【レポート】ロボット学会「ウェアラブル・ロボティクスの現状と未来」(1)

セミナー風景
 
セミナーの最後に行われたパネルディスカッション

4月26日、新宿区神楽坂にある東京理科大学の記念講堂で、ロボット工学セミナーが開催された。今回で13回目となるこのセミナーは、社団法人日本ロボット学会が、ロボットに関するさまざまな技術を広く一般に公開するために開催しているもので、受講料を払えば、誰でも参加することができる。ロボットに関する技術を自分の仕事や研究・開発に生かしたいといった目的を持つ会社員や大学関係者の参加が多いようだ。

今回は、「ウェアラブル・ロボティクスの現状と将来」をテーマに、以下の4つの講義とパネルディスカッションが行なわれた。

1.「様々なTube Actuatorによる装着感指数を高める身体駆動」東京工業大学 塚越秀行氏
2.「オーギュメンテーションVS.リハビリテーション」豊田工業大学 山田陽滋助教授
3.「ウェアラブル・ロボットのアクチュエータと機構に関する考察」立命館大学 川村貞夫教授
4.「マッスルスーツ 10年後のファッションを目指して」東京理科大学 小林宏助教授

ウェアラブル・ロボティクスとは、その名の通り、センサーからの信号をコンピュータで計算し、アクチュエータに出力するというロボットの機械システムを、身体に装着可能にしたもののことを言う。その主な目的は、人間の動作支援である。現在、1.高齢者や身体障害者の生活動作を支えるパワーアシスト、2.宇宙飛行士の船外活動におけるバルーニング現象の補償、3.健常者のスポーツスキル向上装具の3つの用途へのニーズが高まっており、研究・開発がおこなわれている。特に、今後、社会の高齢化が進めば、身体障害者に限らず、健常でありながら筋力の衰えた人が増加する。また、介助者にとっても、介助作業はかなりの重労働であるため、被介助者と介助者の両方をサポートできるようなパワーアシストとしてのウェアラブル・ロボティクスへの期待は大きい。

○1.「様々なTube Actuatorによる装着感指数を高める身体駆動」東京工業大学 塚越秀行氏

まず、東京工業大学大学院北川研究室の塚越秀行氏による「様々なTube Actuatorによる装着感指数を高める身体駆動」の講義では、衣服のような流体制御システム「ウェアラブル・フルイドパワー」と、さらにそれをウェアラブル・コンピュータと融合させ、アクチュエータが装着者の筋肉特性に適応して、運動機能の回復や向上を促進させる「フルイド・サイボーグ」に関する研究内容が紹介された。

チューブアクチュエータを使った装着型流体制御システム「ウェアラブル・フルイドパワー」とは、脳卒中患者などの自立的な歩行を促進するため、患者個々の能力に適応しながら、歩行支援を行なえるというウェアラブル・ロボティクスで、螺旋偏平型空圧アクチュエータWTA(=Wound Tube Actuator)を、身体周部に巻きつけるように装着して、ひじやひざなどの単関節の動作支援をおこなうというもの。あらかじめつぶれた螺旋状のチューブの中に、空気を入れて膨らますことで、関節の曲げ伸ばしを助けるというわけだ。片方だけを膨らますなど、チューブの膨らまし方をコントロールすることで、指などの複関節による湾曲動作などにも対応できる。

さらに、螺旋状のWTAを半円ごとに折り曲げ弓形状にしたATA(=Arch Tube Actuator)なども開発。WTAに比べて、身体に通す必要がないため、装着が容易になるというメリットを持っているという。

しかし、アクチュエータを人間の身体に装着し、ひざの曲げ伸ばしなどの動作を支援しようという場合、当然、考慮しなければならないのが"安全性"と"装着感"だ。
そのため、北川研究室では、安全性の確保については、アクチュエータの動作領域を身体可動範囲以内に制限すること、装着が圧迫感を与えないことを前提としているという。

また、装着感については、着心地を数値化する「装着感指数」を導入。装着感指数Iw(0<Iw<1)のエレメントは、「可動範囲」、「突出度」、「重量」の3項目で、その比率の総和を取り、平均値が1に近づくほど自然体に近い装着感が実現できるとし、その指数を高めるアクチュエータの開発に取り組んでいる。
Iwの計算式は次の通りだ。

装着感指数

Iw=(φ1/φ0+d0/d1+m0/m1)/3
φ0:装着前の身体の可動範囲
φ1:装着後の身体の可動範囲
d0:身体部を包括できる円筒内部の直径
d1:装着したアクチュエータを包括できる円筒内部の直径
m0:装着前の身体可動部の重量
m1:装着後の身体可動部の重量

もちろん装着感を左右するエレメントはほかにも存在するが、中でも極めて影響力の高い3項目を選んだとのこと。

また、ウェアラブル・ロボティクスが歩行支援をするためには、省エネルギーでの駆動が不可欠であるため、アクチュエータの足裏に油圧マットを装備。足裏で油圧マットを踏んだり、油圧マットから足を離したりすることで、油圧マット内部の圧力を増減。それが歩行支援のON/OFFスイッチとして働き、チューブ・アクチュエータの空圧が増減することで、ひざの関節が曲げ伸ばしできるようなしくみになっているという。

○2.「オーギュメンテーションVS.リハビリテーション」豊田工業大学 山田陽滋助教授

豊田工業大学知能システム研究室の山田陽滋助教授による「オーギュメンテーションVS.リハビリテーション」では、ウェアラブル・ロボット分野への発展の経緯にはじまり、オーギュメンテーションとリハビリテーションの2つの観点から見たウェアラブル・ロボットの将来像についての講義がおこなわれた。

山田助教授によれば、ウェアラブル・ロボットは、装着者のパワーを増強させたりスキルを向上させたりする「オーギュメンテーション(augmentation)」と、人並み程度あるいは日常的な自分のスキルを発揮できるレベルまでパワーを復元する「リハビリテーション(rehabilitation)」の2つに大別することができるという。
中でも、リハビリテーション分野では、ウェアラブル・ロボットは必要不可欠なものとなってきている。実際、医療福祉分野では、健全な筋肉の代わりに種々のアクチュエータを応用して、運動能力の低下を補おうという試みが、さまざまな機関によっておこなわれてきている。

しかしながら、広義リハビリテーションのフレームワークで考えると、身体障害者だけでなく、健常者にとっても、ウェアラブル・ロボットが必要とされる分野がある。その典型となるのが、極限環境の中でさまざまな仕事をおこなっているエキスパートたちの技能発揮を支援するというリハビリテーションの分野だ。その具体例として、今回の講義では、宇宙飛行士のケースが紹介された。

宇宙飛行士の場合、宇宙服は、生命維持のための保護被服としては優れているが、EVA(船外)作業などの効率を低下させ、疲労を加速させるいくつかの要因を抱えているという。そのため、山田助教授の所属する知能システム研究室では、宇宙服に着目し、宇宙服の抱える問題を調査。その結果、「風船効果などによる動きづらさの増幅」と「手でものをつかんでいる感覚の遮断」の2つが、宇宙服について解決すべき問題であることを究明。「宇宙服用SkilMates」の開発に着手したという。ちなみに、SkilMatesとは、同研究室による人間の技能の発揮を支援するためのウェアラブル・ロボットのこと。

今回の講義では、EVAグローブ内の指関節の動きづらさを補償するために、アクチュエータに超音波モータを適用した宇宙服用SkilMatesなどが紹介された。今後、宇宙飛行士によるEVA作業支援だけでなく、陸軍兵隊や原子炉検査官など、地上の極限環境下で仕事をおこなっている人々の作業効率の改善や生産性の維持・向上に役立つようなSkilMatesの研究・開発もおこなっていくという。

(山田久美)

【レポート】ロボット学会「ウェアラブル・ロボティクスの現状と未来」(2)
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へ続きます

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日本ロボット学会
http://www.rsj.or.jp/



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