野村総合研究所経済研究部は「NRI中期経済予測2001-2005 日本経済再生の条件」と題する論考を発表、今後5年間の国内経済の見通しを示した。650兆円近い赤字国債残高を抱え破綻の危機に瀕している財政を立て直すには歳出削減だけでは実現しないことなどをシミュレーションにより検証、低下し続けているROA(総資産利益率)を改善すべきであり、そのための方策のひとつとして「IT(情報技術)関連投資」を推進することを提唱している。
同論考によれば、日本のROAは、70年代初頭には14%だったが半ば頃からは8%程度に急落、それ以降横ばい、漸減傾向を続け、98年には3.9%にまで低下しているという。こうした状況を背景に、この論考では、今後の予測として、大きな改革を伴わない「変革忌避シナリオ」と、IT投資などにより資産運用を効率化する「フロンティア開拓シナリオ」の二通りを提示する。
フロンティア開拓シナリオでは、公共投資を2002年度以降、5%ずつ削減、民間企業はIT関連部門のような収益率の高い投資に資本を集中するとともに収益率の低い資産を圧縮する施策を実行すれば、96年から2000年までの平均で1.0%だった実質成長率は、2001年から2005年では2.4%ほどになるという。
これに対して変革忌避シナリオでは、公共投資がさほど縮小されず、公的部門の歳出削減も進展しない、との見通しで資産の効率性が向上せず、2001-2005年の平均実質成長率は1.7%に止まる。それでも2005年までは危機的な状況が目立たないものの、2006年以降は矛盾点が噴出、低成長のなか失業率が上昇、高金利となり、日本経済は破綻に向かう、と予測している。
結論としてこの論考は、この1、2年の間に、政府、民間がどのような選択をするかにより10年、20年後の日本経済の未来像が決定することになる、としている。ITの進歩が国民経済に寄与する、との分析は、米国などですでに報告され、実証されているが、いまのところ、日本では、ITが好景気に直結する、といった図式は十分に確立されているとはいえない。とはいえ、少なくとも、誰も使わない港湾施設、ほとんど航空機が飛ばない飛行場、交通量が極端に少ない道路--などが経済活性化に何一つ貢献しないのは誰の目にも明らかであろう。さて、政府当局者は、こうした提言に対してどう回答するのか?
野村総合研究所
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