米IBM、分子レベルの大きさで動作する世界最小の演算回路の構成に成功

      [2002/10/25]

    2入力-2出力の回路。青と赤がCO分子で、このうち青色のものだけが分子カスケードとして動作する。一見左右対称のようだが、よくみると違いがある
    米IBMは、銅の基板上に配置した一酸化炭素分子(CO)を利用する、世界最小の演算回路の構成に成功したと発表した。構成に成功した3入力-3出力の簡単な演算回路で大きさはわずかに12×17ナノメートル、この技術を使えば、現在の半導体ベースの回路に比較して、26万分の1の大きさの回路が作成可能だという。

    同社が開発したのは、「分子カスケード(molecule cascade)」と呼ばれる技術。これは、従来の回路のように信号の伝達に電流を使うのではなく、もっと物理的に、CO分子を"ドミノ倒し"のように使って信号を伝達する。CO分子は銅基板上でパターンを構成しており、最初のCO分子を"押す"ことで、まるでドミノ倒しのように次から次へとCO分子が連鎖して押していかれる。ここで、押された状態を"1"、押される前の状態を"0"と考えれば、デジタル回路と見ることができるというわけだ。

    回路を構成する要素としては、配線のほか、AND/OR演算器、配線の分岐、配線の交錯の4種類も、同じようにCO分子のみで実現しているが、これもドミノ倒しのようなイメージで考えれば分かりやすいだろう。ともに2入力のAND/OR演算器だが、CO分子の配列を巧妙に設定することで、それぞれのロジックの違いを実現している。

    左上の入力Xのみ"1"のとき。右下のOR演算の結果が"1"になる
    右上の入力Yも"1"になると、左下の ANDの結果も"1"となる

    構成に成功した2入力-2出力の回路では、AND、ORを1つずつ、分岐を2つ、交錯を1つ配置し、入力XとYのAND演算の結果を出力1に、入力XとYのOR演算の結果を出力2に、それぞれ出力することができる。さらに、それを3つ組み合わせ、3入力-3出力の回路の構成にも成功している。この回路では、全ての入力が"1"のときに出力1が"1"、2つ以上入力が"1"であれば出力2が"1"、入力のどれかが"1"であれば出力3が"1"、という結果を出力することになる。

    これが、3入力-3出力の回路。2入力-2出力の回路を3つ組み合わせてある

    回路の構成は、4~10K(絶対温度)という極低温、真空状態という環境下で、走査トンネル顕微鏡(STM)を使ってCO分子をひとつひとつ配置したため、これらの回路を構成するのに数時間を要したという。また、現状では回路の「リセット機能がない」など、実用化への課題は多いが、将来的には電子スピンなど他の相互作用を応用することで、通常の回路のように何度も計算できるナノスケール回路の実現は可能、としている。

    米IBM
    http://www.ibm.com/

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