【LCD/PDP International 2002レポート】最新有機ELロードマップ、実用化は来年?

      [2002/10/31]

    今回は、セミナーの様子もお届けしよう。セミナーは、「液晶ディスプレイ・セミナー2002」「PDPセミナー2002」「有機ELセミナー2002」と、各テーマ別にわかれており、それぞれ最新のトピックについて、各社トップやキーパーソンによるセッションが行われていた。記者は有機ELのセミナーに参加してみたが、東芝松下ディスプレイテクノロジー 開発センター センター長の茨木伸樹氏による講演「有機ELの技術シナリオ」で、有機ELの技術課題や最新動向について、分かりやすくまとめられていたのでここで紹介したい。

    ○有機EL vs LCD

    有機ELは、ガラス基板上に、透明な陽極、有機発光材料、金属の陰極の順に形成され、陽極からの正孔と陰極からの電子が発光材料中で結合することで発光する。LCDと違い、有機材料が自発光するため、バックライトが必要無いほか、画質の面でも様々なアドバンテージがあるとされる。また、駆動方式の違いでみると、有機ELは電流駆動型素子(LCDは電圧駆動)、直流駆動(LCDは交流駆動)といった点があげられる。

    有機EL(OLED)の基本原理図。バックライトが要らないため、薄型化が可能となる
    有機ELの特徴をレーダーチャートで表したもの。青がアモルファスシリコン、紫がポリシリコンで、緑が有機EL

    ディスプレイの性能を考えるとき、「薄さ」「寿命」「明るさ」「色再現性」など、複数の項目が考えられるが、氏はまず、そういった各項目において、有機ELとLCDとの比較を紹介した。「解像度」「コントラスト」では互角、「寿命」で負けてはいるが、それ以外の項目では全て上回るとする。モバイル機器にとって重要な「薄さ」「軽さ」、TVなど動画表示に必要な「視野角」「応答速度」で優れており、これらのポテンシャルを最大限活かしていくと述べた。

    ○有機ELの材料・駆動方式の種類

    有機ELの駆動方式には、「パッシブマトリクス」「アクティブマトリクス」、材料には「低分子」「高分子」などの違いがある。

    パッシブ型は行電極と列電極を選択し、1ドットずつ点滅させるため高速動作には向かないが、構造が単純なため、開口率が高いというメリットがある。しかし、1ラインを同時に点灯させることが可能なアクティブ型は、各ドットに制御回路が必要なため開口率は悪くなるものの、それ以外の点では大幅に優れた特性を持っている。特に、パッシブ型は1ドットずつ点滅するのでドットの輝度を高くする必要があり、印加する電圧はアクティブ型の10倍にもなるため、アクティブ型に比べ寿命は200分の1、消費電力は10倍にもなってしまう。こういった制限のため、パッシブ型ではQVGAが限界ということだ。

    発光体の材料では、材質によりプロセスに違いがあり、低分子では蒸着、高分子ではインクジェット方式などが採用される。低分子の蒸着では、シャドーマスクを利用して任意の場所に有機EL材料を吹き付けるが、マスク加工や保持が難しいうえ、材料のほとんどはマスクにつくなど、材料の利用効率も低いなどの欠点がある。その点、高分子のインクジェット方式では、任意の場所に効率良く材料を載せることが可能で、大面積化にも容易に対応できる。同社が試作した17インチ有機ELでもこの方式が採用されたとのことだが、氏によれば「材料そのものの機能でいえば高分子でも低分子でも構わないが、こういった生産性の問題で、最終的には高分子が利用されるようになるだろう」と述べていた。

    また、発光材料の開発状況に関しては、蛍光低分子はR/G/Bとも種類は豊富だが、蛍光高分子はBの寿命がまだ不十分、またリン光低分子ではBが未開発、リン光高分子はR/G/Bとも最近開発に着手したばかりということだ。やはりエネルギーが高い領域での発光のBが、最も難しいとのことだ。

    ○有機ELの現状

    次に、現在の有機ELの性能に関して説明された。有機ELの弱点がその寿命の短さにあることは広く知られていることだが、この寿命、色再現性、輝度、輝度ムラの4点について、要求仕様と現状性能の比較を述べた。

    要求仕様は、そのデバイスの種類によって異なるが、携帯電話の場合、輝度は100nit(cd/平方m)以上、寿命は5,000時間以上、TVの場合、輝度は400nit、寿命は3万時間以上、とした。それに対し、現状の有機ELでは、輝度は100nit、寿命は5,000時間以下と説明し、「現状の実力は、携帯電話の要求仕様に今一歩」と評価した。ただ、色再現性ではほぼ要求どおりの性能を達成している。

    技術的な課題としては、「輝度」「寿命」「色純度」「輝度ムラ」をあげた。このうち輝度に関しては、陽極ITOやガラス基板など屈折率の差によって起こってしまう内部への反射の問題をあげ、発光量の20%しか外部へ出てこない現状の改善が必要であるとした。この20%も、外部からの光が陰極のアルミで反射するのを防ぐための円偏光板でさらに半減し、最終的に外部に出るのは10%ということになる。当面の目標としては、この光取り出し効率を1.5倍に、そして内部量子効率を2倍にすることで、発光効率(cd/A)を3倍にしたいとのことだ。

    ○実用化ロードマップ

    そして気になるロードマップだが、(1)携帯電話、(2)PDA、(3)車載端末・アミューズメント、(4)TV・PC--という4段階に分け、それぞれ2003年、4年、5年、6年の実用化というシナリオを述べた。これは、ステップが進むごとに要求される仕様が上がっていくためで、たまたま小型のものから大型のものへという順序になってはいるが、直接的には大きさは関係ない。

    ここでの要求仕様は、寿命×輝度で表現されており、現状を1としたときに、PDAでは2倍、車載端末では20倍、TV・PCでは60倍の性能が必要とした。その60倍を達成する見込みとして、氏は「大雑把にみて」と前置きしたうえで、「材料の改善で4倍、発光効率で5倍、開口率で3倍、あわせて60倍」を見込む。

    TVに搭載されるのはまだ少し先になるが、展示会場で担当者に聞いたところでは、携帯用有機ELを量産中、またはまもなく量産開始というところもあり、少なくとも携帯電話に来年、搭載されるのは間違いなさそうだ。寿命に関してはまだ多少不安も残るところだが、今後の改善に期待したい。

    (大塚実)

    【LCD/PDP International 2002レポート】ケータイ用高精細液晶、有機ELが多数展示、各社から登場間近か?
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/10/31/07.html

    東芝松下ディスプレイテクノロジー
    http://www.tmdisplay.com/tm_dsp/

    LCD/PDP International 2002
    http://expo.nikkeibp.co.jp/lcd/ja/

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