【レポート】中古ソフトと新古書店 -- 著作権が投影する現実と法制度の「ズレ」

 

ゲームソフトの中古品を自由に販売するのは是か非か? この問題をめぐった訴訟が続いている。ソフトメーカー側、販売店側双方とも譲らず、両者ともに強い主張を繰り返している。3月に、この問題への解答の1つが相次いで出された。東京、大阪の高等裁判所が、中古ゲームソフトの販売は可能、との判決を下したのだ。しかし、その後、敗れたメーカー側が上告、この問題の結論は最高裁の判断にまで持ち越されたが、出版の分野でも新たな問題が浮上してきた。最近流行りのいわゆる新古書店だ。

新古書店は、出版されて間もない書籍の販売を主力としている。新古書店では、一般に、新しい本ほど高く買ってくれる、という形式を採っており、新刊が出てさほど日数が過ぎない間に店頭に並べられる。結局、新刊を求める読者のなかには、多少待てば、新刊書を安く入手できることになり、これが新刊書店の売上げに影響を与え始めた。特に、マンガは、マンガ喫茶の台頭も逆風となって、新刊の売上げが低落傾向にある。

新古書店で売れた書籍からは、極端にいえば、出版社や著作者には何の利益も生み出されない。ある本が新刊書店で10冊売れたとする。その10冊が新古書店に持ち込まれ、もういちどすべて売れたとすれば、実際には20冊売れたにもかかわらず、10冊分の売上げしかでないことになる。

こうした流れに対し先月、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」が設立された。マンガ家の権利を守るため、著作権保護に向けて運動を開始した。

さて、中古ソフト訴訟ではメーカーは以下のように論じる。ここ数年、ゲームソフトは開発に著しく高い投資と手間がかかるようになっている。メーカーに何の見返りもない中古販売が自由化されれば、投資も回収できず、大きな打撃を受ける。

ここで映画の著作物、という考え方が登場する。著作権法では、視覚・聴覚的な手法で、映画に似通った効果を出すものを「映画の著作物」と規定、映画の著作物には「頒布権」と呼ばれる強力な権利を与えている。これは著作権者が、その作品または複製の流通を支配できる権利で、たとえ「中古品」であっても、著作権者の許可なく販売することは認められない。ゲームソフトは「映画の著作物」だから、頒布権があり、中古販売は違法である。これがメーカー側の主張だ。

これに対し販売店側は、「中古ソフトの販売に制限が加えられれば死活問題となる、新作も含めソフト自体の売れ行きが減速しており、事実販売店の数が減ってきている」(販売店幹部)と訴える。

コンピュータソフトの著作権保護を推進する、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の久保田裕専務理事は「このままでは、本やソフトが売れない、著述者、開発者の意欲が低下、制作物がおもしろくなくなる、あるいは制作される数自体が減る、されに売れなくなるということになりかねない。そんな状況になれば、これは情報のデフレスパイラルだ」と指摘する。

同協会は中古ソフト訴訟で頒布権を主張しているが「頒布権が、今後ゲームソフトに認められるとしたら、書籍や音楽CDなどにも必要なのではないか。ゲームソフトだけが特別なのではない。たとえば、流通により発生する利益に対する報酬請求権だとかいうような形式でも良い」(同)という。ともかく現状の新古書店の事業方式を放置しておくことには強い懸念を示す。

ゲームソフト自体、最近の判決では、頒布権否認との意向が示されるなど、書籍や音楽CDにも頒布権を認める、ということになるかどうかは不透明だし、いまのところは出版界からも頒布権を認めよ、との表立った主張はないが、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の設立といった動きも出てきた。

中古ソフトの頒布権を東京・大阪の高裁は否定したが、判決の理由は相当異なっており、この問題に対し、1つの固まった理論が未だ存在していないことを浮き彫りにしているともいえる。久保田氏は「我々は、たまたま、デジタルの著作物の権利を論じているが、著作物そのものを守る運動からすると、アナログ、デジタルの違いは関係ない。中古ソフトと新古書店の問題の根はひとつだ」と語る。

デジタル化の急速な進展とインターネットの普及により、コンピュータソフトはいうまでもなく、音楽、書籍、著作物の複製があまりにも容易になっている。他方、複製ではないものの、新古書店のような例も著作権を脅かしている。

著作権問題は、今の制度や法律が現実にそぐわなくなってきていることを映し出している。ソフトメーカーと販売店は訴訟で争っているが、メーカーやその支援者は中古販売をなくそうとは考えていない。販売店側もメーカーを敵視しているわけではなく、メーカーと中古販売店との共存共栄ができるような仕組みを模索する道はあるはずだ。新古書店の場合も同様な解決策があるのではないか。難問ではあるかもしれないが論議は始めるべきだろう。

関連記事
東京高裁、中古ゲームソフトの販売は妥当と判断
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/03/27/05.html

社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
http://www.accsjp.or.jp/



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