情報教育端末としてiPadを利用するうえで、その安全かつ効率的な導入・運用・管理をサポートするのが、オプティムのモバイル端末管理(MDM)ソリューション「Optimal Biz」だ。Apple社が提供する教育機関専用のプログラム「Apple School Manager」と連係することで、子どもの考える力を引き出すICT授業が実現するという。今回、そのソリューションを採用し、ICT教育を行っている関西大学初等部を取材した。

iPadを徹底的に活用し、考える力を育む初等教育

関西でも指折りの私立大学として知られる関西大学は、2010年に高槻ミューズキャンパスを開設。同時に小中高と12年間一貫教育を行う初等部・中等部・高等部を開校した。なかでも初等部では「思考力の育成」に力を入れており、独自の「ミューズ学習」が導入されている。

「ミューズ学習」とは「頭の使い方」を学ぶ授業であり、「考えることを考える」学習を年に12時間程度行う。この授業で子どもたちは「ベン図」「Xチャート」「コンセプトマップ」「ボーン図」「ピラミッドチャート」「PMIシート」などの6種類のツールを、大人顔負けに使いこなしながら思考力を高めていく。

「本校ではミューズ学習以外の教科においても、考えることを重視した授業を実施しており、子どもたちの思考を支援する道具としてiPadを導入しています」と、初等部で情報教育主任を務める堀 力斗 教諭は、教育の現場における情報ツールの位置付けを語る。

同校では、コンピュータをノートや鉛筆のようなツールとして捉えており、小学1年生の段階からiPadを普通に使う。5年生になると全員がiPadを個人購入し、学校での授業や家庭での学習に活用。校内には無線LANが張り巡らされていて、授業はiPadの活用を前提として組み立てられる。

関西大学初等部 情報教育主任 堀 力斗 教諭

子どもたちが使うiPadの管理用に採用されたのが、オプティムのモバイル端末管理(MDM)ソリューション「Optimal Biz」だ。これはiOS9.3以降の教育向け機能に対応しており、「Apple School Manager(ASM)」(※1)と連係する。ASMを学校の名簿データに関連付ければ、児童一人ひとりにManaged Apple ID(※2)が割り当てられ、児童はiCloud(※3)、iTunes U(※4)、Shared iPad(※5)にアクセス可能。教育上望ましくないサイトなどを閲覧することのないようオプション機能の「Optimal Biz Web Filtering Powered by i-FILTER」も採用されており、学びのツールとしてiPadを、自由にしかも安全に使えるよう万全の体制が整えられている。

※1 Apple School Manager(ASM)
学校でiPadを利用するために必要な機能が揃った、教育機関専用のポータルとしてApple社が提供するプログラム。MDM(モバイル端末管理サービス)と連係することにより、教育現場でiPadを活用するうえでのさまざまな課題を解決してくれる。
※2 Managed Apple ID
メールアドレスの登録を必要とせず、すべての教員、子どもたちに一括生成することができる、学校用のApple ID。
※3 iCloud
Apple社が提供する、iPadやiPhoneの中にあるデータを、インターネット上に自動的に保存するクラウドサービスの一種。
※4 iTunes U
Apple社が提供する、教育・学習向けコンテンツ配信サービス、その専用アプリ。教育機関を対象に無償で提供される。さまざまなデジタルコンテンツを活用してオンライン上に作られたコース(授業)を、iPadなどで受講できる。
※5 Shared iPad
Managed Apple IDを使った簡単な切り替えで1台のiPadを複数の子どもで共同利用が可能になる機能。

明るく開放感のある教室の中央には大型モニターがあり、それを囲むようにして子どもたちは授業を受ける

思い思いにiPadを使いこなす子どもたち

「それでは前回の振り返りから始めよう」――。

社会科の授業が始まり、堀 教諭は子どもたちに写真を1枚ずつ配って回った。教室の前方、2枚のホワイトボードの間には大型モニターが設置され、写真と同じ画像が表示されている。子どもたちはノートに貼り付けた写真を見ながら、前回の授業内容を書き出していく。

授業は、ホワイトボード、大型モニター、各自のiPadを使って進められていった。先生が質問を投げかけると、子どもたちはiPadを使って調べる。調べた結果を隣の友だちと相談し、考えがまとまったら、手を挙げて発表する。なかには自分が調べた内容をAir Play(※6)で大型モニターに映し出し、前に出て説明する子どもも。

続いてモニターに田園風景が映し出され「じゃあ、今から10分間、iTunes Uの資料を見て考えてみよう」と先生が促した。

各自が自分なりのやり方でiPadを使い始めた。まわりのお友だちに迷惑をかけないようイヤホンをして動画を見る子、Google Earthをあれこれ動かしながらノートにメモする子どももいる。

これは講義タイプの授業、すなわち教室の前に先生が立ち、教科書を読んで解説するタイプの授業とはまったく異なる。子どもたちは先生の話を受動的に「聞く」のではなく、与えられたテーマに基づき自分で「調べ」、その結果に基づいて自分なりに能動的に「考える」。自分が疑問に思ったテーマについて、自分で考える時間は、思考力を確実に育む。

※6 AirPlay
iPodなどで再生している音楽や動画を、家庭内ネットワークを経由してほかの機器でストリーミング再生する機能。

それぞれが巧みにツールを使いこなし、自由気ままに勉強しているように見えるものの、最終的には堀先生が展開する授業内容に"前のめり"になり、深く集中している様子がよくわかる

思考をドライブしアシストするクラスルームアプリケーション

ASMは、クラス運営や授業をアシストするクラスルーム(※7)も提供している。これを使えば、特定のアプリケーションの操作ができる。たとえばテキストブックやウェブサイトのページを指定し、児童のiPadに表示可能だ。

また、授業中、子どもたちの様子を見ながら先生は、ときおり自分のiPadに目をやる。クラスルームにより子どもたちが見ている画面や使っているアプリケーションを確認できるのだ。これにより子どもたちの課題への取り組み状況をチェックしながら、進捗がない子どもへの声がけなども行っていく。

「コース」と呼ばれるiTunes U上での授業プログラムは、先生の手づくり。初等部では2017年6月から、全学年でiTunes Uによるコースづくりが始まった。複数教員の協力により作られたコースは、データベースに蓄積されていく。たとえば、今年の5年生の社会科で使用したコースを、翌年は少し手直ししたり、データを最新のものに入れ替えたりといった使い方ができる。宿題提出、成績管理などに加えて、授業そのものもiTunes Uを使って組み立てられている。

※7 クラスルーム
教員のクラス運営、授業をアシストするアプリケーション。子どものiPad上で特定のアプリケーションやWebサイトを開いたり、Apple TVを使って子どものiPadの画面をスクリーンやモニター上で共有したりすることが可能。

iTunes U上での授業プログラムである「コース」は、従来の「教材」にあたる

「こうした作業は、Optimal BizとASMの連係により効率よく行えるようになりました。前年の授業データを参照しながら、手を加えていくことで授業の精度は年々高まるはずです」と、堀教諭はその将来性に期待する。

子どもたちの日々の活動記録や学習状況などは、各自のiPadを通じてiTunes U上にe-ポートフォリオとして保存され、貴重な思い出となる。

さらにiPadは、作文指導などでも活用されている。子どもたちが提出した作文に、先生がコメントを付けて返す。先生のアドバイスを参考に、子どもたちは書き直す。書き直した文章に、先生がさらにコメントをつけて……。一連のコミュニケーションは、お互いのiPad上で行われ、保護者も見ることができる。このように個々の進捗に合わせた学びが提供できる環境は、アダプティブラーニングの推進につながり、子どもたちからすれば自分の努力に対するタイムリーなレスポンスを受けることができ、モチベーションを高めることが可能だ。

ICTはこれからの学びのプラットフォーム

iPadを活用した授業の狙いは、単に情報機器に習熟することではない。子どもたちに求められるのは、考えるために道具を使いこなすこと。目的はあくまでも「頭の使い方」のレベルアップだ。先生がiTunes Uに用意した資料により、子どもたちの頭の中にさまざまな着想が生まれ、資料を調べることで、思考が紡がれていく。情報を多面的に見ながら、自分の考えをまとめ、個別にある社会現象の意味づけを、自分なりに考える。まさに子どもたちが主体となるアクティブラーニングを体現しているといえるだろう。

1時間の授業は、情報収集とその整理分析、そしてまとめで組み立てられる。まとめの段階では、誰かの発言内容がほかの子どもに「えっ!」とひらめきを引き起こし、ひらめきの連鎖が対話によって引き起こされていく。こうした、まさに「知を紡ぐ」授業は、Optimal BizとApple School Managerのベースの上で、子どもたちがiPadを自由に使える環境が整備されて初めて実現する。

Apple School Managerの導入による運用プロセス

同校では2018年度には、4年生からiPad1人1台体制となる予定で、今後はプログラミング教育にも活用する計画だ。それ以下の低学年ではShared iPadを使って、複数の子どもがiPadを共同利用して習熟度を高めていく。

「それぞれの授業ごとに明確なゴールを設定し、そこに至るプロセスを考えたうえで、資料などの教材を用意してiTunes Uに登録しておく。これを子どもたちに使わせながらただ説明するのではなく、質問することによって子どもたちの思考を促す。子どもたちが『あっ!(わかった)』と言ってくれたときは、最高にうれしいですね」と堀 教諭は確かな手応えを語った。

 ◆「Optimal Biz」についての詳細はこちら

[PR]提供: