【レポート】清華大学にみる産官学協同 - 国内外の技術、企業交流の結節点狙う(1)

 

知識経済時代の幕を開いた成功事例として、米国のシリコンバレーはあまりに有名だが、その成功を為さしめたものは、国家財政の積極投入と、独特の産学協同体制であった。

中国は、自国のハイテク産業振興の基本モデルとして、ハイテクの源泉である知識人材を、国内の大学や研究機関に蓄積し、それらの研究成果を効果的に産業界へ移転する米国型のメカニズム構築を掲げ、比較的早くから、それを実行に移してきた。

現在では、清華大学、北京大学、あるいは東北大学(瀋陽市)など、全国の主要大学で、研究成果の公開、企業への技術移転がきわめて積極的におこなわれており、大学が自らベンチャー企業を興し、なかには北大方正、清華同方、東大阿爾派のように、各業界でリーダー格を占める上場企業まで出現してきている。

80年代から深刻化していた国有企業の経営破たんと、経営資源的に未成熟な私営企業群という時代背景が、中国におけるハイテクベンチャーの担い手としての「大学」の地位を殊更引き上げたともいえるが、ともあれ、いまや中国のハイテク振興政策において、「大学」をコアとした産官学協同体制は、もっとも重要な機能のひとつを担っていると考えられる。

筆者は、このほど北京大学等と並び称される中国の最高学府、清華大学の科学技術開発部を訪ね、同大学における技術移転の現状、中国の国家ハイテク振興政策全体に於ける同部の位置づけ、および日本をはじめとする海外の産業界との関わりなどについて取材した。以下は、そのレポートである。

○「米国留学予備校」から理工系トップクラスの学府に

清華大学(東門)

はじめに、清華大学について、簡単に触れておく。清華大学は、その前身を「清華学堂」と称する。1911年に米国政府より返還された「義和団事件」の賠償金を基に設立された「米国留学予備校」が、そもそもの出発点である。1925年に大学学部本科が設置され、28年には「国立清華大学」と改名された。その翌年には大学院も開設されている。

中華人民共和国成立後は、1952年の国家高等教育機関体制改革の結果、理工系総合大学としての位置づけを与えられ、爾後基本的には理工系科学技術人材の養成校として機能してきたが、その後78年に始まった「改革開放」政策のなかで、逐次、人文社会科学関連の学科を増設、現在では11学院、計44学科、目下進行中の医学部を加えれば、名実ともに中国を代表する総合大学ということになるであろう。なお、教職員の陣容は、中国科学院院士24名、同工程院院士24名を含む総勢7,100名体制とされている。清華大学の年間研究開発資金は、年間7億から8億人民元におよぶ政府補填資金のほか、自己資金としての3億元程度を加えた10億人民元以上となっており、これは中国国内で最大規模である。

さらに、学術論文発表数、取得特許数、技術移転数、校弁企業(いわゆる「大学発ベンチャー」を指す)設立件数など、いずれの指標でも中国トップクラス。加えて、清華大学は現在(2002年10月時点)、中国国家指導層にもっとも多くの人材を供給している大学でもある。なかでも90年代半ばから、一貫して中国の市場経済化を指揮してきた朱鎔基首相、そして次期国家主席と目される胡錦涛国家副主席らがその卒業生として有名である。こうした人脈背景がもつ「ビジネスバリュー」は、現在の中国にあっても、とりわけ重要な意義をもつ。

○技術移転を担う組織群

清華大学では、三つの組織が科学技術移転に関する部署となっている。まずは、科学技術開発部。同部は、1991年に大学総長直属部門として設立された学内TLO(Technology Licensing Organization: 技術移転機関)である。2001年だけで、800項目以上の技術開発および技術コンサルティングを実施し、5億元以上の契約実績を上げている。

さらに注目すべきは、同部が、中国国内20以上の省、50以上の市政府機関とコンサルティング契約を締結しており、このなかには地方政府に対するベンチャーキャピタル機能(科技風険投資開発基金)や、企業化支援コンサルティングなども含まれていることである。たとえば、山東省経済貿易委員会とはスタッフの相互交流、研修、共同研究などを実施しており、清華大学が、"中国における産官学協同のコア"として機能している実情を如実に表している。

つぎに、学内には「企業合作委員会」が設置されている。同委員会は、中国国内外からの160数社にのぼる有力企業を会員とする非営利組織であり、清華大学と会員企業の間で、技術開発、技術移転などに関するプロジェクトを企図実行するとともに、会員企業向けに、中国国内外の市場開拓支援コンサルティング、人材研修、ビジネス情報提供サービスなどを実施している。いわば同委員会は、清華大学を中心とした中国国内外企業ネットワークの中心に位置している。

この「委員会」には、上海宝山鋼鉄集団公司、上海汽車工業総公司、首鋼総公司、深セン華為技術有限公司などをはじめとする中国国内の有力企業130余社、そして、GM、IBM、モトローラ、P&G、AT&T、シーメンスなどの欧米多国籍企業が名を連ねる。日本からは、日立製作所、三菱電機、松下電器、NEC、東芝、石川島播磨重工業などが会員となっている。

最後の三つ目となる組織が、「国際技術転譲中心」(国際技術移転センター)である。ここでは、国際的な技術移転を全般的に管理するとともに、関連学科の設立などにも関与している。さらに、上記「企業合作委員会」の海外部としての顔も併せ持つ。

【レポート】清華大学にみる産官学協同 - 国内外の技術、企業交流の結節点狙う(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/10/23/10.html
へ続きます

(薄田雅人)

【レポート】マイクロソフト亜洲研究院 - 知識経済大国めざす中国の「縮図」(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/09/20/09.html

【レポート】シリコンバレーと中国 - 人材大環流の実相(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/06/28/14.html



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