【インタビュー】CD-ROMドライブサイズのPC「SUMICOM」開発者に聞く(1)

      [2002/05/31]

    冒頭から私事を書くのは恐縮だが、台北在住の私が、台湾発のコンピュータ関連レポートを発表するようになってから、早いものですでに4年近くがたった。その間、様々なメーカーを取材し、そのメーカーならではの発想や製品に対する考え方を担当者に聞き、記事としてまとめてきた。そうした流れの中で、まだ公開前の新製品の情報や実際の製品にふれる機会、あるいは知己を得る機会も多く、その度ごとに興奮と感動を覚える場面も数々あった。

    このレポートも、そういった知己のひとりからもたらされた情報がきっかけだ。実は、今週はじめに書いた署名記事を、MYCOM PC WEB上で読んだ知己が、直接私の自宅に電話をかけてきてくれ、「自分たちが立ち上げた新会社が開発したCD-ROMドライブサイズのPCが、ようやく完成したので、ぜひ一度見に来てほしい。開発者の人も紹介するので…」と連絡してくれたのだ。そしてその日のうちにE-mailで送ってきてくれた製品写真を見て驚いた、まさに外付けのCD-ROMドライブサイズなのだ。何度か私の書いた記事をご覧になった方はご存じかもしれないが、私は新しもの好きのうえに、身体が大きいにもかかわらず、小さく精密な製品が大好きだ。これは実際に行って見せてもらうしかないと好奇心がもくもくとわきあがった私は、彼らのオフィスがあるという台北市の内湖區へ向かった。

    彼らの会社は慶揚通訊(King Young Technology Co., Ltd.)。台北の内湖區には、多くのPC関連メーカーが、本社や工場をかまえているのだが、そういった一画から少し離れたところにある静かな住宅地の中に、まだ看板も何もないガラス張りの彼らのオフィスはあった。

     製品を持って微笑む、SUMICOMの開発者、鄭萬成(Robert Chang)氏

    まず電話をかけてきてくれた徐凱文(Kevin Hsu)が出てきてくれて、すでに応接用のテーブルの上に彼らの新製品は置かれていた。そして、すぐに紹介されたのは鄭萬成(Robert Chang)氏。彼こそ、このCD-ROMドライブサイズのPCを開発したその人だと知った私は、挨拶もそこそこにいつもの質問攻撃を開始した。

    --まず、このCD-ROMドライブサイズのPCの名前を教えてください。

    色々な名前を考えたのですが、超ミニサイズコンピュータ(Super Mini Computer)の英語名の頭文字を取ってSUMICOMと命名しました。何しろ名前がないと、みんなが困りますから…(笑)。

    --なぜこのような超ミニサイズのコンピュータを開発しようと思ったのですか。

    実は私は以前、おそらくあなたもご存じの、ミニサイズ・マザーボードで有名な会社の設計担当者だったのです。ただ、やはり企業内でマザーボードの設計をしていると、色々な制約もあって、なかなか思うように自分が理想とする製品を作ることができず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)の専門家の友人や、その他の分野の専門家たちと話しあって、思い切って独立し、King Youngの初めてのコンピュータとして製品化したのが、このSUMICOMです。

    --そうですか、あなたがあのミニサイズ・マザーボードの設計者だったのですね。普通、PCメーカーに取材に行っても、開発の担当者に会えるのはまれですが、こうした形でお目にかかれるとは思いませんでした。失礼ですが、マザーボードの設計に携わられて何年でしょうか。

    もう、20年くらいになります。実は、先ほどお話ししたASICの専門家をはじめ、テスティングの担当者といった我が社のメンバーは、すべてそれぞれの分野の専門家として、少なくとも10年以上のキャリアを誇っています。

    --ここの様子を見ても、会社を設立して間もないことがわかりますが、どのくらいの開発期間で製品化できたのでしょうか。

    私が担当するマザーボードのデザインは、約1ヶ月弱です。今年の3月に会社設立の準備を始め、4月に会社の設立許可証がおりたので、製品化までは2ヶ月くらいでしょうか。

    --まさに、あっという間に製品化したという感じですが…。

    そうですか? 以前の会社でも、私ひとりで3週間もあればデザインできましたし、それから2回ほどテスト用のボードを作って、すぐ製品化していましたから…。

    --なるほど、20年の経験が生きているわけですね。ところで、目の前にあるマザーボードを見るとソケット370で、チップセットに815Eを使われているようですが、これだけのミニサイズとなると6層板ぐらいで作られているのですか。

    チップセットは815EとICH2を使っています。ただ、マザーボードは単面の4層板です。私は、色々なミニサイズ・マザーボードを開発してきましたが、レイアウトに困ったときは、レイヤーを増やす方向ではなく、ASICの専門家とも相談して、信号の処理の仕方を変える方法で解決する方法を採ってきました。その方が製造コストを抑えることができ、複雑化による弊害も少なく、信頼性の向上につながるわけですから…。実はもっと小さくもできるのですが、今回は外付けのCD-ROMドライブサイズということに決めていたので、I/Oポートの配線部はわざと延長しているのが、この配線を見ればおわかりになるでしょう。

    --確かにそうですね。でも、なぜ外付けCD-ROMドライブサイズにこだわったのですか。

    それにはわけがあります。いま世の中のCPUは、スピード競争で、クロックがどんどん上がっています。ただそれと同時に、電気を食うだけでなく、発熱量も上昇し続けているわけです。そういった電気食いの製品が、世の中に溢れたらどうなると思いますか。ただでさえ、地球資源の保護がいわれているのに、コンピュータの処理スピードが上がれば上がるほど、排熱量も増え、それを冷やすために室内のエアコンが稼働し続け、電力使用量もアップし、より多くの発電所が必要になる、といった悪循環が続くことになりませんか? 確かにコンピュータは、現代生活に欠かせないものですが、一般の方が使うのには、1GHz前後のCPUが搭載されていれば、充分ではないでしょうか。もう少しこの製品に密着した話しをしましょう。普通のPCでは、パワーサプライから供給される電力の70%は使われますが、残りの30%は使われずに熱に変わるだけです。SUMICOMでは、パワーサプライから供給される電力の95%を使用するように設計しました。わたしは、地球環境にもやさしい、グリーンコンピュータを作りたかったのです。見てください。ですから、うちのロゴの色もグリーンでしょう。

    (吉井孝史)

    CD-ROMドライブサイズのPC「SUMICOM」開発者に聞く(2) に続きます。
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/31/26.html

    台湾発CD-ROMドライブサイズの超小型PC「SUMICOM」
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/31/27.html

     外付けCD-ROMドライブサイズのPC、SUMICOM。中央のCD-ROMドライブをはさみ、右が一般用、左がサーバー用。尚、ケースの色についてはまだ最終的には決定してはいない。
     鄭氏がデザインした、SUMICOMのマザーボード。チップセットにはIntelの815EとICH2が使われており、I/Oポートは、IEEE1394×1、LAN(10/100)×1、VGA×1、COM & Parallel×1、USB×3、マイク×1、イヤホン×1、ラインアウト×1と、現段階では必要にして充分なポートを備えている。
     右がSUMICOMのマザーボード、中央がサーバー機、左はそれと同じサイズのUPS。
     SUMICOMをフロント側から見たところ、外付けCD-ROMドライブサイズに、左のパーツがすべて収まる。
     SUMICOMのメモリは、サイズの関係上ロープロフィールだが、今では手に入りやすくなっている。後ろのCD-ROMドライブを見れば、その薄さがわかるだろう。

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