【MPF 2002 レポート】Baniasの詳細が更に明らかに

Photo01:発表はおなじみ、General Manager, Israel Design CenterのMooly Eden氏。前回日本に来た時、刺身を食べて「こりゃなんだ?!」とか思ったそうだが、今ではすっかり寿司と日本酒が大好き。発表の後のラウンドテーブルで、「次は富士山に登りたい!」と言っていた

今年秋のIDFで、その一部(MicroOps Fusionの仕組みなど)が明らかにされたIntelのモバイル向けプロセッサであるBaniasだが、今回のMPFでは更にいくつかの詳細が明らかにされたので、これをまとめてみたい。(Photo01)

○Banias Processor Platform

Photo02およびPhoto03は、OdemおよびMontana-GMを利用したBanias Processor Platformの構成である。「Platform」という文言がキーワードで、つまりBaniasプロセッサは単体で省電力性と高い性能を発揮するわけではなく、OdemないしMontana-GM+ICH4-Mのチップセットと、"Calexico"のコード名で知られる802.11a/11bのデュアルバンド無線LANコントローラの組み合わせにより、省電力性と高性能を発揮できるとする。つまり単にCPUの消費電力を絞るだけではだめで、チップセットや無線LANコントローラまでが一体となって省電力性を確保するとしている。過去のIDFで、デスクトップ向けのNorthwoodをOdemと組み合わせて動かしたデモを公開しているから、逆に考えればIntel845MPとBaniasを組み合わせることは(Full-Functionで動作するかどうかは別にして)動く筈だが、それではシステムレベルの省電力を考えた場合に不十分という事だそうだ。

Photo02:Odemを利用したBanias Processor Platform構成例。ディスクリートのAGP 4xグラフィックを利用する
Photo03:Montana-GMを利用した構成例。こちらはグラフィックが統合されている。「基本的には」Odemとの違いはグラフィックを搭載するか否かだけだそうだ。「基本的には」というのは、例えばIntel845Eと845Gの様に、内部構成が多少変わる可能性があるからだろう

○消費電力と性能の関係

ところで、性能と消費電力をどのあたりでバランスを取るか、というのはモバイル向けプロセッサにとっては常に問題となる課題である。ここで注意したいのは、「どうすれば最大の効率を発揮できるか」という事だ。例えば10%の性能向上のために10%消費電力が増えたとすれば、それは結局差し引き0になると言うことだ。10%の性能向上により10%処理時間が減れば、仮に10%消費電力が増えてもトータルの消費電力は変わらないから、結局バッテリーの寿命は変わらないことになる。

Baniasではここから一歩進み、消費電力の増分が性能の増分の3倍未満なら、それはモバイル向けには許容できるとした。(Photo04)逆にいえば、性能低下率の3倍以上の割合で消費電力が減るのであれば、それは有意義であると定義した訳だ。(Photo05)

Photo04:展開はちょっと面倒なのでここでは省略する。状況を考えると、多項式のうち結果に支配的なのは 3*εIPC のみで他は無視できる、というのが展開のヒントだ
Photo05:従来のデザインでは、性能の増分と消費電力の増分が1:1以下の領域に留まっていた
Photo06:当然ながら会場では、AMDのPowerNow!やTransmetaのLongRun、VIAのLongHaulと何が違うのだ?という突っ込みが入っていた

さて、この方針が決まった以上、それをどう利用するかである。これを実現するのが、Baniasで搭載されるEnhanced Intel SpeedStep Technologyである(Photo06)。従来のSpeedStepが、言って見ればHiとLoの2段しか切り替えできないギアだとすれば、今度は駆動速度にあわせてスムーズに電圧を切り替えてゆく、無段階変速のオートマになったわけだ。

○細かい消費電力の削減

Photo07:あくまでもこれは模式図である

Photo07はBaniasの搭載するL2キャッシュの模式図である。サイズ自体は依然として発表されない(これまでのどのモバイル向けチップよりも大きいとの事であり、1MBという案が有力である)が、8wayのセットアソシエイティブ構成になっていることは明らかにされた。さてその8wayのL2キャッシュだが、まず各セット別に分けると共に、1セットを更に4つに分けており、つまりL2キャッシュ全体を32ブロックに分割している。この32のブロックおのおのについて、アクセス時のみ十分な電圧を供給し、その他の時は記憶を保持できるぎりぎりに電圧を落とすことで、不必要に電力を消費させない工夫がされている。また、L2キャッシュアクセスの際には煩雑にアクセスされるTagエリア(管理領域)をキャッシュの中央に位置させることで、アクセス時間の短縮を図っている。

Photo08:後のラウンドテーブルで聞いたところ、Intelでは従来信頼性を重視するため6トランジスタ構成を取っていたとの事だ。Baniasに関しては、別の方法で信頼性を確保したため、4トランジスタ構成で行けたそうだ

またIntelは従来、L2キャッシュには6トランジスタ構成のSRAMセルを採用していたが、Baniasではついに4トランジスタ構成のSRAMを利用している(Photo08)これによりダイの占有面積、消費電力ともに3分の2に削減することが可能になった。こうした事の積み重ねにより、従来のモバイル向けプロセッサのL2キャッシュと比較して、トータルで1W以上の消費電力を削減する事が可能になったとしている。

○分岐予測

Photo09:この3種類の分岐予測メカニズムを組み合わせることで、分岐ミスを20%以上減らせるとしている

前回のIDFでも多少説明があった分岐予測の強化だが、今回はもう少し突っ込んだ話があった。Baniasの分岐予測メカニズムは、Bi-Modal、Local、Globalの3種類から構成される。このうちBi-Modalは通常インプリメントされる、簡単な分岐予測である。これに対しLocalとは局所ループをハンドリングするものであり、Globalは大域ジャンプの構造をハンドリングするものと説明されている。このうちLocalに関して、詳細な説明があった。Localは局所ループの分岐予測を行うわけだが、この前提として、どうやって局所ループを検出するのかという問題がある。これについてBaniasは、プログラムの流れを監視しているそうだ。つまりある分岐を一度通った後、その分岐自体は一旦Bi-Modalに入る。ところがその後内部でカウンターが動作しており、何命令か実行したあとで再び同じ分岐を通って元に戻ることがあれば、それはLocalループだと判断し、分岐をBi-ModalからLocalに移すのだそうだ。つまり単に分岐履歴だけを見ているのではなく、その後のプログラムの流れを判断するメカニズムを搭載しているという話である。

ちなみにGlobalに関しては今回詳細が公開されなかったが、JAVAなどのJIT(Just In Time)コンパイラの実行や、C++などのOOP(Object Oriented Program)の実行を考慮して、Bi-Modal, Local, Globalの制御構造を用意した(つまりこうしたプログラムの実行のためにGlobalが存在する)という話があった。検出方法はまだ公開されないが、たとえばオブジェクトのメソッドがすべてGlobalに入るといったインプリメントがなされているのではないかと想像される。

○公開されないこと

今回の発表で公開されたのはここまでで、例えばL2キャッシュのサイズとか動作クロック、性能などについては今回も未公開のままだった。ちなみにBaniasはIPCの向上を念頭においており、逆にいえば動作クロックが大幅に下がる(が、性能は落ちない)ことになる。問題はこれをどうやって売っていくか?つまりPentium 4対Athlon XPと同じ構図が、例えばMobile Pentium 4-MとBaniasの間でも発生しているわけで、これをどういう具合に判りやすく示すかが問題になるわけだが、これに関しては「製品の出荷時には明確にする」といった説明のみでそれ以上の説明はなかった。OEM筋からの情報では、当初のBaniasは1.3~1.6GHzほどの動作クロックになるようだが、当然これは既に2GHzに達したMobile Pentium 4-Mより低いわけであり、にもかかわらず価格は既存のMobile Pentium 4-Mよりやや高いあたりに落ち着きそうだ。もちろん性能とか消費電力を考えれば、これらはそれなりにリーズナブルな数字なのだが、このあたりをどうわかりやすく見せるか、が目下の焦点となっている。このあたりがどう落ち着くかは、来年に予定されているBaniasの製品発表を待つしかなさそうだ。

○余談

Photo10:おなじみBaniasの動作サンプル。現在のBaniasに問題があるとすれば、3チップ構成となるプロセッサ+チップセット(+Calexicoモジュール)がかなり大きな面積を占めることだろう。これがもう少し小さくなってくれれば、サブノートクラスへの搭載もありえるのだろうが

ラウンドテーブルではBaniasの動作サンプルが公開されたが、これは前回のIDFで公開されたものと同じである。ヒートシンクもつけない状態でBaniasが動作する様子が示された。(Photo10)

Photo11:Baniasの発表がおわってしばらくすると、いつのまにか姿を消していたDitzel氏。熱心にメモを取っている姿が印象的だった

ところでBaniasの対抗馬といえばTransmetaということになるが、今年はTransmetaの発表は一切ない。が、Baniasの発表の際にはそのTransmetaのFounder兼CTOであるDavid R. Ditzel氏の姿が会場に……(Photo11)

(大原雄介)

【レポート】Intel オッテリーニ氏来日、Banias/HTをデモ 積極的な全社姿勢を明確に
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/10/04/10.html

【NewsSpecial】IDFレポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2002/09/10/01.html

【NewsSpecial】MPF 2002 レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2002/10/16/02.html

Intel
http://www.intel.com



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