【特別企画】

IoTで成功するために必要とされるものとは? 「IoT塾2017 東京」レポート

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が多様なメディアで取り上げられるようになってからかなりの時間が経ったが、「IoT」という言葉だけが一人歩きをしてしまい、いまだに"IoTで何ができるのか"を理解していない企業も数多く存在する。センサーやデバイスといったさまざまな"モノ"がインターネットにつながると聞いても、それが仕事の現場にどう活かせるのかがわからなければ効果的な導入はおぼつかない。そのため、多くの企業は、実際にIoT導入に取り組んだ事例を求めている。

帳票やBIツールなどの企業向けソリューションを数多くの企業に提供しているウイングアーク1stが開催するセミナー「IoT塾2017」では、IoT導入を進めている企業を登壇者として招き、"仕事の現場"におけるリアルな声を届けている。同イベントは、8月10日・東京会場での開催を皮切りに、全国4都市で開催。今回は盛況のうちに終了した東京会場でのセッションの模様を紹介する。

日本におけるIoTの現状と未来への展望

8月10日に東京・秋葉原「アキバホール」にて開催された「IoT塾2017 東京」では、IoTの導入に取り組んでいる企業のキーマンが登壇者として招かれ、来場者は4つのセッションを通じてIoT導入の生の声を聞くことができた。

最初の登壇者は、日刊工業新聞社 デジタル編集部 部長の藤元 正氏。日刊工業新聞電子版でIoT関連の連載記事を手がけ、経済産業省の公報誌「METI Journal」の制作にも関わる藤元氏は、経済産業省が日本の産業が目指すコンセプトとして打ち出す「コネクテッド・インダストリーズ」への理解も深い。今回の特別講演では、「モノづくりIoTの未来とは~「つながる工場」を超えて~」と題し、日本と欧米でのIoT活用の違いや、日本の製造業におけるIoT導入の強み、今後のキーポイントなどを、IoT導入企業の事例を交えて語った。

日刊工業新聞社 デジタル編集部 部長 藤元 正 氏

日本の製造業では、すでにIoTの導入によって「つながる工場」を実現している企業も増えてきているが、現状の機器にセンサーをつけて「つながる化」を進めるような手法だけでは、工場などの現場によってIoT化の導入手順はバラバラでガラパゴス化。これではIoTの導入が普及していかないため、効率的な導入を可能とするための「標準化」を進めるのが重要と藤元氏。IoTを含む今後のデジタル革命について、ソフトウェア中心のバーチャルな世界から、ハードウェア中心のリアルな世界の方向に向かっており、日本が得意とするハードウェアの領域が重要になってくると締めくくった。

IoT化された工場が実現するフレキシビリティ

続いて登壇したのは、島根富士通 相談役の宇佐美 隆一氏。「IoT活用によるパソコンの超フレキシブル生産システムの実現」と題し、同社の生産現場におけるIoT導入への取り組みを紹介した。

島根富士通 相談役 宇佐美 隆一 氏

同社は、ノートPC やタブレットなど富士通製デバイスの製造を手がける日本最大の生産拠点だ。膨大な数の製品の製造・出荷をスマートに行うために、製造工程におけるIoTの導入を積極的に進めている。受注生産品の割合が高く、受注生産の約90%が10台以下のロットという同社では、変種変量に応じて効率的な製造を行う「製造フレキシビリティ」を実現するためにIoT導入に取り組んだという。製造ラインのすべてにIoTを導入して生産情報、位置情報、稼働情報などのデータを収集し、それを製造工程に活用することでフレキシブルな製造に対応できるようになったと宇佐見氏は語る。

そのほかにも、製品設計を行う際のシミュレーションや工場内に設備を導入する際の事前検証にもIoTを活用し、大きな成果を得ているという。講演では工場内にIoTが導入されている様子を写真や動画と使って紹介。従業員の負担軽減や作業理解度の向上にも導入成果が見て取れるなど、"IoTで何ができるのか"が明確に見える導入事例となっていた。

IoT活用に必要なのは「可視化の意味や目的」を明確にすること

3人目の登壇者は、ウイングアーク1st 営業本部 BI戦略担当部長 エバンジェリストの大畠 幸男氏。「IoTで鍵を握る『可視化』の実践」をテーマにセッションが進められた。

ウイングアーク1st 営業本部 BI戦略担当部長 エバンジェリスト 大畠 幸男 氏

IoTで収集したデータは、まず可視化を行い、それを分析することでビジネスに活かしていく。重要なのはIoTのデータを可視化する意味や目的を明確にすることだと大畠氏は語る。

「単にデータを可視化するのではなく、そこから"気づき"を得ることが重要です。気づきから改善のためのアクションにつなげていかなければ意味がありません」(大畠氏)

IoTのデバイスからあがってくるのは、リアルタイムなデータとなるが、そのデータを可視化してビジネスに活用するまでの流れがリアルタイムになっていないケースが多いという。そこで重要となるのが「モニタリング環境」。データをモニタリングすることで、IoTのデータをリアルタイムでアクションにつなげることが可能となると大畠氏は言う。

講演では、製造業や運輸・物流業で実際にIoTの導入に取り組んでいる企業の事例を取り上げ、「IoTによるデータ収集」→「データの可視化」→「分析」→「業務改善のためのアクション」までの流れをわかりやすく解説。実際にIoTのデータをリアルタイムに確認するデモも行われ、IoTの導入を検討している来場者からの注目度も高いセッションとなっていた。

IoTで成功するための秘訣とは?

最後のセッションは、IoTに深く携わる企業の中で、現在もっとも勢いがある4社の登壇者によるパネルディスカッション。「IoT・AI時代を駆け抜ける、イノベーション集団のつくりかた」をテーマに、"協創"によるイノベーションを生みだすビジネスモデルを提供するウフル IoTイノベーションセンター所長の八子 知礼氏がモデレーターとなり、MVNOとしてデータ通信SIMを提供するソラコムの松下 享平氏、IoTに特化した深層学習技術を提供するPreferred Networksの奥田 遼介氏、IoT/AIを組み合わせた「リユースPoC」を提供するMAGLABの武市 真拓氏のパネラー3名と幅広い議論が交わされた。

ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長 八子 知礼 氏

ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト 松下 享平 氏

4社はそれぞれIoT分野に深く携わっているが、共通するのは1社で進めるのではなく、多くの企業、組織と連携してプロジェクトを実現していく企業であることだ。自社の技術だけに固執していては、IoTを活用してイノベーションを生み出すことはできない。他社の持つ技術と積極的に連携していくことが、成功への秘訣だという。

「数多くのパートナー様と一緒に仕事をしてきて感じるのは、自分たちで何ができるのか、そして自分たちでできないことを誰にやってもらえるのかを把握することが重要だということです」(松下氏)

Preferred Networks CTO 奥田 遼介 氏

MAGLAB Founder/Magnetic Producer 武市 真拓 氏

現代のビジネスにおいて重要な要素であるスピード感も、複数の企業・組織と連携することによって実現できると、3名のパネラーは口を揃える。本来ならば数年かかるようなプロジェクトを、他社の技術を取り入れることによって半年ほどで実現できた事例など、IoTの最前線にいるパネラーたちの生の声を聞くことができ、来場者にとって有意義なディスカッションとなった。

今回のセミナーでは数多くの先進事例が紹介され、IoTはすでにバズワードではなく、企業のイノベーション創生やスピード感のあるビジネスモデルの構築を強力にサポートしてくれる技術として、日本社会に溶け込みつつあることが体感できた。同イベントは名古屋、大阪、福岡でも開催され、それぞれの会場でIoTに積極的に取り組んでいる企業の事例講演などが行われた。

[PR]提供:ウイングアーク1st



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