【レポート】ロボット工学セミナー「ロボットの作り方 ハードウェア編」(3)

  [2002/06/13]
大阪大学基礎工学研究科システム人間系専攻 新井健生教授

2.「ロボットアームの機構」大阪大学 新井健生教授

大阪大学基礎工学研究科システム人間系専攻 システム科学分野の新井健生教授による「ロボットのアーム機構」では、ロボットの重要なコンポーネントであるアームに関する講演が行なわれた。

近年、ロボットはあらゆる分野で期待されており、求められる機能も多様化している。そんな中、物をハンドリングしたり、加工、組み立てを行なうなど、手作業の機能を実現化するアームに対しても、高速、高精度、高出力、高剛性、制御性、コンプライアンス、耐環境性など必要に応じた適切な設計が求められているという。

アームは、扱う対象物の寸法や作業内容に応じて、適切な機構形式や自由度の選択が必要となる。また、重量物や微小対象物を扱う場合には、従来の多関節アームとは異なる新たな機構が要求される。

そこで今回は、ロボットアームの設計に関する一般的な考え方、アームの設計パラメータ、作業と自由度、高速アームの製作方法、重量物の扱い方、ミクロな対象物の操作方法に関して、具体例を交えたレクチャーが行なわれた。

○アームの設計基準

ロボットを設計する場合、生物や人間の形態が規範になりうるため、人間が行なう手作業をロボットにさせるのであれば、人間の腕に似た関節構造を持ったマニピュレータを考えることで、ある程度最適な形態を製作することができる。

しかし、人間や生物の動きはあまりにも複雑過ぎるため、大きさや重量などの制限が厳しい機械で実現するのは困難な場合が多い。そのため、作業に必要な本質の運動のみを抽出して、アームの構造を単純化する必要があるという。

産業用ロボットなどに適用されている多関節アームの設計パラメータは、以下の2つに大別できる。
1.機構全体に関わるもの(基本機構)
2.構成要素に関わるもの(内部機構)
さらに、基本機構には、(1)自由度数、(2)関節種類、(3)アーム長、(4)オフセット、内部機構には、(5)モータ配置、(6)伝達機構、(7)減速機、(8)断面形状、(9)機械要素、がある。また、この中で、諸性能に関わる特に重要な設計パラメータは、自由度数、関節種類、アーム長、モータ配置、減速機等である。

○パラレルメカニズムの利用

人間など生物のアームは、複数の筋肉の拮抗作用によって、関節が自由に動く構造になっている。生物の駆動力は全て筋肉によって与えられるので、並列方式で得られることになる。この並列性に着目したのが、パラレルメカニズムと呼ばれるもので、新井教授が15年に渡って取り組んでいるテーマだ。近年、アームなどに応用され始めているという。

パラレルメカニズムとは、それぞれが複数の対偶を持つ複数のリンク系によって、ベース部とエンドエフェクタ部とが並列に結合された機構の総称だ。代表例は、6本の6対偶節リンク系により、並列的に結合された機構で、「スチュワートプラットフォーム」と呼ばれている。スチュワートプラットフォームは大出力を発生しやすいため、建築土木作業の掘削やシールドに適用されている。

その他、講演では、組立作業用高速高精度アームとして、産官学の共同研究により開発された回転型パラレルメカニズムを適用したアームなどが紹介された。回転型アームは、モータがベースに固定され、可動部が極めて軽量であるため、高速性があるが、剛性が低いという特徴を持っている。

○マイクロハンド

数マイクロメートルの微細な対象物を扱うアプリケーションの例として、マイクロマニピュレーション用ハンドも紹介された。これは、新井教授が取り組んできた大型プロジェクト「マイクロマシン技術」の研究・開発のテーマの1つとして開発されたもので、2本指の片指に相当するモジュールは、スチュワートプラットフォームをベースとすることで、小型化を図っている。アクチュエータには、応答が早く出力が大きいピエゾ圧電素子を用いているため、指先での動作は極めて微小。実際に、人の白血球をハンドリングしている映像などが紹介された。

○ハイブリッドアーム

現在、ビル建設の中心となっているのはクレーンであるが、クレーンには、位置決め制御や精度、操作性、作業者への安全性などの面で多くの問題がある。そこで、新井教授の研究室では、大型重量物を目的の場所に正確に位置決めし、精度良く組みつけられるアームの開発を行なった。軽量でコンパクトなアームにするため、シリンダとワイヤを併用して駆動するハイブリッド駆動のパラレルアームを提案している。

○まとめ

多関節アームはすでに産業用ロボット技術として定着しているが、移動ロボットやヒューマノイド用の小型・軽量なアームを考えた場合、新たなデザインが必要となってくる。また、様々な機能が要求されるアームを実現する一つの解決策として、パラレルメカニズムの特徴を生かした使い方も今後求められていくという。

地雷撤去ロボット1脚モデル
(写真は、東京工業大学 広瀬・米田研究室で開発されているロボットです)


【レポート】ロボット工学セミナー「ロボットの作り方 ハードウェア編」(4)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/06/13/23.html
へ続きます

(山田久美)

【レポート】ロボット工学セミナー「ロボットの作り方 ハードウェア編」(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/06/13/20.html

【レポート】ロボット学会「ウェアラブル・ロボティクスの現状と未来」(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/17/15.html

日本ロボット学会
http://www.rsj.or.jp/

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