自動車業界では「自動運転(Autonomous)」を新しいキーワードとして、各社が実現に向けて技術開発を進めています。では、ストレージの自動運転はどこまで進んでいるのでしょうか?

このブログで知ってほしいこと

  • オールフラッシュストレージのメーカーのほとんどが"Autonomous"(自動運転)という用語を使い始めています
  • 自律的な操作では、複数のコンポーネントが連携して動作する必要があります
  • エンタープライズクラウドには自律的な操作が不可欠です

ストレージ業界は現在とても活気にあふれています。私たちは当然のことながら競合他社の動きに細心の注意を払っています。そこで、ここ数年言われ始めてきた用語として「Autonomous」が気になっています。自動運転は、まず自動車業界で開発が進んでいます。ティントリ本社のあるシリコンバレーでは、Googleの無人カーを見ることもしばしばです。この自動運転車はカメラやコンピュータによってナビゲートされる車です。

では、オールフラッシュストレージでは、Autonomousがどこまでできているのか確認してみましょう。

何年もの間、すべてのフラッシュストレージメーカーは、性能の話しかしてきませんでした。それが突如としてAutonomous、すなわち自律運用の話を始めたのです。なぜでしょうか?? 理由は簡単です。企業はクラウドとの連携機能を求めており、それはハードウェアでは対応できないからです。クラウドと連携するには、ハードウェアに付随するソフトウェアが整備されていなければならないのです。

そして、エンタープライズクラウドを構築するときに、このAutonomousはとても重要となります。主な理由は拡張性に関係するからです。クラウドを考えているならば、仮想マシンの数を数百から数千に突如として増やすことも考えられます。環境が拡張されるにつれて、管理上の負担が直接的に増えますし、それに掛かる間接的な費用も発生します。ここで、オールフラッシュストレージがAutonomousだったら、仮にペタバイト級に拡張されても運用管理が自動になるので、管理工数は変わりませんね。

ここで気をつけていただきたいのは、ストレージメーカーが話す自律運用の話を鵜呑みにしてはいけないということです。なぜかというと、ストレージでいうAutonomousは、ストレージだけでできることではないからです。自律的な操作は機能ではありません。これは、複数のWebサービスが連携して行う結果なのです。

自律的な操作を実現するには、まずは適切な抽象化を行うところから始めます。抽象化は、インフラストラクチャを運用するときの粒度レベルで考えます。オールフラッシュストレージでいえば、例えばLUN、ボリューム、または個々の仮想マシンを粒度のレベルとします。ティントリでいえば、この粒度レベルは個々の仮想マシン単位です。もしコンポーネントが適切な抽象化をサポートしていない場合、自律的に操作することはできません。LUNやボリュームなど、従来のストレージの無関係な抽象化の場合もそうです。

ストレージスタックに適切なレベルの抽象化を持たせたあとは、パフォーマンス、予測可能性、制御性、およびネイティブポリシーベースの管理を実現できる、ほかのWebサービスが必要になります。

一般的なオールフラッシュストレージは高い性能を持っていますが、以下の要素が欠けています。

  • 予測可能性:一般的なオールフラッシュストレージはQoSを自動化できません。また仮想マシン単位でQoSを設定できません。仮想マシンを分析して、VMとワークロードをストレージプール内の適材適所に配置することができません。
  • 制御:一般的なオールフラッシュストレージは仮想マシンの性能を保証したり、逆に性能を制限したりする機能を持っていません。特にストレージのリソースが枯渇した際には、パフォーマンスの最大値と最小値を制御することが不可欠です。
  • ネイティブなポリシーベースの管理:複数のハイパーバイザーが稼働するような環境においては、一般的なオールフラッシュストレージの場合、運用ポリシーを自動適用するような機能を持っていません。

これを車に例えると、ティントリは自動運転機能を搭載したリムジンカーのようなものです。リムジンカーに乗る人はそれぞれではありますが、その人に合った運転技術で、その人の要望に沿った道を進むことができ、目的地の目の前まで連れて行ってくれます。

一方、一般的なオールフラッシュストレージは路線バスだと想像してみてください。路線バスは、その地域のメジャーなルートしか通りません。個々の乗客に最適化されていないので、バス停から遠くても仕方ありません。一番メジャーなルートを通ります。単一のルートに従わなければならない見知らぬ乗客グループになって、みんなでバスを共有します。もちろん自動化は先の話であり、現在の路線バスで自動化するには、アクセルに石でも乗せて踏みっぱなしにするくらいですね。でもそのようなことは誰も望んでいません。キアヌ・リーブスやサラリーマン金太郎が乗っていれば話は別かもしれませんが……

最後に話をまとめますと、これからより多くのオールフラッシュストレージメーカーからAutonomousについての話を聞かされるようになると思いますが、それを実現できるかどうかPoCをするまでもなく、抽象レベルがボリュームとLUNなのか、はたまた個々の仮想マシンであるかを確認してみてください。それがボリュームまたはLUNの場合、そのストレージは路線バスです。

Author

ティントリジャパン合同会社 マーケティング本部
マーケティング本部長 羽鳥正明

外資系ITベンダにてPC、サーバーのプロダクト・マーケティングを8年間担当。その後Linux/OSSビジネス関連企業にてマーケティング全般をマネジメントしたあと、ストレージ業界に身を投じ、EMCやDellでエンタープライズ向けストレージのプロダクト・マーケティングを歴任し、現在は仮想化向けストレージのティントリにてマーケティングならびにPR活動全般を一手に引き受ける。

また、2015年4月より、一般財団法人ストレージネットワーキング・インダストリー・アソシエーション日本支部(SNIA JAPAN)にて運営理事として参画。

コンタクト:info.japan@tintri.com

このブログで知ってほしいこと

  • オールフラッシュストレージのメーカーのほとんどが"Autonomous"(自動運転)という用語を使い始めています
  • 自律的な操作では、複数のコンポーネントが連携して動作する必要があります
  • エンタープライズクラウドには自律的な操作が不可欠です

※本コラムは、ティントリジャパンに掲載されたブログ記事より転載したものです。

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