【WISS2001レポート】ネットワーク、そしてオンラインチャット

      [2001/12/12]

    ○ネットワーク、そしてオンラインチャット

    大阪電気通信大学の魚井宏高助教授。Macintoshの第一人者としても知られる

    WISS2001では、会場にネットワーク(今回は64KbpsのISDN回線を臨時で引き込んでいる)を張り巡らし、100名を超える参加者の持ち込んだ総数100台にも上る数のPCが、ネットワークで結ばれた。このように、持ち込んだ機材がその場でネットワークされるというシーンも、WISS2001ならではだという。たしかに、さまざまな集会の会場が、ノートPCやデジタルカメラでぼんやりと光っているというシーンは、すでに日常的になっているが、それがネットワークでつながっているというのは、未来的だ。

    ネットワークというと、ある種「恒常的」なものをイメージすると思うのだが、WISS2001では違う。たった3日間のために、無数のHubとネットワークケーブルが結線され、PCが結ばれてしまう。会場の片隅に、DHCPサーバーが立ちあげられ、スクリーンの画像はリアルタイムにFTPサーバーに入力される。

    「WISSは学会のなかではもっとも活気にあふれるもの」という声を少なからず耳にしたのだが、たしかにこのネットワーク空間は、独特のエネルギーに満ちた祝祭空間とでもいうほかはない。

    しかし、参加者が持ち込んだPCを相互に接続するのは、なにもWebやメールをするためではないのである。WISS1997のときからの恒例だそうだが、WISSでは発表時に「オンラインチャット」を動作させる。

    発表者のスクリーンのすぐ下に、チャットスクリーンが設置されて、発表と並行して聴衆が「ちゃちゃ」を入れたり、「突っ込み」を入れたりするのだ。このためのオンラインチャットシステムは、このWISS2001のために大阪電気通信大学総合情報学部情報工学科の魚井宏高助教授の元、藤松信也氏らによって開発された、専用の二次元チャットシステムSUCOPを使用する。

    学会発表のさなかに、リアルタイムでチャットするのだ。それも参加者が、である。

    SUCOPでチャットする参加者たち。発表に関係する発言は上のほうに、雑談はしたのほうに書かれるようなルールができてきた。たいへん対話的な学会なのだ
    会場の雰囲気。ほとんどすべての方がノートPCを持ち込んでいた。なかにはデスクトップ+液晶ディスプレイという強者も

    この二次元チャットシステムSUCOPでは、参加者は二次元平面上に、自分の顔アイコン(32×32ピクセルのGIF画像をその場で登録して使用でき、いきなり写真を撮って自分の顔アイコンを作る人まで出た)と自分の吹き出しをもつことができる。吹き出しは発言ごとに、自由な位置にレイアウトでき、ちょっと見には、マンガみたいに見える。二次元平面は、時刻情報を横軸としてもち、発言が増えてくると、半自動的に左側にスクロールしていくようになっている。

    なんというか、ユーザー層にぴったりマッチするような、かゆい所に手の届く、マニア好みの仕様である。こんな仕様を聞いて、即座にアイコンを作ってしまうユーザーというのも、なかなかすごい。

    会場に持ち込まれたPC群をつなぐためのケーブル。床の通路は、ほぼケーブルに埋め尽くされていた

    正面での発表のクオリティはさまざまで、楽しい発表のときはチャットも楽しく、難しい発表のときにはみんなが混乱し理解を助け合い、単調な発表が続くと派手なデモを要求したりする。簡単な質問には、その場で答えてくれるひとが出てきたり、本題からは逸れるような話題も許容されたりする(いつのまにか中央のラインから上は本題に関係する話題に、ラインから下は雑談に、というようなルールが確立された)。

    チャットシステムの使い方に対する説明も、チャットシステムを使って行っている。もちろん、考えてみれば、マニュアルを頭から読むよりも、わかりにくいちょっとしたことだけを尋ねて答えが返ってくるのなら、そのほうが使いやすいに決まっている。臨場感、たっぷり。

    画像系の発表が続くと、二次元スクリーンにイラストを描く人まで現れてくる。画像を理解するには、画像をもってするのがベストであるから、じつにインタラクティブだ。

    ダイナミックなジャズ・セッションにも似ている。これこそが、WISS2001だ、と感じる躍動感である。知識の共有、コミュニケーションというのは、まさにこういうことをいうのだ。

    学会発表が、小難しい論文の読み上げでよかった時代は、遙かに過去のものになってしまった、とさえ感じさせるチャットシステムなのであった。受動的な学習システムから、相互に補完しあうコミュニケーション型の学会発表。

    実際に数十人が同時にチャットしていたが、SUCOPは、かなり安定動作していた。最終的な使用率は80%近いものであった。全員参加の学会発表。すごい。

    なお、このSUCOPは、現在のところWebでの配布はされていないようである。今回、100人規模でのリアルタイム動作での実証実験は済んだと考えれば、配ってもよさそうな気もする。魚井先生、期待します。

    (美崎薫)

    魚井宏高氏のホームページ
    http://www.fishbone.jp/

    WISS
    http://www.wiss.org/

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