【特別企画】

移住・定住をせずとも地域の仲間になる – ローカルジャーナリスト・田中輝美と『ソトコト』編集長・指出一正が語る「関係人口」とは

1 「関係人口」は地域を応援する仲間

 
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2014年の安倍晋三政権で掲げられた「地方創生」。耳にしたことはあっても、実際に何が行われているのか、何が変わったのか実感できている人はそれほどいないのではないだろうか。実感が持てない理由の一つとして「移住・定住」のハードルの高さがある。地域に関わりたいと思っていても、簡単に移り住むという決断はできない。それが機会損失となってしまっているのも、事実だろう。

しかし、このハードルの高い「移住・定住」とは異なり、別の方法で地域と関わりを持つ「関係人口」と呼ばれる言葉がいま注目され始めている。今回は「関係人口」について取り上げている書籍『関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション』の著者である田中輝美さんと、「関係人口」にいち早く着目した雑誌『ソトコト』の編集長・指出一正さんにインタビューを敢行。まずは、著書の内容や「関係人口」について、田中さんにお話をうかがった。

田中輝美 (たなかてるみ)。ローカルジャーナリスト。1999年に山陰中央新報社に入社し2014年に独立。主な著書は『ローカル鉄道という希望-新しい地域再生、はじまる』など

田中さんにとっての「関係人口」は「仲間」

――今回、「関係人口」に関する著書を執筆するに至った経緯について教えてください。

田中 私が山陰中央新報社に在職時代から取材をしていた講座「しまコトアカデミー」の記録を残したいという要望をシーズ総合政策研究所(シーズ総研)の藤原社長から受けたのがそもそものきっかけです。

――「しまコトアカデミー」は2012年から東京で始まった島根県の講座で、離れていても島根や地域づくりを学べるという、全国的にも稀有な講座ですよね。

田中 はい。「しまコトアカデミー」はまさに「関係人口」を生んできた講座だと感じていたので、本のタイトルにも「関係人口」という言葉を使いました。

――「関係人口」というのは普段あまり聞きなれない言葉です。これは、どういう意味の言葉になるのでしょうか?

田中 「住んでいなくてもその地域を応援する仲間」だと私はとらえています。例えば、地域の食材を東京に取り寄せてみんなで味わうイベント「ハツモノ! 倶楽部」を開催している「しまコトアカデミー」の卒業生もいます。そのほかにも、ふるさと納税や二地域居住をする人なども「関係人口」と言ってよいと思います。

――その地域に住む、もしくはその地域で活動をしていなくても「関係人口」と言ってよい?

田中 むしろ住んでいなくても地域に関わる人が「関係人口」です。離れている東京で暮らしていても、先ほど上げたような活動をしている方々は地域のことを応援してくれる仲間だと思います。「しまコトアカデミー」の卒業生には、他にも東京にいながら地域のブランディングを手伝っていたり、東京で地域のことについて考えるイベントを開いたりなど多様な形で「関係人口」となっている方がいます。地域との関わり方にはグラデーションがあるんですよね。

――正直、そういう考え方や言葉があるというのは知らなかったですし、思ってもみないことでした。だからこそ、東京で働きながらも「地元に貢献したい、地域の役に立ちたい、でも移住はできない」と考えている人たちにとって救いの言葉になる気がしています。

田中 そういっていただけると嬉しいです。やはり「移住」や「定住」はどうしてもハードルが高く、すぐには決断できないことだと思います。そのハードルの高さから、結果的に地域に関わりを持つ機会を失っている人は決して少なくないんですよね。一方、人口が減少している現在の日本で、各地域が移住者・定住者だけを求めて競争していては、不毛な取り合いになってしまいかねない。だからこそ、「関係人口」がこれからは重要になってくるのではないかと思っています。

――今回の著書のなかにはご紹介いただいた例以外にも「関係人口」の実例が書かれていました。色々な関わり方ができるということが著書を読んでよく分かりましたが、「関係人口」が増えることで地域はどのように変わっていくと考えられますか?

田中 過疎地に代表されるようにこれまで人口が減り続けてきた地域では、暮らしている人々はどうしても「仕方ない」というような「諦め」が強くなってしまいがちです。それを暮らしている人々だけで「もっと頑張れ」といっても限界があると感じています。そこで、力になってくれるのが「関係人口」です。そこに暮らしていなくても、その地域をどうにかしたい、応援したいという仲間である「関係人口」が増えれば、暮らしている人々も勇気付けられ、地域が抱えている、暮らしにくいというような課題解決の手助けにもつながると考えています。

――仲間ができることで、暮らしにくくなっている地域が再生できるかもしれない?

田中 そうですね。別に東京が好きで、東京に暮らしていてもいいのです。地域のことを思って何かしたいという想いがあって関われば、きっとその地域の力になると思います。

――ではその「関係人口」についてより詳しく書かれている今回の著書をどのような方々に読んでほしいとお考えでしょうか。

田中 地域のことをなんとかしたいと考えている方々、地域を元気にしたいと考えている方々にぜひ読んでいただきたいです。また、自治体の方や地域に暮らす方々にも手に取っていただき、「関係人口」という考え方があるということを知ってもらえると嬉しいです。この本を読んで気軽に地域に関わる方々が増えればと願っています。


著者である田中さんには「関係人口」について、またこれからの地域の在り方についてお話をうかがった。次のページからは田中さんのお話のなかにも出てきた「しまコトアカデミー」のキーマンである雑誌『ソトコト』の編集長・指出一正さんに「しまコトアカデミー」について、また「関係人口」についてお話をうかがった内容を紹介する。

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目次
(1) 「関係人口」は地域を応援する仲間
(2) 「関係人口」によって変わる地域の変化
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