【レポート】未来の万能駆動デバイスを目指して 第1回人工筋肉コンファレンス開催

 
人工筋肉を使うに当たって顔の表情や筋肉の動き方などを調べた研究成果も発表された

12月13~14日、大阪池田市の産業技術総合研究所(以下産総研)関西センターにおいて「第1回人工筋肉コンファレンス」が開催された。人工筋肉とはその名称のとおり、工学的生化学的に造られた、生物の筋肉と同じ働きをする材料のこと。現在ロボットや工業製品で使われる駆動デバイスは電磁石を使ったモータが主流だが、電力を大量に消費すること(パワーに比例)、小型化の限界、一定方向への運動に制限されること(複数方向への動きを実現するには複数個のモータが必要)などのデメリットがある。ロボットの場合なら重量増加は避けられないし、バッテリの問題や全体の制御の問題など課題は多い。義手や義足などでは小型化も必要だ。そこで、モータに代わるアクチュエータとして期待されているのが人工筋肉なのだ。モータを介することなく、電気によってダイレクトにアクチュエータをコントロールできれば、というわけだ。これまでもモータに代わるものとして形状記憶合金や空気圧アクチュエータなどさまざまな素材が研究されているが、やはり究極的には人工筋肉に行き着くのだという。

今回の人工筋肉コンファレンスは、この分野の先端を行く研究者を内外から集めて招待講演を行ったもの。人工筋肉をテーマにこうした集まりが開催されたのは世界的にも珍しく、国内では初めてのこと。国内からは多くの聴講者が詰めかけ、この技術に対する関心の高さを示していた。産総研関西センターは、もともと以前の大阪工業技術研究所時代に人工筋肉に応用できる技術が開発されたため、今回会場となったという経緯がある。また新しい分野でもあり、現時点では正式な学会は存在しないため、高分子や生物やバイオマテリアルなど複数の学会が協賛していた。

○実用化目前の高分子系

人工筋肉にはその手法によっていくつかの種類に分類できる。まずは高分子系。ゼリー状のゲルや膜に電圧をかけると、それに応じて体積を変えたり、曲げ運動を行う現象を応用したものだ。特に膜を使った研究は燃料電池の研究から派生しており、燃料電池で使われるセパレータ(イオン交換膜)を金属電極でサンドイッチしたもの(ICPF:Ionic Conducting Polymer gel Film)に電圧をかけたところ、グニャグニャと自らを曲げたことから研究が始まった。電圧をかけることによって高分子中のイオンが膜の中を移動するが、その移動によって水分子の位置に偏りができて突っ張ったりして変位するためだ。

数ボルト程度の低電圧で駆動し、小型化が容易、100Hzという低周波での制御が可能で、水を含むウェットな環境に強いなどの特徴がある。またゼリー状のゲルの場合、通常は圧力に弱かったり復元力がなかったりするが、特殊な組成によって開発されたゲルの中には強力な復元力を実現しているものもあるという。これも電圧をかけることで体積が変化する性質をアクチュエータとして応用しようとしている。

↑→産総研が設立したベンチャー企業・イーメックスが実用化を目指している能動カテーテル。直径0.7mm。周囲を4分割しており、それぞれに電圧を加えることでさまざまな方向へ曲げることができる
 

産総研ではこの高分子系人工筋肉の基本技術を確立させており、ベンチャー企業として高分子系人工筋肉技術でビジネスを行う会社「イーメックス」をたちあげている。すでに体内や血管内に入れて治療を行う「能動カテーテル」を開発しており、実用化に向けて準備をしているところだ。また省電力や小型化といった特徴をホビー方面に応用するアイディアもあるという。

ビーカーの中のクラゲ状のヤツがイーメックスが開発した高分子系の人工筋肉。ゆらゆらと脚(?)を拡げたり閉じたりするアクションを見せた
手で触れられるディスプレイのひとつひとつの素子を人工筋肉が動かしている。ここに指で触れて表示状態を検出する仕組みだ

今回のコンファレンスでは、高分子系の発表がもっとも多く、さまざまな物質や電極を組み合わせた研究例が紹介されたほか、ICPFを使ったアクチュエータを目が不自由な人のタッチディスプレイ(点字キーボードのようなもの)として応用する研究成果も発表された(神戸大学 高森・田所研究室、 http://robomec.cs.kobe-u.ac.jp/ )。またゲルや高分子の詳細な動きをシミュレーションした研究なども発表された。

ICPFを使ったアクチュエータのひとつ。上下に運動することで節関節を実現できるかもしれない
高分子系の人工筋肉が機能する仕組み。膜内のイオンと水分子の位置関係によってかたちが変わる

ちなみに米国のNASAでも人工筋肉の研究が進んでおり、人工衛星や惑星探査機など低消費電力で軽いアクチュエータが必要な有力なアプリケーションとして注目されている( http://ndeaa.jpl.nasa.gov/nasa-nde/lommas/eap/EAP-web.htm )。

○筋肉の分子1個1個を制御する研究も

分子レベルでの筋肉の動きを解明した阪大・柳田教授の講演から。アクチオンと呼ばれるベースにマイオシンという分子が反応、マイオシンのレバーの先に花火があったという

人工筋肉の研究においてはこうした高分子系を第1世代と呼び、広く研究が行われているが、今後第2世代として生態系のバイオ・生物技術を使った人工筋肉、さらに第3世代としては人工筋肉自体にCPU=処理能力を持たせたインテリジェンスなアクチュエータの実現を目指すという。さすがに第3世代の研究はまだ手つかずだが、第2世代ではカーボンナノチューブを応用し、性能をアップさせた報告(テキサス大学)や、筋肉を構成する分子を1個単位で観察、その動きの仕組みを担うミオシンやアクチオンなどの物質を研究・解明することで将来的に制御する大阪大学 柳田教授の展望などが紹介された( http://www.phys1.med.osaka-u.ac.jp/ )。

現時点の技術では、ロボットの関節に使えるような人工筋肉はまだない。1mmのアームで10μm移動させたとか、どちらかというとナノマシンの方向へ向かっており(現在のマイクロマシンよりも2ケタ以上違うサイズ)、トルクや応答速度、サイズなど課題は多い。とはいえ今回紹介されたようにさまざまな研究が進められている中で「強く速くするだけでなく、いろいろなアクチュエータを適材適所で使っていくことが大切」とコンファレンスの準備委員会代表の田口隆久氏(産総研人間系特別研究体系長)は話す。基本的原理が確立している高分子系も「パワーを出すには膜を厚くすればいいが、そうすると応答速度が落ちる」などさらに改良の余地があるという。

今後の研究開発に期待したい。

さまざまに改良を施したゲル状の高分子素材は通常の100倍の力を加えても切断することができず、もと通り復元したようだ
人工筋肉を使うに当たって顔の表情や筋肉の動き方などを調べた研究成果も発表された

(浅野純也)

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