【レポート】Beyond Being Digital -ニコラス・ネグロポンテ-(2)

      [2001/11/13]

    ○数学とアートを止揚してコンピュータの未来を見いだす

    言葉以上の表現力をもつ手

    ピンマイク1本のプレゼンテーションを、ネグロポンテ所長は「わたしは道具は使わないが、英語をとてもゆっくり話すので、聞き取れるだろう」と口火を切った。

    実際、これほどゆっくりと丁寧な英語での語りかけというのは、めったにないものである。MIT教授として、多国籍な学生相手に教鞭をとることもあるのだろうが、この語り口の丁寧さこそ、未来学者としての信頼性を高めるテクニックのひとつなのかもしれない。

    ネグロポンテ氏は、1944年ギリシア生まれ。MIT在職中に「Urban5」というプロジェクトを手がけ、卒業後、1967年に「アーキテクチャー・マシーン・グループ」を設立した。ヒューマン・マシーン・インタフェースを中心とした研究で、世界中、特に日本から注目を集めてきた。

    大学時代は、数学とアートに興味をもっていたというが、その両方を統合するものとして、コンピュータに興味が広がったという。

    コンピュータの研究では、1977年から、いわゆるマルチメディアで、音、映像などを統合していく研究を進めてきた。これが、1985年のメディア・ラボの設立につながるのである。1979、1980、1981年には来日し、積極的なプレゼンテーションを行ってきた。

    「メディア・ラボは、外部からの資金を中心として運営されている。米軍やアメリカの企業だけでなく、日本の多くの企業が資金援助している」(ハイパーメディア・ギャラクシー 浜野保樹著、福武書店 1988)とあるように、日本企業が知りたがる「未来」をメディア・ラボは作り続けてきた。

    ○「次」の10年

    次の10年では、パッケージメディアはほとんど終焉を迎えるだろう、とネグロポンテ所長はいう。

    手が自在に動き回る、ネグロポンテ所長のプレゼンテーション

    メディア・ラボで、学生にメディアとはなにか、と尋ねると、「(1)ゲームであり、(2)テレビである」と答えるという。いずれも画面のなかで完結するものなのだ。

    たしかに、すでに、MP3やNapsterに代表される音楽交換技術が、CDの売り上げを脅かした例が示すように、今後、高速な回線やデータベース、ピア・ツー・ピアなシステムなどが成長し続けていけば、パッケージメディアの占める余地というのは、たいへん小さいものになっていくだろう。10年という視野で見れば、パッケージメディアの終焉はほとんど間違いない「既定の事実」のように思われる。

    メディアという点では、「5年前に、メディア・ラボでは、エレクトロニックペーパーの開発に成功した」と語った。「エレクトロニックペーパーは、PCのディスプレイよりも高いコントラストをもち、見やすい。あたかも印刷したような、見ることのできる「紙」であり、新聞を見るような感覚で使うことができる」のだという。

    未来について語るには、このようなディスプレイ革命は、必須の技術革新になるはずだ。ディスプレイをメディアとして使う上では、どうしても必要なのだ。

    「本」のイメージも大切だ、とネグロポンテ所長はつけ加える。本のもつ柔らかなインタフェースは、コンピュータにはまだ見られない特徴だ。

    ○コンピュータのもつ手触り

    ディスプレイとあわせて必要な変化は、「タンジブル(tangible)」にある、とネグロポンテ所長はいう。

    タンジブル、という聞き慣れない言葉は「実体のある」という意味の言葉だ。

    メディア・ラボに参加した日本人初の研究者である石井裕教授が、2000年6月に、「ICCオープン・スタジオ タンジブル・ビット」展を開催したことをご存じの方もいるかもしれない。

    石井教授は、タンジブルに「手につかみ操作できる」とか「物理オブジェクトとデジタル情報をリンクする」というような意味づけを与えて使用していた。タンジブル・ビットでは、従来のコンピュータにありがちな、マウスとキーボードというインターフェースではない、新しいインターフェース群への可能性を示唆したのである。

    「全世界のほとんどの人は、コンピュータがどうやって動いているのかには興味がない」とネグロポンテ所長はいう。必要なことは、「メールを送れることであり、コミュニケーションをとれることなのだ」。そのためには、いまのコンピュータは複雑すぎる。

    実際、日本での携帯電話やiモードに代表されるお手軽インターネット環境の流行は、まさにネグロポンテ所長のいうメールやコミュニケーションに特化した世界の実践なのかもしれない。その意味では、すでに日本のコンピュータ世界は、未来を実現しているといってもよいかもしれない。

    (美崎薫)

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    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/11/13/05.html

    【レポート】Open Studio "Tangible Bits" - 情報の感触、情報の気配
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2000/07/10/07.html

    インフォマティクス
    http://www.informatix.co.jp/

    MITメディアラボ
    http://www.media.mit.edu/

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