【特別企画】

『逃げ恥』から一転、星野源が重いテーマに挑む - 『連続ドラマW プラージュ ~訳ありばかりのシェアハウス~』

3月中旬の発表から、ずっと放送開始を待っていた『連続ドラマW プラージュ ~訳ありばかりのシェアハウス~』(WOWOW、毎週土曜22時、8月12日スタート、第1話無料放送、全5話)。そして幸運にも、放送前に第1話を見ることができた。

率直に言うと、「星野源が『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の次に選んだのが納得できる」という力作だった。正確に言うと、『逃げ恥』の大ヒット以前から同作への出演は決まっていたようだが、「平匡さん」からの見事な変わり身を見せている。

星野源が「平匡さん」の次に選んだ役柄は……

「主人公が覚せい剤を打つ」衝撃の幕開け

まずは主なストーリーを挙げておこう。

旅行代理店の営業マン・吉村貴生(星野源)は、女性にフラれた憂さ晴らしで泥酔し、よく分からないまま覚せい剤を打たれてしまい、逮捕される。前科者となった上に、部屋が火事になり、仕事と住む場所が消失した貴生は、執行猶予中でも入居できるシェアハウス「プラージュ」に身を寄せた。しかし、そこは「住人全員が訳ありの前科者」で、さまざまな騒動に巻き込まれていく。

まず「主人公が覚せい剤を打ち、逮捕される」という冒頭の展開から驚かされた。まさにWOWOWのドラマらしいセンセーショナルな幕開けと言える。そこから住人たちの苦悩と再生が描かれていくのだが、冤罪事件をめぐるミステリー要素もあり、最後まで目が離せない作品になりそうだ。

原作は誉田哲也の同名小説で、『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)、『ジウ』(テレビ朝日系)で分かるように、重くハードな世界観が最大の魅力。例外に漏れず『プラージュ』も重くハードなのだが、そこはWOWOW。注射針で麻薬を打つシーンも、住人の女性が売春するシーンも、まったくちゅうちょすることなく描き切っている。

しかし、当作は単に重くハードというわけではなく、ハートウォーミングな人間ドラマになるだろう。

執行猶予中の吉村貴生(星野源)を筆頭に、壮絶な過去で心と体に傷を持つ小池美羽(仲里依紗)、怪しげな動きを見せる正体不明の野口彰(眞島秀和)、昔の男との因縁から逃れられない矢部紫織(中村ゆり)、ある事件で恋人と夢を諦めた中原通彦(渋川清彦)、殺人罪で服役しながらも再審請求をした加藤友樹(スガ シカオ)など、プロフィールは重くハードだが、どこか脱力感を抱かせるキャラがそろっていて、実際笑いを誘うシーンもある。

さらに、脚本・演出のテンポがいいから、それほど重さを感じない。ちなみに1話は、貴生が罪を犯して、「プラージュ」へ向かい、住人たちと出会うまでの展開が流れるように進んでいった。しかも、地上波のように2か月半~3か月間のサイズに引き延ばすことはなく、5話完結だから「アッという間に終わる」という感覚になるだろう。だから社会派の作品であるにも関わらず、どこかほどよい軽さを感じるのだ。

星野源自身のパーソナリティが随所に

世間的に「今作最大の注目」と言えるのは、やはり『逃げ恥』後、初の連ドラ出演となる星野源で間違いない。星野自身、「自分が演じる登場人物史上、最もだらしなくてダメな人(笑)」「『この人苦手だなあ』と声に出しながら読んでいました」と語る貴生は、ある意味失礼ながら、まさにハマリ役なのだ。

ただ、「でも3話あたりからやっとその魅力が分かるようになり、妙に好きになってきている自分がいます」とも語っているように、視聴者も貴生に愛おしさを感じるのではないか。もちろん脚本・演出の出来もあるが、根っこの部分は心地よく浮遊しながら生きるような星野のパーソナリティによるものだろう。

共演での注目は、石田ゆり子。当作では、訳ありの前科者たちを優しく受け入れる「プラージュ」の心優しきオーナー・朝田潤子を演じている。特筆すべきは、カフェを営むだけでなく、住人たちに食事を振る舞うシーン。潤子の料理に愛情が込もっているからこそ、視聴者にとっても癒しを感じるシーンとなっている。

もう1人、ふれておかなければいけないのは、「これまでドラマのオファーはすべて断っていた」というスガ シカオ。デビュー20周年で星野や石田との縁もあって快諾したというが、「民放ドラマとは全く違って面白い」「本当に細かいところまで作り込まれている」と語るように、初演技でWOWOWを選んだところが、いかにも職人肌のスガ シカオらしい。

「プラージュ」に込められた深い意味

地上波のドラマは『相棒』(テレビ朝日系)のヒット以降、犯罪とその解決をドラマティックに描く作品を追求している。一方、当作は「罪を犯した人々がどう生きていくか」にクローズアップ。このような切り口は、かつて何度か描かれてきたが、シェアハウスという現代のフィルターを通すことで、よりタイトでデリケートな人間関係を描くとともに、群像劇として魅力をも高めている。

だから前科者の登場人物たちが、“向こう側”の人物ではなく、「近所のシェアハウスに住んでいるんじゃないか」という絶妙なリアリティを感じてしまう。無職となった貴生が「プラージュ」1階のカフェで働いている姿を見て、「もし店員に彼のような犯罪歴があったら、あなたはどう接しますか?」と言われているような気がするのだ。

ちなみに、「プラージュ」はフランス語で「浜辺」という意味。潤子の営む「プラージュ」は、海と陸の境界線をなくす浜辺のような存在ということだろう。不寛容で排他的なムードが漂う現在社会で、あなたはどんな立ち位置を取るのか。極めて現代的な問いかけをされているのかもしれない。

「過去の罪から再生できるか」という大テーマに加え、住民たちの軽快なやり取り、食事シーンの癒し、セクシーなサービスカットなどのスポット的な楽しみも多彩。「土曜の夜にお酒を飲みながらゆったり見たくなる」ような贅沢な大人のドラマなのだ。

ドラマフリークの中で「WOWOWの連ドラは面白い」という印象が定着して久しいが、『Hulu』『Amazonプライムビデオ』『Netflix』など動画配信サービスの登場で、有料連ドラの競争は熾烈になりつつある。

現段階では「連続ドラマW」で10年の歴史を持つWOWOWが、質量ともに圧倒しているが、必然的にチャレンジングな作品が多くなるだけに、好みと合わないものもあるだろう。しかし、その点『プラージュ』は誰が見ても楽しめるエンターテインメントとして成立していた。だから星野源のファン以外にも、安心しておすすめできる。

⇒『プラージュ』以外にも8月のWOWOWは面白い番組が目白押し!!詳細はこちら

木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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