「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」をテーマに開催された今回の東京モーターショー2017は、EV(電気自動車)やコネクテッドカー、自動運転に象徴されるさまざまなテクノロジーに強くスポットライトが当てられたイベントとなった。その情報は会場内のプレスセンターから世界中のメディアへ即座に配信され、来るべき未来のモビリティ社会へのビジョンを鮮明に示し、大きなインパクトを与えた。誰にも知られず、この成功を陰から支えたのが、プレスセンターの強固なネットワーク基盤である。

自動車産業の枠を超えたアイデアやテクノロジーが満載

2017年10月27日(金)~11月5日(日)の10日間にわたり、一般社団法人日本自動車工業会が主催する「第45回東京モーターショー2017」が東京ビッグサイトで開催された。2年に一度開かれる世界最大級の自動車の祭典で、今回は77万1,200人の来場者を集めた。

そしてもう1つの大きな"変化"として感じられたのが、最先端テクノロジーに強くスポットを当てたイベントとなったことだ。その思いが「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」というテーマにも込められているという。日本自動車工業会 広報室 主査の林公子氏は、次のように話す。

「いま世界の自動車産業全体が大きな変化の波の中にあります。EVやコネクテッドカー、自動運転に象徴されるさまざまなテクノロジーが生まれ、実用化されようとしています。一方で人とクルマ、社会とクルマの関わり方もどんどん多様化してきています。そこで今回の東京モーターショーは、従来の自動車産業の枠を超えたアイデアやテクノロジーを取り入れるとともに、スマホアプリやSNSを通じた広報活動にも注力し、クルマ好きだけでなく、IoTやVR(仮想現実)、AI(人工知能)など、最近のITの進化に興味をもった人の来場も増やしたいと考えました」

一般社団法人日本自動車工業会広報室 主査 林 公子 氏

これまでのモーターショーの目玉といえば、自動車メーカー各社がここを晴れの舞台としてお披露目する新車やコンセプトカーの数々だった。もちろん現在もその楽しみが色褪せるわけではないが、テクノロジーというよりインフラやサービスに近い部分にも多くの関心が高まっているところに時代の流れを強く感じずにはいられない。十数年あるいは何年後かに振り返ったとき、おそらく多くの人が「2017年の第45回東京モーターショーが時代の転換期だった」とあらためて感慨に浸ることになるだろう。

いまや新しいモビリティの姿が求められるとき

いま世界の製造業はインダストリー4.0(第四次産業革命)と呼ばれるイノベーションの真っただ中にあり、「モノからコトへ」のパラダイムシフトが起こっている。その最前線に立つのが自動車産業なのだ。

現代のモビリティをサービスとしてとらえたとき、特に都市部においては慢性的なリソース不足、需要過多の状況が続いている。これが原因となって、交通集中による渋滞や遅延、燃料の浪費、事故といった問題が発生している。

加えて近年顕在化してきたのがドライバーの高齢化という問題だ。これまでのモビリティは、そのサービスの受給者が自ら免許を取得し、クルマを購入・所有し、運転するという自己完結型のライフサイクルのもとで発展してきた。しかし高齢化したドライバーはこのライフサイクルから脱落せざるをえない。

トヨタ自動車の「TOYOTA Concept-愛i」のように、AIで「人を理解する」運転機能を搭載した自動車は、まさに未来のモビリティ象徴だ

一方で人々のライフスタイルや価値観も大きく変遷しており、あこがれのクルマを所有したり、運転したりすることに対して、以前ほどの大きな夢は持たなくなっている。「若者のクルマ離れ」はその象徴的な現象だ。

先の林氏の言葉にもあったように、人とクルマ、社会とクルマの関わり方がどんどん多様化しており、いま改めてモビリティのサービスモデルやビジネスモデルを作り直すことが求められる時代を迎えているのだ。

顔認識や自身での重心移動をしながら、走行する自律型電動バイク「MOTOROiD(モトロイド)」などのように、自動車以外でも新たなテクノロジーも展示された

テクノロジーでさらに豊かになる未来のモビリティ社会

そうした観点から今回の東京モーターショーのエッセンスを紹介しておこう。取り上げるべきは、主催の日本自動車工業会自身が出展した「TOKYO CONNECTED LAB 2017」のブースだ。

自動運転の先に見えてきた「クルマがつながる」ことで実現する未来のモビリティが、我々にどんな新しい価値をもたらすのか。人とクルマ、社会とクルマのつながりをどのように変えていくのかを、来場者の参加型プログラムを通じてわかりやすく体験できるという趣旨のものである。

まず、「THE MAZE」というコーナーでは、コネクテッドカーによる自動運転や未来のモビリティ社会と自動運転の世界をVR(仮想現実)で体感できる、ゲーム型のコンテンツが展示された。最大30人の参加者がVRヘッドマウントディスプレイを装着してサイバー空間のコネクテッドカーに乗り込み、迷路に見立てた未来の東京を全員で走破しながら解き明かし、ゴールを目指すというものだ。

ゲーム仕立てではありながら、目線の動きによってコネクテッドカーを自由に操作(運転)することが可能だ。途中ですれ違った他の参加者と自動的に情報を共有し、各所に置かれた充電スタンドなどのインフラからも情報を得ているうちに、眼前のディスプレイに道路の全体地図や通行止めなどの道路状況がどんどん補完されていく。もちろん緊急車両や障害物を発見した際には、コネクテッドカーが自動的に停止したり進路を変えたりすることで事故を回避する。

TOKYO CONNECTED LAB 2017での企業各社の展示については、その名の通りテクノロジーによって人と機械、クルマ、社会などあらゆるものが「つながる」というコンセプトのもと、自動車メーカーはもちろん、他業種企業からも新たなモビリティを提示する多彩な展示が見られた。

たとえば、トヨタブースや日産ブースでは、現在注目を集めている自動運転技術に関する展示やデモや、車載機器とモバイルデバイスを連携させた最新技術などを紹介。ホンダブースでは、「家」と「クルマ」のつながりを新たな形で体現したコンセプトカーはそのコンセプト、外観ともに非常に印象的である。

 

家とクルマのシームレスなつながりを体現したホンダのコンセプトカー(写真左)。また、自動車のサイバーセキュリティに関する展示もまさに自動運転時代の象徴である(写真右:デンソーブース)

さまざまな出展社による多彩な出展内容と通じ、参加者はコネクテッドカーによってもたらされる近未来のモビリティ社会を“リアル”に感じることができただろう。

膨大なデータの発信を東京モーターショーはどう処理したのか

各種の展示とともに、日本自動車工業会が主催者として絶対に欠かすことができないのがプレスセンターの入念な環境整備だという。

プレスセンターは、10月25日、26日のプレスデーのみに限定して開設されたスペースだ。今回の東京モーターショーにもテレビや新聞、Webメディア、雑誌など国内外のメディアから1万人を超える記者やカメラマンが押し寄せた。これらの報道陣が最も頼りにしているのがこのプレスセンターなのである。会場内で取材した記事や写真、映像、音声などの膨大なデータはここから国内外に向けて発信されるのだ。

東京モーターショーでは、毎回1万人近くの報道関係者が来場し、リアルタイムに動画や画像記事などを国内外に発信する。そのネットワーク負荷は並大抵のものではない

だからこそ念には念を入れた準備と対策が欠かせないのである。「仮にネットワークに重大なトラブルが発生すると鮮度の高い情報が世界に伝わらなくなり、東京モーターショーそのものの価値が下がってしまいます」と林氏は話す。

だが、それにも増して懸念されるのがサイバー攻撃による脅威である。毎日のように標的型攻撃やランサムウェアなどサイバー攻撃に関する情報がメディアに取り上げられる現在、その対策は最重要項目である。

「万が一、プレスセンターがマルウェア感染の温床となり、パンデミックの発生源となってしまった場合、東京モーターショーというより日本の自動車産業全体の信頼が地に落ちてしまいかねません」(林氏)

このリスクを回避すべく日本自動車工業会がこの一大イベントのために毎回選んでいるのがウォッチガードのネットワーク製品であり、今回の東京モーターショーのプレスデーもトラブルを起こすことなく見事に乗り切った。

では、なぜウォッチガードのネットワーク製品が欠かせないのか。その続きは後編でお伝えすることにする。

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