボット学会講演会(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/12/04/12.html
へ続きます

(日高彰)

【レポート】人間-ロボット間の理想的コミュニケーションとは? ロボット工学セミナー(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/08/28/18.html

【レポート】ロボット工学セミナー「ロボットの作り方 ハードウェア編」(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/06/13/20.html

日本ロボット学会
http://www.rsj.or.jp/



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