次世代データセンターに求められる4要件

アイデアを思いついたらまず試してみて、大きな成果につながりそうかを見極める。かけるコストや手間はできるだけ抑えつつ、利用するデータは確実に保護したい──。近年、クラウドが普及するなか、ビジネス企画の現場ではそんな考え方が定着しつつある。

そうした傾向に拍車をかけているのが、デジタル化やデジタル変革といったトレンドだ。ビジネスとITが一体化しつつある現代において、すばやく柔軟に活用できるITインフラはそのままスピーディーで成長性のあるビジネスの基盤ともなる。逆に、ITインフラを制することができなければビジネスの成功も望めないといった状況だ。

では、そうした新しいビジネスを支えるために、企業のITインフラおよび次世代のデータセンターはどうあるべきか。長年提起されてきた近年のさまざまな議論のなかで、必要な要素はいくつかに絞られてきたようだ。ITインフラの設計や運用に詳しい、ネットアップのソリューションアーキテクト 長内 ゆかり氏はこう説明する。

「次世代データセンターを構築するうえで最も重要な点は『ビジネスの要求に即した貢献ができるかどうか』です。これはIT部門だけでなく、ビジネス部門であっても問題なくITを利用でき、その価値を最大限に引き出せることが重要だという意味合いです。そうしたITの利用を実現するうえでキーワードとなるのが、スケールアウト、運用の自動化、高品質なサービス、耐障害性の4つです」(長内氏)

スケールアウトや運用の自動化はパブリッククラウドを活用することでも実現できる。ただ、高品質なサービスや適切で柔軟な耐障害性の適用といった点は、インフラが手元にないことからパブリッククラウドではきめ細かな対応が難しいケースがある。ハイブリッドクラウド基盤の構築やネットワークの自律運用などに詳しい、シスコシステムズのシステムズ エンジニア 畝高 孝雄氏はこう解説する。

「インフラ自体を専有的に利用しつつも、パブリッククラウドが持つ柔軟性や拡張性といった特徴も併せ持つことにより、コストや品質、耐障害性を従来以上に高めていけること。また、コンテナやAPIによる自動管理といった最新技術への対応も柔軟に行えること。それが次世代データセンターの姿です」(畝高氏)

こうした次世代データセンターに求められる要件を満たしたソリューション。それが、ネットアップとシスコが今年6月に新ラインアップとして提供を開始した、統合インフラ「FlexPod SF」だ。

SolidFireを搭載した新ラインアップ「FlexPod SF」

FlexPod SFの最大の特徴は、スケールアウト型オールフラッシュストレージ製品「SolidFire」を採用したことにある。

長内氏は「FlexPodがこれまで提供してきた、事前検証済モデルとしての使いやすさ、拡張性の高さ、システムの自動管理などの特徴はそのままに、SolidFireが持つさまざまな機能のメリットを提供できるようになりました」と説明する。SolidFireが持つ特徴的な機能は、大きく4つある。

Flexpod SFは、次世代データセンターに求められる要件を満たす機能を搭載している ※クリックで拡大

ひとつめが、「QoS(Quality of Service)の保証」機能だ。SolidFireはワークロードごとにパフォーマンスを保証することができる。利用する際は、システム内でボリュームを作成するときに目的に合ったサイズを設定し、「Min」「Max」「Burst」という3つのQoSパラメータを設定するだけでいい。VVol(VMware vSphere Virtual Volumes)にも対応するため、VMごとにボリュームを作成してVMごとにQoSを設定することも可能だ。ワークロードに応じてパラメータを設定すれば、パフォーマンスの保証が自動で適用される。

2つめは「セルフヒーリング」という障害からの自己修復機能だ。これはSolidFireが特許を取得している機能であり、ドライブに障害が発生すると、システムはリビルドプロセスによってデータのコピーを再分散して、完全な冗長性を持ったシステムとして自動的にリストアされる。リビルドプロセスは5分ほどで完了(※)。ノードの障害についても、データのコピーが別のノード上に分散配置されるため、1つのノードに障害が発生しても、すべてのデータに継続してアクセスすることができる。

(※)データ量や使用方法、環境により所要時間は前後する可能性があります

3つめは、独自の「スケールアウト」アーキテクチャだ。データはクラスタ内のすべてのノード間で自動的に分散され、ノードの拡張によってパフォーマンスと容量利用率をリニアに向上させることができる。ノード間ではコントローラを共有せず、1U単位で柔軟に拡張させていくことができる。

4つめは、徹底した「自動管理」だ。SolidFireの設計コンセプトは「自動化を難しくする要因となる複雑さを排除する」こと。そもそもRAIDレスのアーキテクチャを採用しており、パフォーマンスの調整や負荷分散、階層化・優先順位付け・キャッシュの管理、ショートストローキング/オーバープロビジョニングなどといったすべてが自動的に管理される。また、REST APIによってあらゆる操作をプログラムで行うことができる。

FlexPod SFがスモールスタートとスケールアウトを実現

SolidFireが単体で持つ機能はFlexPodとして統合されることでさらに価値が高められた。まず、SolidFireを導入するハードウェアがシスコのUCSサーバベースになったことが大きい。サーバからネットワーク、ストレージまでのハードウェアがシスコ製で統一され、FlexPodとしてのネットアップとシスコの協業に基づいた事前検証からサポートまでの一貫した体制のもと、製品が展開されるようになる。これによりユーザーは、システム導入、システム構築と運用、システムの拡張やトラブルシューティングなど、さまざまな点で統合のメリットを享受できるようになる。たとえば「ハードウェアとしての管理・監視の方式がFlexPod SF全体で標準化することにより、導入から運用までのサイクル全体のシンプル化を図ることができる」(畝高氏)、といった細かな点からもメリットを実感できるのだ。

また、FlexPod SFとしてSolidFireがFlexPodのラインアップに加わることで、シスコとネットアップがFlexPod向けに提供するデザインガイドや構成のベストプラクティスに関するドキュメントを活用できることも大きなメリットだ。具体的には、Cisco Validated Design(CVD)と呼ばれる検証済み設計を解説するガイド「ソリューション設計ガイド」や、「FlexPod Design Guides(英語)」 というサイトがある。また、ネットアップが提供するNetApp Validated Architecture(NVA)を案内するサイト「FlexPod Validated Design」も有用だ。

長内氏は「FlexPod SFは、クラウド的な使い勝手を備えながらも、システムを手元におくメリットを最大限に得られるソリューションで、小さくはじめて必要となったタイミングで順次スケールアウトさせていくといった使い方に適しています。もちろん、ストレージをスケールアウトさせても、コンピュートを一緒に増やす必要はなく独立して拡張できるので、コストはスケールしないような設計です。またクラウドとのシームレスなインテグレーション手段も実装。管理はとても簡単で、誰でも使える基盤になったことを実感いただけるでしょう」と語る。

FlexPod SFを活用する大きなメリットとして、管理負担が大きく削減でき、運用が容易になる点があげられる ※クリックで拡大

また、畝高氏は「ハードウェアはハードウェアとして、今後も引き続き性能や安定性を支える基盤として重要であることに変わりはないが、これからのビジネスの差別化のポイントとしてはソフトウェアがより重要になっていく」と指摘。ソフトウェアデファインドといった言葉があるように、ソフトウェアの組み合わせによって柔軟性や迅速性など様々な価値が生まれるのだ。

「SolidFireがソフトウェアストレージとしてFlexPodラインナップに加えられたことは象徴的です。OpenStackやCisco ACIなどとの連携も含め、今後も引き続きFlexPodはさらに大きく発展していきます」(畝高氏)

FlexPod SFは、データセンター事業者のような大規模環境から、デジタルビジネスでPoCを繰り返すような一般企業まで幅広く利用できるソリューションだ。ビジネスに効く次世代データセンター基盤として注目すべきだろう。

FlexPodを提供する、ネットアップ、シスコシステムズ両社の担当者5名にお話を伺った(左から3人目がネットアップ 長内 ゆかり氏、左から4人目がシスコシステムズ 畝高 孝雄氏)

[PR]提供: