【インタビュー】コンピュータ将棋世界一、「激指」開発者インタビュー(1)

 

5月3~5日にかけて行われた第12回コンピュータ将棋世界選手権にて、並み居る強豪を打ち破り見事初優勝を飾ったのが、東京大学近山研究室の有志によって開発された「激指」。今回その開発者チームの一人である鶴岡氏にお話をうかがうことができたので、その模様をお伝えしたい。

○優勝は狙っていたが本当に優勝できるとは…

--優勝おめでとうございます。まずは優勝の感想からお伺いしたいと思いますが、実際のところ大会前は優勝を意識されていたんでしょうか?

昨年が4位だったんですが、それ(昨年のプログラム)と比べて将棋の段位で1段ぐらいは強くなっていた手ごたえがあったので、狙っていなかったといったら嘘になりますね。

--今年は特に決勝進出したソフトは非常に実力が接近していたという前評判があったかと思うんですが。

確かにIS将棋(東大将棋)やKCC将棋あたりには注意してました。当日KCC将棋の開発チームの方とお話しする機会があったんですが、非常に自信をもたれていましたし…。

--同じ東大の研究室出身のソフトということでIS将棋は特に意識したりということはありますか?

特に意識したりはしてませんが、何しろ一昨年・昨年と2連覇されてましたから、「あそこに勝てば優勝できる」という感じで目標にしていたとは言えるかもしれません。

--激指は2次予選で柿木将棋に負けてますが、決勝でもやられる心配はありませんでしたか?

今年の柿木将棋は振り飛車穴熊をメインの戦法としてたようですが、穴熊は結構勝つのが難しい戦法なので、それほど心配はしてませんでした。柿木将棋は穴熊独特の指し回しなどもしっかりしてましたので強いソフトであることは間違いないと思いますが。

○マシンはAthlon MP搭載マシンを使用

--今回決勝進出されたソフトの中ではKCC将棋だけがマルチプロセッサ対応のプログラムになっていたということですが。

そのようですね。うち(激指)も去年はマルチプロセッサ対応だったので今年もその予定だったんですが、結局バグが取りきれず本番には間に合いませんでした。マルチプロセッサ対応にすると、昨年のプログラムの場合、シングルプロセッサ版に比べて、だいたい40%ぐらい思考速度が速くなります。

--マルチプロセッサの話が出たところで、今年の大会で使用されたマシンのスペックを教えてください。

CPUはAthlon MP 2000+×2、メモリは512MB搭載してました。

--メモリをさらに増やせば強くなるという可能性はありますか?

メモリが多いと思考に使うハッシュテーブルの容量が増えるので、詰め将棋の場合にはメモリを増やせば増やすほど有利という部分があるかもしれませんが、一般の対局の場合は今のところ512MB程度あれば十分ではないでしょうか。

--今年のプログラムの開発について、開発期間などを教えてください。

基本的には昨年の大会で4位に入ったプログラムを改良したという形ですが、それから1年中ずっと開発をしていたというわけではありません。まず昨年の12月に「激指」の製品版が発売されるのに伴い、その1~2カ月前ぐらいから大きな改良を行いました。その後自分の博士論文が終わった今年の3月ぐらいから大会直前にかけて、再度本格的な開発作業を行ったという感じですね。ただ本当に開発を始めた頃に比べれば今年の開発はかなり楽になりましたが。

--今年のプログラムはほぼ完成形と考えていいのでしょうか、それともまだ改良できる余地があるとお考えですか?

まだ序盤・中盤の差し回しが甘い感じがするので、その点はまだ改良できる部分が多く残っていると思います。あとスピードアップによって強くできる部分もまだまだありますし。

○将棋ソフトの思考ロジックとは?

--ところで今回この記事の読者の方の中には、将棋ソフトについてあまり詳しくない方も多いと思いますので、「激指」がどのような思考ロジックで動いているかについて簡単に教えてください。

普通の将棋ソフトはあらかじめ「何手先まで読む」という手数を決め打ちしておいて、その中で指すことが可能な手を探索した上でその手の有利・不利をポイント化し、そのポイントの一番高いものを実際に指すというのが一般的だと思います。しかし本来人間は「何手先まで読む」という風に、手数を決めて読むということはあまりしませんよね。そこで「激指」では、羽生善治氏(現プロ四冠王)が実戦で指された棋譜を元に「この局面ではこういう手がよく指される」という可能性を数値化した上で、よく指されるタイプの手については手数を多く、あまり指されない手については確認程度に読む、という形で思考の効率化を図ってます。

--「激指」といえば製品版では「100万手の定跡がインプットされている」というのが売り文句になっていますが、定跡はどのような形で利用されているんでしょうか。

定跡は序盤の駒組みをパターン化するのに利用しています。例えば相手が矢倉囲いできた場合にはこう指す、というような部分を定跡で補うという感じですね。

--定跡は数が多くインプットされている方が強いんでしょうか?

定跡の数は強さにはあまり関係ないですね。むしろ強さを求めるのであれば定跡の数を絞った上で、とにかく自分の得意なパターンに持ち込むような戦略をとった方が良いと思います。今回の柿木将棋の戦い方なんかはまさにその典型だと思いますし、金沢将棋が角交換を好む傾向があるのもそういった考え方が元にあると思います。

--よくコンピュータ将棋ソフトでは「特定のソフト対策のプログラムが入っている」などといった話をよく聞きますが、「激指」はそこのところはどうなんでしょうか? コンピュータ将棋選手権のルールでは対局前の再コンパイルやパラメータ調整が認められてますが…。

「激指」ではそういったことは一切やってません。他のソフトも話を伺う限りは特にそういったことはやっていないと聞いてますし、むしろ自分の得意な戦法に持ち込めるかどうか、といった部分の方が勝敗に与える影響は大きいと思います。

(佐藤晃洋)

【インタビュー】コンピュータ将棋世界一、「激指」開発者インタビュー(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/17/27.html
に続きます。



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