1949年の創業以来、業務用酒類の卸売を中心にビジネスを展開している小倉。日本酒、ワイン、焼酎などの酒類以外に、顧客である飲食店の要望に応えるかたちで乾物や調味料、洗剤、自社ブランド商品など次々と取り扱いの幅を拡げ、現在その商品点数は約20,000点にも及ぶ。配送は関東圏に設けた11箇所の拠点で1都3県をカバー、企業間のネットワークを利用して日本全国への配送も実施している。

小倉 ICT推進部 次長 戸津 剛氏

小倉では業務の効率化を図るために営業部門にiPadを、配送センターにスマートフォン(Android)を導入し、それらの端末管理にMDM(Mobile Device Management/モバイルデバイス管理)ツール「MobiConnect(モビコネクト)」を採用している。本稿では、モバイルとMDMツールそれぞれの導入経緯や効果を、小倉 ICT推進部 次長 戸津 剛氏に聞いた。

緩やかな利用制限とMDMで、タブレットの利用を促進

2011年以前、就業時間の多くを外回りに費やす小倉の営業部門にとって、メールや顧客からの注文を社外で見ることができず、頻繁に社内スタッフと電話で連絡を取り合わなければならないことが課題だった。そうした課題を解消するために、同社では2011年にiPadを導入し、営業先にいても情報を確認できるようにすることを決めた。戸津氏が導入当初に懸念したのは営業スタッフが積極的に活用してくれるかどうかだったという。

「端末を貸与しても『壊してしまうかもしない』と萎縮して使わず、デスクに置いたまま外出してしまうのでは意味がありません。まずは利用を進めてもらうために、厳しい利用制限はせず『どんなふうに使ってもいい』と言って渡しました。仮に端末を紛失、破損しても、iPadのレンタル契約を結んでいる通信会社の保証でカバーできますが、怖いのは紛失した端末から顧客情報や社内情報が流出してしまうことです。これを防ぐために当初は通信会社が提供するMDMを採用して、遠隔操作でワイプ(端末のデータ消去)できる環境をつくりました」

営業部門に導入されたiPadでは注文やメールの確認のほか、カタログアプリでメーカー各社のカタログを閲覧することができる。

「営業は大きくて重いカタログを何冊も持ち歩くことが多かったのですが、アプリを入れてからは負担を減らすことができています。またお客様から商品について聞かれた際、以前は『持ち帰って調べてきます』とお答えしなければならなかったような詳細な内容も、カタログやインターネットを使ってその場で調べて、即答できるようになりました」

外出先でも情報を取得できる利便性によって営業現場でのiPad活用は進み、社内スタッフが営業からの問い合わせ電話に追われることも少なくなっていったという。

遠隔指示の確実性を求め、MobiConnectに乗り換え

しかし利用をはじめてしばらくすると、情報の安全を担保するために採用したMDMに不安要素があることがわかってきた。当初採用したMDMは、管理コンソールから端末にワイプ指示を出しても実行結果がわからない仕様だったため、紛失時、本当に安全が保てているのかを確認する手立てがなかったのだ。こうした不安を抱える中、とある展示会で出合ったのがインヴェンティットによって開発・提供されているMDM「MobiConnect」だった。

MobiConnectは多彩なセキュリティ機能で高い評価を得ているサービスで、もちろんiOSの強制リモートワイプ機能も備えている。ワイプ指示の実行結果は管理画面で確認できるため、余計な不安を抱え続ける必要はない。そのほかにもユーザーがプロファイルを削除できない独自の仕組みや、ユーザー権限を無視した動作を可能としてしまう不正改造(JailBreak/脱獄)を検知する機能など、不正利用への対策が施されている。

小倉では数台のiPadでMobiConnectを試用し、すぐにMDMの乗り換えを決めた。戸津氏は「管理側から出す指示が強力に実行されること」が、採用の大きなポイントだったという。2016年にiOS9.3に「紛失モード」が搭載された際には、スピーディに対応するなど、MobiConnectは安全性に対するさらなる機能強化を続けており、モバイルを活用する企業に対し安心感のあるサービスを提供している。

スマートフォンとアプリで配送作業の改善を実現

2015年には営業部門に加え、配送センターでもモバイル活用による業務効率化がスタートした。小倉では以前から、配送車が走行したルート情報を車載デバイスに蓄積し、配送経路の見直しなどに利用していた。しかし情報が車両に紐付いているため、誰が乗務していたのか、どのように時間を使っていたのかといった詳細まではわからず、効率化に役立てるのは難しかった。そこで車載デバイスから、既製の動態管理アプリを入れたスマートフォン(Android)を配送担当者それぞれに携行させる方法に変更した。このアプリではどんなルートを走っているのか、配送担当者がどこでどのくらいの時間を要しているのかが、管理画面にリアルタイムに表示される。

「詳細なデータを取ることで、時間の使い方を可視化して改善に役立てようというのが目的です。ちょうど『働き方改革』が話題になりはじめた時期でもあり、コンプライアンス強化にもつながると考えました」

この動態管理アプリの導入で、当初の目的だった「時間の可視化」を実現できただけでなく、ベテラン配送担当者が経験から得た「最短の巡回順」をアプリに表示させて新人の配送業務をサポートしたり、メッセージの配信機能により全員で交通情報を共有ができたりするなど、他にもいくつかの効果が上がっているという。またリアルタイムな位置情報、配送状況を管理側で把握できるため、顧客から問い合わせがあった場合には、予想到着時刻をほぼ正確に回答できるようにもなった。2017年からはスマートフォンと携帯用のBluetoothプリンタをつなぎ、配送現場での伝票発行を実現。配送業務はいっそう効率化している。

配送担当者は、完了の報告などもスマートフォンから行っている

"ひとり情シス"でも作業は円滑! さらなるモバイル活用にも意欲

配送部門で使われているAndroid端末の管理にもMobiConnectが活用されている。MobiConnectはiOS、Androidのほか、Windows、macOSの各種OSに対応しており、小倉のように部門によって利用するデバイスのOSが異なる場合でも一元的に管理することができる。

配送部門ではセキュリティ確保だけでなく、アプリ配信にもMobiConnectが役立てられている。同社が採用した動態管理アプリは頻繁にバージョンアップが行われるが、システム管理側で更新パッケージをダウンロードし、MobiConnectで一斉配信することで、70台以上あるスマートフォンのアプリを常に最新の状態に保てている。小倉のシステム管理担当者は戸津氏一人だけだが、それでも更新作業に支障が出ることはないという。小倉では今後もモバイル活用による業務効率化を推進していくと戸津氏は語る。

「現在、営業がすべての業務をiPadでこなすことができるように検討しているところです。注文やメールの確認、カタログ閲覧、顧客管理、日報の作成・提出などに加え、見積作成や在庫検索なども外出先で行えるようにすることで、場所を選ばず仕事ができるようになります。これが実現すれば、モバイルはいま以上になくてはならない存在になり、同時に働き方は劇的に改善するでしょう。そのために今後もMobiConnectには、いっそう強力にサポートしてほしいと考えています」

小倉本社にはテストキッチンを設え、顧客(料飲店)のメニュー開発もサポートしている

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