【産総研オープンハウス2001レポート】ヒューマノイドロボットなど最新の研究成果を一般公開(上)

      [2001/10/19]

    18日、茨城県つくば市の独立行政法人産業技術総合研究所において「オープンハウス2001」が開催された。同研究所は省庁再編にともない、旧通産省工業技術院の傘下にあった電総研や機械研など15の研究機関を統合し、新たに45の研究部門・ユニットとして再編成されたもの。その研究範囲は情報やエレクトロニクス、電力エネルギー、生物、計測、海洋、地学、生物、化学など幅広い分野をカバーしている。旧機関の枠組みを取り払った、たとえば機械系と情報系を融合させた新しい研究グループなども誕生している。独立行政法人となったことで従来の省庁下にあったような制約にとらわれない独立自主性を持った、柔軟な研究体制が特徴とされている。

    今回の「オープンハウス2001」もこうした「独立自主性」を発揮したもので、民間企業や大学の研究機関との連携を視野に入れたいわば「ショーケース」的な場として設けられた。早い話、制約が少なくなった代わりに自前で稼ぐ必要性もあるということだ。今回は45の研究部門・ユニットのうち、情報処理研究と知能システム研究の2部門から約70のテーマが一般公開された。この日は真冬並みのあいにくの天気にもかかわらず来場者は約700人を数えた。

    今回のレポートでは展示されたテーマの中からPC WEB的に注目のものをピックアップして紹介しよう。

    ○スパコンをクラスタ化するGRIDプロジェクト

    GRIDに関してはパネル展示のみ。韓国とシンガポールを拠点にアジア地域を結ぶApGRIDの構想パネル

    情報処理部門は主にネットワークや高度コンピューティング、ヒューマンインタフェースなどに取り組むグループ。現在もっともホットなトピックは「GRID」だ。各地のスーパー(ハイパフォーマンス)コンピュータを専用の高速回線で結び、仮想的なスパコンとして一元的に高速処理する技術・プロジェクトのことだ。物理や生体研究、天気予報、各種シミュレーションなど個々のスパコンではオーバーフローしつつある膨大な計算量をカバーするが目的だ。PCの世界でも空いているプロセッサパワーを使うCETIプロジェクトなどがあるが、みんなでやれば凄いんだ! のスパコン版のようなものと考えていい。

    GRIDは世界的なプロジェクトであり、日本では同研究グループが重要な役割を果たしている。分散高性能計算のためのミドルウェア「Ninf」やペタバイトクラスの膨大なデータを対象に解析やアクセスを行う基本ソフト「Gfarm」、アジア太平洋地域におけるGRIDの基盤となる「ApGRID」などが開発されている。

    ○言いよどんでも助けてくれる音声補完

    ヒューマンインターフェイスの分野では音声補完というユニークな展示があった。途中までは言葉が出てくるのにそのあとがわからなかったり、完全な言葉を入力できないときに、その前後の言葉を補完してくれる音声認識技術のことだ。PCのかな漢字入力の先読み変換の音声版といったところだ。

    カラオケやジュークボックスの選曲メニューを模したデモをおこなって「宇多田……」と途中までの発音だけで検索を開始、「ヒカル」などそれに続く候補が一覧表示されていた。音声認識の研究では認識率の向上ばかりがトピックになり、こうした自然な会話についてはあまり注目されていなかったが、実際の会話では話し相手が補完してくれるなどのコミュニケーションが有効なことからこうした取り組みを始めたという。言葉を探すときに語尾の母音を伸ばす「……」の部分を検出してリアルタイムに候補を検索しているという。

    音声補完のデモ画面。「なんとか~」というのは後方補完をするためのワイルドカード的キーワード
    続けた言葉と後方一致させることができる。「なんとか~、ゆき」で「小柳ゆき」が検索されたところ

    ○「オフィスロボット事情通」

    人の顔認識と対話処理、自分の位置認識などの機能を持つ「オフィスロボット事情通」も展示された。声がする方向を向いて相手を認識、簡単な会話をして、周囲を認識しつつ移動できるもの。オフィス内の人の情報を覚えておき、たとえば訪問者に「Aさんはどこにいますか」と聞かれて「会議室にいます」と答えたりする機能を持たせたことからこの名前がつけられた。ただしロボット自体の製作が目的ではなく、各インタフェースの要素技術のプラットフォームとして開発されたものだ。

    音声認識は8個のマイクをぐるりと並べて、全方位からの音をパッシブレーダーのように信号処理によって解析することで音がする方向を判断、波形によってテレビの音などの音声以外のノイズと会話を聞き分けるマイクロフォンアレイ技術や、一定の画像の動きを予測して雑音となるノイズを確率的手法で取り除くコンピュータビジョンなどがデモされていた。

    (浅野純也)

    「オフィスロボット事情通」の最新モデルはセンサの数が増えて大型化した。マイクロフォンアレイは一番上のアンテナの周囲に配置されている
    初代「事情通」。こうしたインターフェイス機能を隣にチラリと見えている人間型ロボット「テムザック4」に移植するアイディアもあるという

    【産総研オープンハウス2001レポート】ヒューマノイドロボットなど最新の研究成果を一般公開(下)
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/10/19/17.html
    に続きます

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