【レポート】ロボット学会「ウェアラブル・ロボティクスの現状と未来」(2)

○3.「ウェアラブル・ロボットのアクチュエータと機構に関する考察」立命館大学 川村貞夫教授

立命館大学の川村貞夫教授による「ウェアラブル・ロボットのアクチュエータと機構に関する考察」では、アクチュエータと機構の観点から、ウェアラブル・ロボット実現のための問題の整理と実現方法、さらにいくつかの実現例が紹介された。

川村教授は、「人間の運動の補助および拡大を目的として、従来よりも軽量、小型、柔軟な特徴を有し、常に身体に装着して利用する機械システム」を「ソフト・メカニカル・スーツ」と呼び、関連する研究・開発をおこなっている。ただし、これは、センサー、コンピュータ、アクチュエータのすべてを装着すると定義していないので、完全にウェアラブル・ロボットとは同義ではないという。

また、川村教授は、ウェアラブル・ロボットの実現化に向けて、1.エネルギーの供給源、2.能動要素と受動要素、3.機構の3つに関する問題点を挙げている。

1.エネルギーの供給源とは、ロボットが駆動するためのエネルギー源をどうやって確保するかという問題。現在、エネルギー源を別置きとするものと、完全にウェアラブルにするものとの両面から研究がおこなわれている。さらに、完全にウェアラブルにする方法としては、人間によって作られる運動エネルギーをロボットに取り込み貯蓄する方法と、電池や圧縮空気タンク、ガソリンタンクなどをロボットに装着する方法の2通りが考えられている。
2.能動要素と受動要素についてだが、まず、能動要素とは、各種のアクチュエータなど、エネルギーを機械に与える要素をいう。一方、受動要素とは、それ自身はエネルギーを発生しないもので、バネやダンパー、ブレーキなどがこれに該当する。人間の運動の支援や補助を行う場合、能動要素を利用することが多く想定されるが、例えば、姿勢の保持、負荷トレーニングなど目的によっては、受動要素を巧みに利用することも有効性が高いという。
3.機構とは、機械システムと人間との装着方法の問題をいう。ウェアラブルという外骨格構造は、一般に重量が重くなる傾向にあるため、装着者にさまざまな違和感を与えてしまう。そのため、外骨格構造以外の機構も検討する必要があるという。

また、実現例として、実際に開発されたさまざまなウェアラブル・ロボットがビデオやスライドで紹介された。軽量な発砲スチロールなどの粒子を袋の中に内蔵させ、袋の中の空気を吸気・排気することによって、腕に装着したウェアラブル・ロボットの長さや曲げ、ねじりをコントロールするものや、短冊状のシートを複数重ね合わせた積層型の構造のものなどが紹介された。そのほか、空気圧ゴムのアクチュエータを利用した立ち上がり補助装具や、同じく空気圧ゴムアクチュエータを利用したジャンプ補助装具なども紹介された。

○4.「マッスルスーツ 10年後のファッションを目指して」東京理科大学 小林宏助教授

マッスルスーツを着た人形

今回のセミナーでオーガナイザを務めた小林宏助教授による「マッスルスーツ 10年後のファッションを目指して」と題された講義では、着用するだけで体を動かすことができるという「マッスルスーツ」が紹介された。会場の外にも2種類のマッスルスーツが展示され、研究室の学生が説明をおこなっていた。3月末にパシフィコ横浜で開催された「ROBODEX2002」などにも出展されていたので、実際にご観になられた方も多いことだろう。

マッスルスーツとは、人間の動作支援をおこなうための服で、動けない人を動けるようにすることができるため、高齢者や身体障害者のリハビリや姿勢保持、筋力強化への利用が期待されている。実は、物理的に人間を支援する介護福祉機器は、すでに介護者用に開発されているものの、コスト、安全性、総重量、人間との親和性などの面から、実用的な利用には限界があるという。

これに対し、マッスルスーツは、アクチュエータとして安価なMcKibben型人工筋という材料を使い、それを服に編み込んだ構造になっている。そして、そのアクチュエータに空気で加圧することで、アクチュエータが収縮し、それを着ている人の対応部位が動くというしくみになっている。そのため、既存の機器に比べ、安価、軽量で、装着時の親和性を高めることに成功している。また、着用により、要介護者自らが動けるようになるため、要介護者の精神的なサポートにもつながり、介護者の肉体的な負担も軽減されると考えられる。

1年後の事業化を計画しており、リハビリセンターなどに導入していきたいという。
また、10年後には、すべての要素を小型・軽量化することにより、誰もが動作補助、行動補助のために日常的に着用でき、ファッションとなるようなシステムの構築を目指しているそうだ。

マッスルスーツのシステム構成は、マッスルスーツ、アクチュエータへの空気圧を調整する電空レギュレータ、コンプレッサ、制御装置、センサーから成る。具体的には、PC750g、レギュレータ770g、ボンベ800g、バッテリ660g、圧力スイッチ280g、コンプレッサ1200g、ドライバ150gが、リュックサックの中に収められており、これらの総重量は4620gになる。十分持ち運びが可能な重さだ。PCとレギュレータはさらなる小型・軽量化が可能だという。

腕周りに人工筋を縫い付けたマッスルスーツを着せた人形は、肩に3自由度、上腕ねじりに1自由度、ひじ曲げに1自由度、手首の横振りに1自由度の合計6自由度を持っている。

人形が背負っているリュックサックの中には、PC、レギュレータ、ボンベ、バッテリ、圧力スイッチ、コンプレッサ、ドライバが収められており、総重量は4620g
空気圧で腕を曲げる

パソコンで制御

○まとめ

このように、ウェアラブル・ロボットの実現化に向けて、さまざまな研究・開発がおこなわれているが、現在の最も大きな課題はやはり、エネルギー蓄積器やアクチュエータの小型・軽量化であるという。それが解消されれば、ウェアラブル・ロボットは、社会福祉、生活支援、生産活動をはじめ、極限環境下での作業支援などあらゆる分野で、人間にとって必要不可欠なものとなっていくだろう。

(山田久美)

【レポート】ロボット学会「ウェアラブル・ロボティクスの現状と未来」(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/17/15.html

【ROBODEXレポート】 今年もロボットの祭典が始まった
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/03/28/09.html

産総研と東京大学、人間型ロボットのソフトウェアプラットフォー ムを発表
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/03/20/08.html

【レポート】史上初の2足歩行ロボット大会 第1回ROBO-ONEがお台場で開催!
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/02/04/26.html

日本ロボット学会
http://www.rsj.or.jp/



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