2017年7月12日~14日、東京ビックサイトにて保健・医療・福祉分野の企画展示会「国際モダンホスピタルショウ2017」が開催された。ブラザー販売は「プリンター活用の新常識の提案」と題した“3つの新常識”を提示し、同社の複合機やラベルプリンター、モバイルプリンターなどを出展。MICTコンサルティング代表の大西氏の講演とともに新しいソリューションをアピールした。

多くの来場者でにぎわう、「国際モダンホスピタルショウ2017」とブラザー販売のブース

「2018年改定に向けて、医療ICT最新トレンド ~制度を理解し、医療現場のニーズとICTを上手に組み合わせる方法~」と題したセミナーを行ったMICTコンサルティング代表の大西 大輔氏

ブラザー販売が提案する"3つの新常識”とは?

ブラザー販売が医療業界に向けて提案する"3つの新常識"とは「会計業務でのプリンター複数台活用」、「在宅医療でのモバイルプリンター活用」、「ペーパーレス化」だという。これらの各テーマに沿った製品を展示し、医療現場を支援する活用方法について、ブース内でソリューションの説明を行うブラザー販売の平岡氏に話を伺った。

ブラザー販売ブースでソリューションの説明を行う、ソリューション推進部 医療G グループリーダーの平岡 健治氏

"新常識 1" 会計業務を止めないためのプリンター複数台体制

平岡氏はまず、クリニックをはじめとする小規模医療施設の複合機において、ブラザー販売のシェアは約3割(※)に及ぶと語った。その選ばれる最大の理由は、コンパクトさとコストパフォーマンスにあるという。

※1 エグゼメディカル社、メディキャスト社が2016年11月に合同調査。調査方法:電話アンケート 対象数:778件(有効回答数106件) 調査対象:主要都市の無床診療所(開業10年以内)

クリニックにおけるプリンター環境市場調査では、複合機を保有しているクリニックは81%、うち29.3%がブラザー販売の製品という結果が出た

クリニックにおいて、プリンターが主に利用されるのは、受付会計業務だ。しかし、スペースに限りのあるクリニックでは、設置するスペースの確保が難しい。そんなクリニックの現場では、受付カウンターの下部などに設置でき、価格も抑えられたブラザー販売の製品が支持されているわけだ。

プリンターの複数台持ちソリューションに向けた製品として展示されていたA4モノクロレーザープリンター・複合機「HL-L5100DN」と「MFC-L5755DW

さまざまな機械部品を利用するプリンターは、経年劣化などによる故障を避けることができない。しかし、どんなメーカーであっても故障時の修理には時間がかかるもの。故障した場合は窓口業務を行えなくなるわけで、その損失は非常に大きい。そこでブラザー販売は、会計業務で使用しているメインプリンターが故障した場合のバックアッププリンターとして、受付でコピーやFAX、スキャンなどで活用されている複合機をスタンバイさせるという使い方を提案している。

大西氏の講演では、実際に3台の同じプリンターを使用している事例が紹介された。そのクリニックでは3台の同じプリンターを受付や診察室、バックヤードに設置。さらに近所の家電量販店でいつでも同じプリンターを購入できるため、実質4台持ちともいえると説明した。同じプリンターであれば消耗品が共通であるため、保管場所のスペースの削減や予備を複数用意するコストを抑えられるというメリットがある。さらに、故障時にはプリンターを入れ替えるだけで復旧できるため、業務を止めない運用が可能になるという。

A4モノクロ/カラーレーザーや、A3・A4インクジェット複合機などさまざまなプリンター・複合機を取り扱っている同社ならば、業務の規模に合わせた製品を選択できる。とくにFAXを搭載した複合機は、クリニックに根強い需要がある。また、今年6月末に発売されたばかりのA4カラーレーザー複合機は、患者様への説明資料や検査結果の印字といった視認性の求められる場面での需要があるという。

7インチディスプレイが使いやすいA4カラーレーザー複合機「MFC-L9570CDW」と、低ランニングコストが魅力のA3インクジェット複合機「MFC-J6995CDW

"新常識 2" 在宅医療で活躍するモバイルプリンター

超高齢化社会に進んでいる日本では、医師が患者様宅を訪問する「在宅医療」が重要視されている。その中においては、医療のICT化と医師、看護師、介護福祉士などの医療従事者の連携がポイントになると平岡氏は述べる。そのような状況にあって注目されているのが、現場での業務効率化だ。

現場で診療業務を完結させるためにブラザー販売が提案する"新常識 2" が「モバイルプリンターの活用」だ。例えば、患者様の容態の変化により処方箋の再発行や、他院への紹介状の発行が必要になった場合、モバイルプリンターを活用すれば患者様宅で電子カルテに接続してその場で印刷し完結できる。また、別の用途では、医師が患者様の容態などをカルテで印刷して渡しておくことで次にその患者様を訪問した医療従事者や、患者様のご家族との間で情報を共有できるというメリットもある。展示されていた「PJ-763MFi」は感熱方式を採用しており、コンパクトサイズで軽量、インク切れの心配もないため、現場に気軽に持っていけるという。

在宅医療の現場で処方箋や紹介状などを印刷できる、感熱モバイルプリンター「PJ-763MFi

"新常識 3" ペーパーレス化を実現するユニークな機能

電子カルテの導入が進み、ペーパーレス化は着実に進行している。すでに院内での資料の閲覧にタブレット端末を利用している病院は多く、ブラザー販売が医療分野にドキュメントスキャナーや複合機を提案しているのもこのような資料の電子化という背景があるからだろう。大西氏の講演では、来たる将来に向けた電子カルテ導入とペーパーレス化の重要性が説明された。

管理の面でも、ペーパーレス化の恩恵は大きい。例えばFAX一つとっても、ブラザーの複合機に搭載された「ファクス to Eメール送信」を使うことで、外出先で届いたFAXの閲覧が可能だ。また、「PCファクス受信」機能では、受信したFAXをPCで確認できる。どちらも、受信したFAXを印刷せずに確認して必要なものだけ印刷でき、無駄な印刷をせずに済むため、用紙や消耗品の削減ができる。また、広告FAX対策にも有効だ。

さらに、受付業務では、スキャンした紹介状や保険証などを直接指定したフォルダに保存できる。この「スキャン to ネットワーク」機能は、スキャナーや複合機に指定の保存先を登録しておくことによりドライバーレスで利用が可能となる。こういったネットワークや各種端末を活用したペーパーレス化は、電子カルテと連携することでより力を発揮するという。

A4モノクロレーザー複合機「MFC-L5755DW」(左)、ドキュメントスキャナー「ADS-3600W」(中央)。お気に入りに必要な機能だけを登録しておくことで、操作ミスを防ぐこともできる