【レポート】地球シミュレータは人類のパラダイムを変えるか? - NEC・HPC研究会(1)

日本電気(NEC)のHPC研究会が3日、東京都港区のNEC本社ビルにて開催された。これは、同社が並列・分散処理やHPC(High Performance Computing)分野の研究者、技術者の技術交流の場として開催しているもので、95年1月に始まって以来、今回で15回目となる。今回のHPC研究会のテーマは、同社が開発し、既に運用を開始したスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」で、運用サイドである地球シミュレータセンター、開発サイドのNECの双方から、それぞれ数人が講演を行った。

「地球シミュレータ」
地球シミュレータは、宇宙開発事業団、日本原子力研究所、海洋科学技術センターが共同で開発を推進してきたスーパーコンピュータで、"仮想地球"を計算機上に実現し、気候変動、地殻変動などの全地球規模の現象の解明を目的としている。NECが製作を担当しており、同社のSXシリーズの流れを汲む専用プロセッサを5,120個使用、ピーク性能は40TFlopsに達するもので、今年の6月に発表された「19th TOP500 List」では、2位に約5倍もの大差をつけ、世界最高性能のスーパーコンピュータの称号を得た。

○基調講演

地球シミュレータセンター長 佐藤哲也氏
基調講演は、地球シミュレータセンター長の佐藤哲也氏による、「地球シミュレータが人類のパラダイムを変える」。氏は冒頭で、地球シミュレータがIBM製スーパーコンピュータ「ASCI White」の持つ世界記録を大幅に塗り替えたことが、米国では「Computenik」(人工衛星の開発競争で、旧ソビエト連邦のSputnikに先を越されたショックになぞらえた造語)と大きく報じられたことを紹介。それを素直に賞賛と受け止めるが、地球シミュレータの目的は前述のように、「気象」「地殻」といったものの解明にあり、速度競争に対しては冷静な姿勢を見せる。

また、従来のシミュレーションは、個別の現象に対する解析ツールであり、実験・観測の支援研究手段でしかなかったが、現在の向上した計算機環境においては、シミュレーション本来の、実験・観測と対等、あるいは先導しうる能力により、新しい科学を開拓する主体的研究方法となるとし、これからのシミュレーションがもたらす成果に期待すると述べる。そして、地球シミュレータのもたらす変革として、「産業」「人類」「環境」「学術」などのキーワードをあげ、地球環境の保護や自然災害からの人命保護への貢献、さらにグローバル志向、未来志向へのパラダイムシフトを引き起こす可能性についても言及し、講演を結んだ。

○事例紹介

続いて、地球シミュレータを用いた事例紹介として、地球シミュレータセンターの大淵済氏、高橋桂子氏より、それぞれ「地球シミュレータを使った大気大循環のモデリング」「地球シミュレータ上での気候変動予測にむけて」と題し、講演が行われた。

大淵氏は、高解像度モデルの必要性と、モデルの高速化に関して説明。地球シミュレータは、水平10kmメッシュという高解像度で全地球モデルを扱うことが可能だが、冬季の日本の降水量を例にとり、低解像度モデル(水平320kmメッシュ)から徐々に解像度を上げていき、80km、40kmメッシュのモデルのあたりでようやく日本海側での降水が現れる様子を紹介、現象の正確な解明のためには解像度の高さが重要なファクタであると述べた。

320kmメッシュでは、太平洋側に雨が降る
40kmメッシュになると、正しく日本海側で降水

今回使用された大気大循環モデル(AFES)について詳細は割愛するが、氏はまず、地球シミュレータで同モデルの解析を行い、26.6TFlopsを達成したことを紹介。こういった実際のアプリケーションにおいて、ピーク性能比が65%というのは極めて高い実行効率であるといえるが、これには並列化率を極限まで高めることが重要とし、そのために地球シミュレータ・アーキテクチャに特化した「3階層の並列化」を行ったという。それは、地球シミュレータのマクロからミクロへの3階層の並列構造、つまり(1)640台のノード、(2)各ノードに搭載される8つのプロセッサ、(3)各プロセッサ内のベクトルレジスタ--の並列性に対して、バランス良く最適化を行うことが必要とする。

それぞれの階層に対し、まずノード間レベルでは、MPIプロセスの並列化率を上げるため、逐次(並列性のない)処理をなるべく減らす、ローカルでないメモリアクセスを最小限にする、ノード間通信をまとめて効果的にIN(結合ネットワーク)を使うといった手法がとられた。ノード内のプロセッサレベルでは、各プロセッサのベクトル効率を落とさないよう注意する必要があるとのことで、ルジャンドル変換、FFTなどのループ処理で工夫しているとのことだ。最後に、各プロセッサレベルの処理では、ベクトル最適化のために、ベクトル化率とベクトル長をなるべく大きくする、メモリアクセス効率を上げる、演算密度を上げる、などの工夫がなされている。

ノード数の変化による、計算時間の割合の違い(1番上が通信処理時間)
ノード数の変化による、演算性能の向上(上の直線は理論ピーク性能)

(大塚実)

【レポート】地球シミュレータは人類のパラダイムを変えるか? - NEC・HPC研究会(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/07/04/08.html
へ続きます

スパコンランキングの「TOP500」が更新 - 地球シミュレータ堂々1位
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「地球シミュレータ」世界一の座を奪取 - 演算性能35テラフロップスを達成
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地球を丸ごとシミュレーション - 「地球シミュレータ」本日公開
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/03/15/08.html

NEC・HPC研究会
http://www.sw.nec.co.jp/hpc/info/

NEC
http://www.nec.co.jp/

地球シミュレータセンター
http://www.es.jamstec.go.jp/esc/jp/



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