労働人口の減少や多様な働き方への対応が求められる現在。経営者としては、社員のワークスタイル変革による業務の効率化で生産性を向上し、業績を伸ばしていきたいところだ。これらをいかに実現するか、頭を悩ませている企業も多いだろう。

業務効率化の取り組みとしては、リモートワークなどに代表される多様な働き方の実現に注目が集まっているが、既存のシステムを変えることで、業務フロー自体の改善を図るというアプローチもあるようだ。後者のアプローチに成功した一例が、2015年にバックアップシステムを見直し、業務効率化とワークスタイル変革に成功した遠鉄システムサービスの取り組みだ。同社の担当者に、変革の経緯とその成果を聞いたので紹介する。

遠鉄システムサービスの担当者3名に、バックアップ業務の効率化の経緯と結果を伺った

バックアップや作業の煩雑さを改善したい

遠鉄グループは静岡県西部を中心に、交通機関や百貨店、食品スーパー、不動産、保険、介護などの総合的な事業を行い、地域社会を支えている。そのなかで、グループ全体の情報システム関連事業を担うのが、遠鉄システムサービスだ。

同社はこれまで、仕事と家庭を両立しやすい職場環境を目指し、ノー残業デーの実施や育児休業などの制度を整えてきており、「働きやすさ」の推進には熱心だった。そうした企業努力の結果は、2008年度には厚生労働省から「子育てサポート企業」としての認定である「次世代認定マーク(くるみん)」の取得や、同年の厚生労働省、均等・両立推進企業 ファミリー・フレンドリー企業部門の静岡県労働局優良賞受賞などに表れる。

そんな同社が抱えていた課題のひとつは、グループ各社の基幹業務を支える仮想マシンのバックアップ作業とそれに伴う深夜業務にあった。同社が運用するシステムは多様で、バックアップの手順も同じではない。つまり、すべてを一律に同じバックアップ手順の対象にすることができなかったのだ。そのため、まずバックアップの対象とするシステムへの作業スケジュールを、その関連する企業のビジネスに影響が少ない日程から選び、そこで担当者が深夜に作業を実施する。担当者のスケジュールはシフト制となり、日中のシステム開発業務の生産性にも影響が出る。すべてのバックアップを完了するには、このような調整を、年間を通して繰り返すことになり、担当者はイレギュラーな作業日程で仕事をすることが多くなってしまうのだ。これでは「働きやすい」とは言い難い。

遠鉄システムサービス グループ情報システム部 ネットワーク開発課 係長 鈴木 拓郎氏

同社 グループ情報システム部 ネットワーク開発課 係長の鈴木 拓郎氏は当時を振り返り、「バスや電車は最終が0時30分、始発が5時00分くらいのため、ほんの4時間未満で作業をしなければならないという時間的な制約もありました」と語る。

ホテルの予約システムなど、24時間稼働させるべきシステムも、バックアップ時には止めることになる。そのため、バックアップの日程調整は難しくなり、社内すべてのシステムのバックアップを取り終わるには、ほぼ1年かかってしまう。その間、バックアップできないデータもあり、ビジネスリスクにもなっていた。さらに、災害対策としてバックアップテープを外部保管していたが、その運用にも、専門業者との運搬調整など、煩雑な作業が発生していた。加えて、もしテープが物理的に故障すれば、復旧作業に時間をとられ、作業量はさらにかさんでいった。

高速バックアップとシンプルになったシステム運用が業務を効率化

同社のこうした課題に対して、NECグループが提案したのが、ベリタステクノロジーズが提供するバックアップ製品であるNetBackupを用いたバックアップ運用の高度化だ。遠鉄システムサービスは、2015年11月より新しい仮想化基盤を導入しNetBackupによるバックアップ運用を開始した。

遠鉄システムサービス グループ情報システム部長兼ネットワーク開発課長 佐野 智史氏

同社のグループ情報システム部長兼ネットワーク開発課長である佐野 智史氏は導入の経緯をこう語る。

「仮想サーバの更新タイミングだったので、各社に付加価値のあるご提案を依頼しました。そのなかで、システム全体の運用管理とバックアップ作業の省力化を同時に実現できる点が大変魅力的であったので、NECグループの提案を採用しました」

システム更新の結果、フルバックアップが日次で完全に自動化され、バックアップデータの別拠点への複製も午前5時00分には完了するようになった。この結果、バックアップのためだけに行う深夜残業はゼロとなり、バックアップに伴った社内の他部門との日程調整も不要になった。おかげで担当者のスケジュールは平準化され、日中の生産性が大幅に向上した。

遠鉄システムサービス グループ情報システム部 ネットワーク開発課 係長 丸一 悟氏

実は、遠鉄システムサービスでは、採用時にはここまでの効果を想定していなかったという。「何かしらの深夜作業が残るのではないかと思っていた」と語るのは、同社 グループ情報システム部 ネットワーク開発課 係長の丸一 悟氏だ。あまりのスピードに「本当にバックアップできているのか」と驚かされたという。

遠鉄システムサービスは交通をはじめとした社会インフラに関わるシステムを提供している。バックアップ体制が整ったことで、有事の際に、より素早いデータ復旧を期待できるようになり、事業継続性の強化と、社会インフラの安定への一層の貢献を実現できた。導入時よりもマシンの数も増え、現時点ですでに22テラバイトを超えているが、今後想定されるデータ量増大への対応にも安心感を持っている。

「今はITなしではビジネスができません。遠鉄グループのITを運用している部門ですから、それが健全に運用できているということは、地域のお客様にきちんとサービスを届けることに寄与していると感じています」(佐野氏)

社員の生活も変化! 新たな業務へ取り組める環境も実現

業務の効率化は、社員の生活にも変化をもたらしている。まず、担当者の時間外労働時間は年間で100時間近く削減されている。加えて、トラブルが減ったことで運用以外の作業スケジュールは立てやすくなり、夜間作業の疲れもないことから、業務の生産性もパフォーマンスも上がっているようだ。

夜間作業が減り、日中作業の比率が増えたことで、他部署とのコミュニケーションも円滑になった

丸一氏は「夜間作業があったころは、疲れて週末を寝て過ごしてしまうこともありましたが、今はそれがなくなり、子供と公園に行くことが増えました」と語る。日常の業務でも、想定外の作業が減ったことで、会社が推奨する「残業時間の事前申告」にも正確に答えられるようになった。鈴木氏も趣味である旅行の計画を立てやすくなったそうだ。深夜作業の日を考慮する必要がなくなり、有給休暇の取得時期も、柔軟に選べるようになったという。

その日の残業予定時間を示す、残業カード。バックアップの効率化で、予定が正確になり、運用効果も見えてきた

このように、ワークスタイル変革の実現には、リモートワークをはじめとした、多様な働き方を可能にする取り組みを行う前に、既存の作業フローやシステムの見直しを行うことが必要なのではないだろうか。今後について佐野氏はこう展望する。

「運用が安定すれば、会社としては他の業務、特に開発に力を入れられるようになります。つまり、成長への歩みが早まるということです。今までは新しいシステムを開発するとき、本番環境でのテストに不安がありました。バックアップが完全でないと分かっていたからです。今では、バックアップされたデータに対して安心感があるので、その不安は全くなくなり、本番環境でのテストにも自信をもって臨めます。その結果、開発の質と効率は大幅にアップしました。システム開発にも野心的にあたれるようになり、本格的なリモートワークなど、働き方改革に直結するシステムの導入にも可能性が広がっています」

バックアップ作業の効率化は、社員の働きやすさの向上に加えて、新たなシステムの開発に取り組みやすい環境をもたらした。社員のワークスタイル変革にあたっては、遠鉄システムサービスの事例に学び、まずは現在の業務を見つめなおすことが重要なのではないだろうか。全体の効率化は、その先にあっさりと出来上がってしまうかもしれない。

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