【レポート】Alchemyラインナップに無線LANチップを追加するAMD PCS(1)

Photo01 Phil Pompa氏。元々はAlchemy Semiconductorのやはりマーケティング担当副社長だった

日本AMDは、11月20日から22日までパシフィコ横浜にて開催された「Embedded Technology 2002」にブースを出展し、AMD Alchemyの製品展示を行うと同時に、新製品であるAm1772ワイヤレスLANチップセットの発表を行った。今回は展示発表にあわせて、米国よりPCS(Personal Connectivity Solution)グループのマーケティング担当副社長であるPhil Pompa氏も来日しており、いろいろと話を伺えたのでまとめてご紹介したい。

○PCSのポジション

AMDは現在、3つの製品グループが存在する。まずはAthlon/DuronやまもなくAthlon 64/Opteronを投入するCPG(Computation Products Group)、ついでフラッシュメモリに代表されるMG(Memory Group)、そして最後がCPGを補完するようなポジションにあるPCSである。このPCSがカバーするのは、Non-PCのコンシューマデバイスであることが多い。つまり、ハンドヘルドデバイスやカーナビ、Webパッド、ブロードバンドルータなどが主要なターゲットということになる。昨年までAMDはこうしたマーケットに対応するEPD(Embedded Product Division)という部門を持っており、たとえばAMD K6-2-EとかAMD ELANといったプロセッサを提供していた。ところが今年2月にAMDはMIPSベースのプロセッサを製造するファブレス企業であるAlchemy Semiconductorを買収し、このAlchemyとEPDが合体する形でPCSというグループが誕生した。この結果、PCSは単にMIPSベースのプロセッサだけではなく、組み込みマーケット向けのx86プロセッサも製品ラインナップに抱えている事になる。

さてそのPCSだが、現在は製品ターゲットを大きく4つに分け、各々に最適なソリューションを提供する方針である(Photo02)。この目的に合わせ、現在AMD AlchemyではAu1000/Au1100/Au1500という3種類の製品をリリースしている。

Au1000( http://www.alchemysemi.com/product_info/au1000/ )は最も基本となる製品で、MIPS32命令セットをベースとしたAu1コアに、周辺回路を統合したSoC(System On Chip)。最大500MHz動作で、メモリインタフェースやUSB、AC'97 Codec、2チャンネルのEthernet MACなどを内蔵する(Photo03)。

Photo02 Driver Informationとはカーナビの事。日本では道路案内がメインのカーナビだが、米国ではむしろリアシートでのDVDの再生といったエンターテイメント性が重視されるという。Entertainmentとは携帯ゲーム機や、広義にはネットワークゲーム端末もこれに含まれる。Computing DeviceとはWebタブレットなど。Student PCは後ほど詳細に触れたい。Regidential/SOHO Access Deviceは、日本でいうブロードバンドルータにあたる
Photo03 Au1000はあまり大きな表示部の必要ない、たとえばブロードバンドルーターなどの用途に向けた製品である。ちなみにPseudo-Static Design(擬似静的回路)というのは、動作クロックを0まで下げられるという意味。通常のCMOS回路はDynamic Design(動的回路)で、クロックの下限が決まっており、これより下がると動作しない。Pseudo-Static Designを搭載することで、Au1000は不要時には完全に停止することが可能となり、待機電力の削減に貢献するという話だ

Au1500は、Au1000の機能に加え、32bit 33MHz/66MHz PCIインタフェースを内蔵する。これにより、外部デバイス(たとえば無線LAN向けのCardBus I/Fとか、ディスクを搭載するためのIDE I/Fなど)を接続することが可能である。こちらは従って、HDDレコーダーとか無線LANのアクセスポイント、簡単なハンドヘルドデバイスなどに向けた構成となっている(Photo04)。

Au1100は、最新の製品である。こちらの構成はAu1000に良く似ているが、EthernetのMACを1チャネルに減らし、その代わりLCDコントローラ(最大800×600ピクセル、16bitカラー)を内蔵している。また、TSMCの130nmプロセスを利用(Au1000/1500は、TSMCの180nmプロセスである)して消費電力をAu1000の半分近くに下げることに成功している。LCDコントローラを内蔵していることからも判るように、こちらはWebタブレットなどに代表されるIA機器を想定している(Photo05)。

Photo04 PCIバスのI/F以外、完全にAu1000と同じ構成である。ただ、PCIバス向けのピンが追加されたことで多少パッケージが大型化したほか、消費電力も多少は増えている
Photo05 他に、Secure Digital Card Memory I/Fなるものが追加されている。これは要するに、著作権保護に関係した部分。Contents Protectionが施された音楽ソースをメモリカード経由でやり取りする場合に利用される

これら3種類のAuシリーズ製品と、従来から発売しているx86ソリューション(AMD-K6-2-EやK6-III-E、最近ではAthlon/DuronのEmbedded向け製品もラインナップに加わった)がPCSの主な製品ラインナップだが、ここに今回新たに、無線LANチップが追加されることになった。

○Am1722の特徴と狙い

Photo06 IntersilのPrismIIIがちょうどこんな構成になっている。もう無線LANチップを発売中の各社の製品動向は、802.11bの高密度化よりも802.11a/bコンボチップに向かっているため、802.11b専用チップの構成は大きく変わらないだろう

一般的に無線LANの構成は、AFE(Analog Front-End)、RF(高周波回路)、BB/MAC(ベースバンド/MAC)といった具合に分けられる。初期の無線LAN製品の場合、RFとBBの間にはさらにIF(中間周波数回路)が存在し、ここで一旦信号周波数を下げてから処理するといった事が行われていたが、最近はCMOS回路をベースに2.4GHzクラスの信号を直接ハンドリングする方式が一般的になったため、この3ブロック構成が一般的だ。ただその中身を見ると、BBとRFの間はアナログ信号が利用されているのが普通で、また外部にはVCO(可変周波数オシレータ)やフィルタ、SRAM/Flash Memoryなどを装備する必要があった(Photo06)。

Photo07 また、これまで外部に接続する必要があったVCO/フィルタ/メモリ類がすべてチップ内に統合されている、という大きな特徴もある

一方今回発表されたAm1722は、802.11bのみをサポートする2チップの無線LANコントローラである。現在のトレンドが802.11a/bのデュアルサポートであることを考えるとちょっと見劣りするスペックである。ただ、内部構成がちょっとPhoto06と異なっていることがお分かりだろうか? 通常、AD/DAコンバータはベースバンド側に装備するため、RF側との間でアナログ信号のやり取りが必要になる。ところがAm1722では、AD/DAをRF側に持ち込むことで、RFとベースバンドの間をデジタル信号で接続することが可能になっている(Photo07)。これがもたらしたのは、類のない小型化である。実際に今回はMiniPCIカードに実装されたAm1772評価カードが示されたが(Photo08)、パーツの実装面積は非常に小さい事が判る(Photo09)。しかも裏面は見事に何も実装されていない(Photo10)。従来の802.11bカードがいずれもMiniPCIカードの両面にフル実装されていることを考えると、非常に小型化されていることが判る(Photo11)。

Photo08 MiniPCIカードに実装されたAm1772の動作サンプル。手前の大きなチップがAm1771、小さいほうがAm1770である。ただ実際には奥のサンプルの様に、Am1770はシールドケースで覆われることになる
Photo09 ごらんの通り、実にシンプルな構成。PA(パワーアンプ)部と、アンテナ切り替えスイッチ(送受信)がAm1770の周囲に配置されていることがわかる。Am1770とAm1771の間がデジタルなため、特にアナログ用の信号線を引き回す必要がないのは大きい
Photo10 裏面はこの通り、見事なまでに何も搭載されていない
Photo11 他社製品との比較。AgereとIntersilはやや古いチップセットの例なのでちょっとアンフェアな気もするが、しかし最新製品を使ったものでもAMDほどには小さく出来ないのは事実だ

ちなみにAm1772の特徴は他にもある。一般的に、無線LANチップを利用する場合、CPUからのポーリングが必ず発生する。勿論A4フルサイズクラスのノートに搭載されるCPUならばこの程度は全く問題ないが、ハンドヘルド系の場合にはこれが馬鹿にならないCPU負荷だし、第一定期的なポーリングによるCPUの消費電力の増加が問題となる。そこでAm1772は、ホストとの間でDMA転送を行うように設計された。つまりデータを受信した際にはDMAでデータを転送しておき、ついで割り込みを掛けて通知するという方式だ。これによりCPU負荷が減り、また無線LAN利用時の稼働時間の延長にも貢献するという仕組みだ。

なお同社は今後、このAm1772を既存のAu1x00シリーズに統合した製品をリリースすると共に、来年中には802.11a/gのコンボチップをリリース、また製品とは別にこのAm1722についてIPコアでの提供も行ってゆく、としている(Photo12)。ちなみにMiniPCIのリファレンスキットは11月中旬に、PCカードタイプのリファレンスキットは来年早々に出荷が開始されるとしている(Photo13)。

Photo12 Am1722を統合する最有力候補はやはりAu1100。PCだけでなくPDAも、ホットスポットや室内で無線LANによる接続を行うのが一般的になっている訳で、リーズナブルな解となるだろう
Photo13 HPのノートPCに搭載してのデモ動作。Windows系のドライバの他、Linux/VXWorks/Windows CEのドライバも提供される(Windows CEのみ、来年第1四半期)

【レポート】Alchemyラインナップに無線LANチップを追加するAMD PCS(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/25/21.html
に続きます

(高梨遊)

AMD、無線LAN市場へ参入 802.11b準拠のチップセットを発表
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/05/10.html

AMD、LCDコントローラーを内蔵した「Au1100」を発表 PDA/IAへ参入開始
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/04/08/14.html

日本AMD
http://www.amd.com/jp-ja/



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