【レポート】北京で中国語処理を研究する日本企業子会社 - 富士通研究中心有限公司の現在

  [2001/06/25]

富士通は北京に富士通研究中心有限公司という子会社を持ち、北京の大学や研究機関と共同で、主に中国語処理の研究をおこなっている。これは、同社が昔から言語処理分野の研究に大きな力を入れている事に関係しているだけでなく、中国のPC市場構造を考えたとき、将来への戦略的な意味あいを持つ。

同研究所設立の構想が公式に発表されたのは1996年3月。日本の小売業者であるヤオハンが北京から撤退したほぼ1年後だ。現在の富士通名誉会長である山本卓眞氏が江沢民国家主席と会談した時、現地の研究機関と共同研究を進めていく研究所を設立する旨を切り出したのだという。

1998年に同研究所は設立された。北京という土地を選択したのは、首都であるのと同時に、中関村地域に中国科学院や中国工程院、精華大学や北京大学など、中国でも指折りの研究機関が立ち並ぶ土地柄であるということも大きい。

共同の研究開発をおこなう上で、現地の研究機関と近い立地を確保した方が良いという判断があった。また、開発テーマの大きな柱である中国語処理を研究するには、日本人が中国語を覚えるよりも、研究所内に優秀な中国人の人材を確保した方が効率がよいという理由もある。実際、同研究所には日本人スタッフは少なく、多くの人材を現地で採用している。

何故、同社は中国でおこなう研究の中心を、特別に優秀な現地の人材を確保しながらおこなう必要がある言語処理分野に据えたのか。それは、PCにおける中国語処理がまだ未発達と見たからだ。中国語をPCで処理するには、日本語と同様に2バイトの文字を使い、FEP(Front End Processor)などの技術を使用する必要がある。さらに一言に中国語といっても、北京語(大陸)、北京語(台湾)、広東語、上海語などの方言があるため、それぞれに適した処理もおこなわなくてはならず、かなり複雑な手順を踏む必要もある。

この時点で、聯想の「漢ソウ」(参考記事参照)は、すでに市場に出ていたが、まだ参入の余地があると判断した。その背景には、当時かなり低かった中国でのPC普及率がある。各種調査によって細かい数字は異なっているが、1990年代の中国のPC普及率はひとけた前半、しかもかなり低い。PCは、まだごく一部のエリート層の用いるものだったのだ。

この数値は、2001年現在も大きく変化しているわけではないようだ。しかし、普及台数はすでに2,000万台を超えており、日本に次いでアジアで2位だとされている。

この普及率の低さと普及台数の多さのギャップは、中国が潜在的に巨大な市場であることを指し示している。現在、日本のPC普及率は2001年3月末時点で50.1%(内閣府調べ)。仮に、中国のPC普及率がここまで伸びるとすると、普及台数は軽く億レベルに突入し、ごく一般的なユーザーがPCを用いる状態となる。そうすれば、簡便で優れた言語処理技術の必要性は現在よりずっと高まってくる。

富士通では、同研究所の維持コストはさほど高くないとする。現在は言語処理と通信技術研究を重点的に進めており、従業員数も3年前から急激に増えているわけではない。中国市場はビジネスとしては見えづらい部分も大きく、下手に派手な展開をするのは企業として危険が伴う。それよりも、ある程度の様子見をおこない、しっかりと足固めをしておこうというわけだ。

静かに時宜を待つといった感のある同社と同研究所だが、各国からの進出が相次ぎ、大きなうねりが起こりつつあるようにも思える中国PC市場において、今後はどんなポジションに立つことを目標にするのだろうか。得意な技術から攻めることで、一点突破全面展開をおこない、日本における富士通ブランドのような位置を占める事が目標なのか。それとも一点を追求していき、分野における先行者利益の確保を目指す事になるのだろうか。

同研究所の将来の展望について、富士通では「展開をする必要性はあるだろうが、問題はビジネスに繋げられるかどうか。その部分が見えさえすれば、次の研究所を設立したり、他の研究分野に着手する可能性はあるだろう」(同社広報)としている。

参考記事
中国ITの旗艦-聯想集団有限公司
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2001/china_legend/

富士通
http://jp.fujitsu.com/

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