【MPF 2002 レポート】Nehemiahの詳細が明らかに

Photo01:Centaur Technologyの創立者兼CEOであるGlenn Henrys氏。業界ではその職歴(と変人ぶり)で名前が轟いているお方でもある。いつ見ても不機嫌そうなのは、すでにトレードマークか?

現在のVIA C3プロセッサコアは、EzraおよびEzra-Tと呼ばれるものだが、この製品は極端に言えば、IDTの旧WinChip系列のプロセッサにSocket370インタフェースを搭載したものと言っても良い。そのEzraも今年は順調に1GHzの壁を越えて動作するようになっている。これに続くプロセッサコアがNehemiah(ニアマイア)だ。昨年のMicroProcessor ForumでC5XおよびC5XLとして紹介されたNehemiahの詳細が、今回の公演の主題である。

○Glenn節炸裂

さて発表は旧IDT傘下、現在はVIAの傘下となっているCentaur Technology Inc.のGlenn Henry氏(Photo01)である。まずは昨年を振り返って、「いろいろあったけど、われわれの戦略は正しかった!」とのっけからぶちまけるハイテンションぶりだった(Photo02)。もっとも、VIAがターゲットとしているボリュームマーケットのトレンドは、"Computing"から"Connecting"に移りつつあることは認識しているそうだ。ちなみにC3がどんなところで使わているかといえば、格安PCだと言う(Photo03)。

Photo02:生産が遅れ、しかも業界全体が不況にも関わらず、売上が伸びつづけているのは戦略が正しかった証拠だ、と言わんばかりの「昨年のまとめ」
Photo03:例えばCeleron 1.3GHzを使った構成だと$499.00になるのが、C3/800MHzだと$199.86で収まるという例。OSのコストもLindowsを使って節約するようなマシンの場合、CPUの価格は無視できないファクターになるという

○EzraからNehemiahへ

さて、現在出荷されているC3プロセッサはSamuelもしくはEzraコアとなっている。このふたつ、基本的にはプロセスの変更と、これに伴うコア電圧の低下と動作クロックの向上が主な違いである(C5A→C5Bの過程では、オンダイL2キャッシュが追加された)。現在出荷されているコアは0.13μmのCu配線を利用した製品であり、最終的な動作速度は1.1GHzに達するとしている。これに続くコアが、Nehemiahと呼ばれるC5XLコアである(Photo04)。この両者のスペックを比較すると、3DNow!のサポートを廃止し、代わりにSSEやP6の独自命令を追加している点がちょっと目を引く。また同一クロックで比較すると、Ezraコアより10~30%高速になっている(Photo05)。

Photo04:直近の製品ロードマップ。点線の左が出荷済である。Nehemiahにしてもすでにサンプル出荷は開始しており、量産も始まっているという。NehemiahとEzra-Tを比較した場合、(Nehemiahの方が)トランジスタ数が多いにも関わらず、ダイ面積は却って小さくなっていることに注意
Photo05:Functionの項を比較すると、Dual Processorのサポートのほかに、AISあるいはEnhanced AISといった項目が目を引くが、これは後述する

内部構造を比較すると、既存の12段から17段にとパイプラインが深くされており、これにともなうパイプラインハザードの影響を減らすためにBTAC(Branch Target Address Cache)を追加することで分岐予測の精度を上げる工夫がなされている(Photo06)。また処理性能の向上にあわせ、L2キャッシュを容量は64KBのままながら4wayセットアソシエイティブから16wayセットアソシエイティブに変更するといった工夫がなされている。また、従来はCPUクロックの半分で動作していたFPUをフルスピードで動作するようにしたり、細かな改良(1クロックで処理できるRET命令、アドレス生成を0クロックで実施できる仕組み、実行ユニット自体の改良など)を積み重ねているという。

Photo06:赤い部分は従来のEzraコアの継承で、黄色い部分がNehemiahで追加された部分。ただ実際にはパイプラインは追加されたというよりも随分作り直したようで、単に段数を比較して黄色くしているだけで、既存のパイプラインの後ろに何段か追加したという意味ではないようだ
Photo07:とにかくSYSMarkとかが大っ嫌いなお方であり、このプレゼンテーションのすべての文章からも、それは感じられる

さて、実際のパフォーマンスを示す前に再びGlenn節が炸裂した後で(Photo07)、2つのパターンの結果が示された。まずは内蔵グラフィックを利用した場合で、VIAのCLE266にCeleron 1GHz/Ezra-T 1GHz/Nehemiah 1GHzを組み合わせたケースと、Celeron 1.7GHzにIntel845Gを組み合わせた市販マシンでのケースをまとめたものだ。(Photo08)数字に多少上下はあるが、概してCeleron/1GHzと良い勝負になっていることが判るだろう。更に、40ドル程度のグラフィックカード(GeForce2 MX400だそうだ)を追加したケースが下の写真(Photo09)で、こちらでも殆ど同程度の性能を維持できていることが判る。

Photo08:ローエンド製品の場合グラフィック統合が当然であり、この結果内蔵グラフィックでの比較という事になる。 CLE266の3D性能は、i845Gと比較してもけして高いものではなく、この結果Celeron 1.7GHzのシステムがQuake3や3DMark2000で良い結果を残すことになる。
Photo09:グラフィック性能を同じGeForce2MXに統一すると、Celeron 1.7GHzの性能の低さが露呈することになる。

○AIS(Altanate Instruction Set)

ところで今回公開された内容に、AIS(Altanate Instruction Set)の存在がある。現在販売されているx86系プロセッサは、(NSのGeodeとかRISEのiDragonなど例外もあるが)殆どはデコード段でx86命令をRISC命令に変換した上で、それを内部のRISC処理ユニットで実行するパターンを取っている。違いを強いて言えば、この際に、x86を直接RISC命令に変換するか、マイクロコードを利用するかという程度だろう。

Photo10:ちょっと判りにくいが、左がEzra、右がNehemiahという「訳ではない」。EzraにもこのAISの機能が入っているそうで、今までは隠し機能として公開しなかったということの様だ
Photo11:EzraやNehemiahでは、bound命令をAISモードとして認識することになる。

これに対し、AISは変換せずに直接RISC命令を処理する。要するにx86命令ではなく、Nehemiah内部で利用しているRISC命令をそのままプログラムとして記述できるというものだ(Photo10)。具体的に言えば、既存のx86命令に混在させる形で"62 80"という命令を与えると、その後に続く4バイトはAISとしてx86→RISCの変換を行わずに直接処理を行うというものである(Photo11)。こうした仕組みは、過去にまるで例がないという訳ではない。例えば台湾RCCのRC8000シリーズというプロセッサは、80186互換モードを持つRISCプロセッサであり、80186相当のx86命令と独自のRISC命令の両方を利用することができる。

Photo12:x86の命令の制限は受けないので、例えば3オペランド命令を実行したり、場合によってはx86の保護機能をスキップすることもできるという。

ただ、そのRC8000シリーズにしても、両方の命令を混在して実行できるわけではない。(リセットの際にどちらを利用するか決定できる)冷静に考えると、AISを利用する場合には、毎回頭に2バイトの符号をつけてやる必要があるわけで、この結果プログラムのサイズは1.5倍に膨れ上がる事になる。コード密度の観点や、命令キャッシュの占有率を考えると、全てのプログラムをAISで記述するのは賢明とは言いがたい。普段はx86命令を使い、スピードアップの要所だけAISで記述という使い方を想定していると思われる。

ちなみに内部命令をそのまま実行できるとあって、AISの機能はかなり強力になっている。(Photo12)もっともこのAIS自体はNDAを結ばないと事実上利用はできない。内部のRISC命令が判れば、大雑把な内部構造まで推察できてしまうことを考えれば、これは当然だろう。また、このAISを利用するユーザーはというと、一般的なx86向けプログラマではなく、EzraなりNehemiahなりを利用して組み込みシステム(例えばSetTopBox)を作るエンジニアということになるだろう。何しろC3シリーズでなければ意味がないから、プラットフォームが特定できるユーザー以外にメリットはないし、一般的なコンパイラなどでは当然当然サポートされない命令だから、利用されるケースは極めて限られることになるだろう。

○消えたC5Xと今後のロードマップ

ところで、Grenn氏は昨年のMicroProcessor Forumで、C5Xというコアを紹介していた。C5XLはこのC5Xのサブセットという位置付けである(Photo13)。マーケットにはまずC5Xが投入され、ついでサブセット版のC5XLが投入されるという順だった(Photo14)。

Photo13:昨年のGrenn Henryの講演から。C5Xはデコード段とMMX/SSEが2命令/クロック、整数演算が1.5命令/クロックという、ちょっと面白いスーパースケーラプロセッサになる筈だった。
Photo14:同じく昨年の講演から。まずC5Xが投入され、これに続いてC5XLと、C5XLのプロセス改良型であるC5YLがそれぞれ投入される予定だった。
Photo15:「われわれの業界にはいつものことだが、細かなスペックは出荷前に変わる可能性がある」という注意書きがあるあたりが、まぁCentaurらしいというか
Photo16:正式名称がどうなるのかはまだ決まっていないそうで、とりあえずはVIA C3 Nehemiah Processorという名称で展示されていた。

ところが今年のロードマップを見ると、完全にC5Xは消えた模様で、次世代コアはC5XLに一本化された模様だ(Photo15)。もっともそのC5XLだが、大量の派生型が予定されている。省電力型で1GHz程度の動作速度に抑えたC5XP、「異なるバスインターフェース」(これがP4バス、あるいはBaniasのバスではないかという予想はあるが、公式には肯定も否定もされなかった)を備えるC5Y、アーキテクチャを拡張(パイプラインを17段から22段に増やし、SSE2のサポートの追加とBTACの大型化)したC5Zなどが予定されている。また、場合によっては統合製品なども予定されているようだが、このあたりはまだ流動的ではっきりしないのは、いつもの話と言えるかも知れない。

Photo17:ケーブルが邪魔で見えにくいが、CPUクーラーに隠れてNehemiahがいる。組み合わせているマザーボードはVIA CLE266を使ったサンプルボード。

ちなみにカンファレンス後の展示会では、実際に1GHzで動作するNehemiahプロセッサのデモが行われていた。

(大原雄介)

MYCOM PC WEB - Special - PCパーツロードマップ ~2002年7月から2003年6月まで~
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2002/trendsummer/03.html

【NewsSpecial】MPF 2002 レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2002/10/16/02.html

【インタビュー】VIA Technologies(1) - 進化を続ける「Eden」「C3」
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/09/30/15.html

VIA Technologies
http://www.via.com.tw/

 



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