【レポート】坂村、ストールマン、トーバルズが武田賞受賞 TRON、GNU、Linuxの夢の共演

  [2001/12/04]
武田賞受賞の3人が紹介された

武田賞は、「計測先端知」の創造とその活用の先駆者であり、タケダ理研工業株式会社(現、株式会社アドバンテスト)の創業者でもある武田郁夫氏によって資金提供を受け、2001年4月に設立された財団法人武田計測先端知財団が選定し、授与する、「工学知」のための賞である。

聞き慣れない言葉である「工学知」は、「科学知」を含む各種の知識の組み合わせ、新しいアルゴリズム、工夫やひらめきの利用、適切な組織運営、市場ニーズの的確な把握によって得られるもの、と定義されている。

そして、「工学知」を市場に提供していくのが「テクノアントレプレナーシップ(techno-entrepreneurship)」である。技術企業家精神とでも訳したらよいだろうか。

ノーベル賞100周年に当たる2001年に設立された武田賞は、ノーベル賞にはない工学技術分野(工学知)の実践的な実績(テクノアントレプレナーシップ)に対して贈られる賞なのである。

○坂村、ストールマン、トーバルズ

その武田賞の授賞式が、2001年12月3、4日に、東京六本木にある全日空ホテルで開かれ、受賞者によるフォーラムが開催された。

2001年の武田賞は、大きく〈情報・電子系応用分野〉、〈生命系応用分野〉、〈環境系応用分野〉の3部門7名の受賞となった。今回はそのうち、〈情報・電子系応用分野〉のフォーラムの模様をレポートする。

〈情報・電子系応用分野〉の受賞業績は、オープンなコンピュータ基本ソフトウエア開発モデルの提唱と実践によって、東京大学大学院情報学環教授の坂村健、フリーソフトウェア財団代表のリチャード・M・ストールマン、トランスメタ社のリーナス・トーバルズの3氏が受賞した。なお、この順番は姓のアルファベット順によるもので、紹介もこの順番になされた。

○TRON、GNU、Linuxの夢の共演

さて、坂村健、リチャード・M・ストールマン、リーナス・トーバルズといえば、TRON、GNU、Linuxといういまをときめく3大オープンフリープロジェクトの中心人物である。その3人が同じ賞を受賞し、一堂に会するとなれば、そこはそれ、「なにか」を期待してしまうというのは、やじ馬ならぬレポーターの心理というものである。

TRONは、The Real-time Operating-system Nucleusの略語で、組み込み用を中心としたリアルタイム処理OSとして日本でトップシェア、世界でも多数使われている。

GNUは、GNU's Not UNIXの再帰頭字語で、ソースコードの公開、配布の自由などを実現したフリーソフトウェア運動。

Linuxは、UNIXに想を得て作られたUNIX互換のオープンソースOSである。

このそれぞれのプロジェクトは、TRONやLinuxがGNUの開発環境を採用していたり、Linuxのリアルタイム版にTRONが使われたり、というように、互いに微妙な関係を保っている。もちろん、全体としてみれば、マイクロソフトのWindowsではない、という共通項はあるけれど、細かいことをいえば、TRONの主張とLinuxの主張は全然かみ合っていないし、GNUとの「フリー」の考え方も全然違っている。

その3人が同じ場所に集まったわけだ。

ゴジラ対モスラ対キングギドラ。マジンガーZ対デビルマン対ゲッターロボ。夢のような共演といってもよい。

○直接対決!

口火を切ったのは、ストールマン氏であった。

坂村氏のTRONの講演で、「住宅や携帯電話など、すべてのものにマイクロプロセッサが組み込まれていく」という発言を受け、質疑応答で手を上げたのだ。「すべてのものにプロセッサが組み込まれた場合のセキュリティはどうなるのか?」と尋ねた。

最初に登場したのが坂村健氏。最近研究中のeTRON(セキュリティを重視したTRONのチップ)の実物を見せた
すかさずこれに反応したのが、ストールマン氏。すべてのものにコンピュータが組み込まれたらセキュリティはどうなる!?

坂村氏は、「セキュリティの強化のためにeTRON(セキュリティのためのTRON)をやっている」と答えたが、当然、その回答は不充分だったようだ。

続いて、ストールマン氏が壇上に立ち、「GNUはフリーであり、コンピュータのなかにフリーの大陸を作り上げたのだ」と堂々と自説を開陳した。フリーにこだわるところに、アメリカ人的な開拓者精神を感じさせた。「セキュリティを完全にするためには、コンピュータは使わないこと」と言い切るだけあって、迫力は満点。プレゼンテーションシートなどは使わず、自分自身がプレゼンターというド迫力である。カリスマ性とプレゼンテーションシートは、相反するのかもしれない。「もちろん、携帯電話はもっていない」

続いてストールマン氏が壇上に登場
フリーにするには、「君の努力が必要なんだ!」

最後にリーナス・トーバルズ氏が、Linuxのオープン&フリー開発方式について説明を行った。

最後がリーナス・トーバルズ氏
「この日本で作られた小さなマシンでLinuxを動かしています」とのこと
ソフトウェアの開発は、遺伝に似ている、と比喩を使って説明
遺伝に似ているので、ミューテーション(突然変異)のようなこともあるが、優性遺伝を使ってよいところを残していくことが大切。そのためには、平行開発のような必要性もある

トーバルズ氏への質疑応答では、会場から、FreeBSDグループの方が「FreeBSDはソースコードの採択も民主的に行われているがLinuxはトーバルズ氏が独断で決めていて、民主制に欠けるのではないか?」というなかなか挑発的な質問が飛び出した。トーバルズ氏は、困ったように顔を赤らめて「Linuxもわたしひとりで決めているのではないし、わたしが決めている部分もオープンであるからこそ支持を得ている」と説明した。とてもシャイな方なのだなぁ、というのを感じさせる表情だった。

また、おおぜいで開発するためには、コミュニケーションも大切だ、という
質問に答えるトーバルズ氏。FreeBSDからの質問には、顔が引き締まって真剣になっていた

続いて、ストールマン氏が「Linuxのフリーはフリーというよりはオープンソースなのではないか」とオープンソースとフリーウェアについて問いただすようにトーバルズ氏に質問を投げかけた。トーバルズ氏は、年齢的にも実績的にもストールマン氏を尊敬しているようなそぶりを見せ、「そのとおり」というようにストールマン氏を立てた。

坂村氏の理路整然たるさま、ストールマン氏のフリー(=自由)へのこだわり、トーバルズ氏のシャイにしてまわりをもり立てていく様子。この三者三様な表情は、それぞれがそれぞれのプロジェクトの特徴を示すかのようで、たいへん興味深かった。

トーバルズ氏に「オープンソースとフリーウェアは違う」と質問するストールマン氏
トーバルズ氏と坂村健氏のツーショット。同じOS開発者としてか、けっこう意気投合していた

なお、武田賞は、2002年度も同様に選考によって賞を決定していくという。また奨学賞として優秀な優秀な若手学生に対する援助も行われるとのこと(2001年にも奨学賞が授与されている)。これから、21世紀にかけて、授与されていく賞の価値を高めていくのは、受賞した人たちの活動いかんということになる。

記念すべき第1回目の受賞が、たいへん活気あふれたものとなったのは、「象牙の塔」のなかの知恵でなく、工学とテクノアントレプレナーシップ、つまり現実に使われることを意識した武田賞という賞を象徴する出来事だったのかもしれない。

(美崎薫)

武田計測先端知財団
http://www.takeda-foundation.jp/



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