【レポート】デジタル・パイレーツ - 改善の兆しない中国の違法ソフト

      [2000/11/09]

    中国のシリコンバレーとも称される北京・中関村。北京大学や清華大学といった中国を代表する最高学府が集まり、秋葉原の縮小版のようなコンピュータショップも軒をつらねる。だが、表通りを歩いたとき、一番気になるのは、次から次へと寄ってきては「電脳軟件(コンピュータソフト)」、あるいは「VCD、DVD」と耳元に囁きかけてくる海賊版ソフトの売り子たちだ。

    ところ変わって、大連市最大の繁華街である青泥窪橋に近い大連電脳商場。IBMや連想、コンパック、フィリップス等大手メーカーの販売代理店が並ぶ巨大な円形の売り場の真ん中で、ありとあらゆる海賊版ソフトが売られている。客層は多様だが、主として中国人の若者たちと外国人である。

    驚くほどの低価格である。たとえば、マイクロソフト - ときおり「マイクロソフト」の綴りがご愛嬌で間違っている - のOffice2000が10元(約130円)、Frontpage2000も10元、VisualC++6も10元。値段を聞くうちに、しまいに売り子の中年女性が面倒くさそうに言う。「二枚組のは全部10元だよ」

    コンピュータソフトと並んで人気を集めているのは、ハリウッド映画のソフトだ。最新の映画ソフトが、DVDで15元(約200円)。VCDなら二枚組で10元である。

     

    こうした状況は、べつに最近始まったことではない。取り締まり当局と海賊版ビジネスのイタチごっこは、91年の著作権法制定、92年の知的所有権保護に関する中米覚書の取り交わし以降も、延々と続いてきている。

    一連の中国のWTO加盟協議においても、国内の知的所有権侵害が大きな問題として取り上げられてきた。SPA(Software Publishers Association)は、それこそ再三にわたり、USTR(US Trade Representative)に対し、スペシャル301条の行使を働きかけてきた。中国当局も、この間ただ手をこまねいていたというわけではない。華南地方を中心におびただしく広がるニセCD製造拠点を一斉検挙してみたり、海賊版ソフトを山のように集めては人々の前で焼き払ってみたりと、活動の宣伝には余念がない。

    しかし、たとえば大連電脳商場の真ん中で堂々と売られている海賊版CDをみるかぎり、取り締まり当局が本気で海賊版ビジネスを撲滅しようとしているようにはみえない。要は、麻薬撲滅、売春撲滅といった他の運動に似て、定期的にデモンストレーションとして展開される取り締まりの間さえおとなしくしていれば、すぐにまた盛り返してくるのである。

    たとえば、次の取り締まり期間がいつからいつまでかは、新聞さえ読んでいれば誰でも分かる。11月11日から来年の1月15日までなのである。いわゆる春節(旧正月)前の一斉取り締まりだ。この間は、おそらく中関村界隈の行商人は別として、人目につく売り場で海賊版ソフトが売られる頻度が少しは減るだろう。運の悪い売り子が、数十人くらいは検挙されるかもしれない。

    だが、残念ながら、こうしたデモンストレーションは、結局のところ大した効果は生まないし、電脳商場に海賊版ソフトを買いに来る一般市民が減ることもないはずだ。電脳商場で言葉を交わした中年男性が言う - 「正規の売り場でDVDのソフトを買おうと思えば200元(約2,600円)近くする。庶民の給料がようやく1,000元くらいなのに買えるわけがない。こういう海賊版だって、まあまあ観て楽しめる。庶民の味方さ」

    海賊版ソフトを歓迎する庶民の意向があるかぎり、取り締まり当局がしばしば加担していることすらあるといわれる組織的な違法コピービジネスが衰えることもないだろう。中国での知的所有権侵害問題の解決には、まだまだ遠い道のりがあるとみなければなるまい。

    (薄田雅人)

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