2018年6月都内で開催されたカンファレンス「DLLAB DAY 2018 深層学習を使いこなす日」では、AI・ディープラーニング(深層学習)を実生活やビジネスに応用するための取り組みが、数々のセッションで解説された。ここでは、最先端の技術やソリューション、活用事例が盛り込まれたキーノートの内容をレポートする。

  • カンファレンスルームの待ち合いスペースでは、数多く来場者が情報交換を行っていた

【特集】
ディープラーニング(深層学習)が世界を変える!
「DLLAB DAY 2018」イベントレポート
キーノート編(本記事) セッション編

現実に存在する問題を解決するためにディープラーニングは進化を続けている

カンファレンス冒頭のキーノートでは、DLLABで中心的な役割を果たしている日本マイクロソフトの榊原 彰氏とPreferred Networksの西川 徹氏、東京工業大学 情報理工学院 特任教授 松岡聡氏が登壇。さらに、本来登壇予定で諸事情により来場できなくなったカーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授 金出武雄氏が、スカイプを通じてコメントしてくれた。

まずは日本マイクロソフト 榊原氏により、1周年を迎えたDLLABの活動内容と今後の展開について簡単に解説がなされたあと、カーネギーメロン大学の金出氏がSkype経由で登壇した。

  • Skypeを通じ講演するカーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授 金出 武雄 氏

金出氏は、AI研究の第一人者であるアレン・ニューウェル氏による「よい科学は現実の問題に応答しなければならない」という言葉を引用し、実際にディープラーニングも含めたAI技術は現実に存在する問題を解こうという目標の中から生まれたものであると語る。今や人間の能力を凌ぐものとなったAIだが、「人にできないことを行う」のではなく、「人のしたいこと」と「人のできること」の間を埋める(=人間の力を増やす)ことが重要だと説明。その意味で、広い意味での“教育”が、今後のAIの大きな目標となるだろうと、挨拶を締めくくった。

エッジのインテリジェンス化を進めるマイクロソフトと深層学習のプラットフォームまで提供するPreferred Networks

金出氏のメッセージに続き、日本マイクロソフト 榊原氏が再び登壇。同社が注力する「AIが稼働するプラットフォーム」の最先端技術について解説してくれた。

  • 日本マイクロソフト株式会社 榊原 彰 氏

“モバイルファースト、クラウドファースト”がすでに浸透したことを受けて、同社では現在、“インテリジェントクラウド”、“インテリジェントエッジ”を掲げてビジネスを展開しているという。世界50カ所にMicrosoft Azureのリージョンを展開するなどクラウドへの投資を続けており、今後は“エッジ”側(Windows PCをはじめとしたデバイス、アプリ、サービスやIoTなど)にもインテリジェンスを持たせると榊原氏。AIをはじめMR(Mixed Reality:複合現実)、IoTといった技術に多大な投資を行っているという。

  • クラウドとエッジの双方をインテリジェント化することによって、AIがどこでも稼働する世界が実現できるという(左)。そこでのコアな技術として、榊原はMRとIoT、AIの3領域を挙げ、多大な研究投資を行っていると語った(右)

講演では、マイクロソフトが研究開発を続けているAI関連の技術・製品が次々に紹介され、Windowsに組み込むML(マシンラーニング)アーキテクチャやオープンソース化されたAzure IoT Edgeと数々のデバイス、IoT向けのLinuxディストリビューションであるAzure Sphere、FPGAにDNN(ディープニューラルネットワーク)モデルをマッピングする深層学習基盤「Project Brainwave」などが解説された。

  • “インテリジェントクラウド”、“インテリジェントエッジ”における直近のリリースとして、Azure Sphere、Windows ML、Project Brainwaveなどが解説された

続いて登壇したのは、Preferred Networksの西川氏だ。「IoT時代に向けた新しいコンピュータを創造する」ことをミッションに設立された同社では、交通システムや産業用ロボット、バイオヘルスケアなどの分野でIoTとAIを活用したソリューションを提供している。

講演では、自動車(自動運転)分野におけるディープラーニングの応用や、産業用ロボットや工作機械へのディープラーニングを使った異常検知の事例を紹介。既存の手法では検出が遅かった異常もディープラーニングを使って事前に検出できるようになったと西川氏は語る。また、ライフサイエンス分野では国立がん研究センターと提携し、従来80%程度だった乳がんの診断精度をディープラーニングを使って99%にまで向上させたという事例も解説。世界初のAIによる自動着色サービス「PAINTCHAINER」やニューラルネットワークによる自然画像の生成など、AI&ディープラーニングのさまざまな応用例が紹介された。

  • 株式会社Preferred Networks 西川 徹 氏

さらにPreferred Networksでは、ディープラーニングの応用に不可欠なスーパーコンピュータの計算環境を一般の企業が利用できるようにするプラットフォーム「Chainer」について、これをMicrosoft Azureでより簡単に利用可能にするためのARM Templateやツール群の準備を進めていると西川氏。これらの提供は2018年9月以降を予定しており、今後、Chainer MN(分散深層学習パッケージ)とMicrosoft Azureとの親和性はいっそう高まっていくだろうと語った。

  • Preferred Networksでは2017年10月から、Microsoft Azureで即座にChainer MNが使える環境を提供している。今後、この利便性がより向上するようなので、ぜひとも期待したい

AI/ディープラーニングの活用に不可欠なスーパーコンピュータの最新状況

キーノートの最後に登壇したのは、理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡 聡氏。東京工業大学学術国際情報センターが運営するスーパーコンピュータ「TSUBAME」の設計者である松岡氏は、ディープラーニングをビジネスや社会で応用するためには、計算機能のさらなる高速化が必要で、そのためにはスーパーコンピュータの並列化技術が重要な役割を果たすと語る。講演では、2017年8月より本格稼働を開始したスーパーコンピュータ「TSUBME 3.0」から、2020年稼働を目標に開発が進む“世界一のディープラーニングマシン”となるスーパーコンピュータ「Post-K」の概要まで、スーパーコンピュータ分野の最先端が紹介された。

  • 理化学研究所 松岡 聡 氏

このように、DLLAB DAY 2018のキーノートは、ディープラーニングを含むAI技術の最新情報やディープラーニングを活用するためのプラットフォームだけでなく、AI/ディープラーニングを使って現実の問題をいかに解決できるかといった“目標”までが垣間見られる内容となっていた。2019年6月に2周年を迎えた際、DLLABがどのような展開を見せているのか、今から楽しみだ。

DLLAB DAY 2018 当日の基調講演動画・セッション資料を、こちらのページで公開しています。当日お越しになれなかった方はもちろん、当日のセッションを改めてご参考にしたい方もぜひご覧ください。

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