交通・物流の要となる高速道路。その運営をITで支えているのが、NEXCOシステムズだ。グループ唯一のIT専門会社として、通行料金の計数管理業務、会計・給与・人事などの基幹業務などに関するシステムの開発から運用までを一手に担っている。

タブレット(iPad) ・スマートフォン(iPhone)とクラウドを利用して構築されている交通巡回記録システム「パトレコ」も、同社が手がけたシステムのひとつだ。事故・事象(落下物や障害の発生)への迅速な対応に貢献し、パトロール隊の作業効率化に貢献している。

従来の高速道路パトロール隊の業務は、多くが紙で管理されていた

iPad、iPhoneで使用できる交通巡回記録システム「パトレコ」により、パトロール隊の作業が効率化されている

高速道路事業という公共性の高い分野でタブレットをどう活用しているのか。また「パトレコ」の運用にあたり、タブレットのセキュリティ確保と管理の効率化のために同社が活用するMDM(Mobile Device Management/モバイルデバイス管理)ツール「MobiConnect(モビコネクト)」をなぜ採用したのか、導入の効果にはどういったものがあるかについて、NEXCOシステムズの担当者に語ってもらった。

交通巡回記録システム「パトレコ」の開発で、現場の作業を大きく効率化

まずは「パトレコ」の概要を紹介しよう。高速道路を巡回するパトロール隊には、「パトレコ」アプリをインストールしたiPad・iPhoneが渡される。アプリには巡回中の通常報告(巡回地点の通過時刻、混雑状況など)を入力する以外に、落下物や事故現場に遭遇した場合に、その状況をメモする機能も搭載されている。危険を伴う現場での手間を極力省けるよう、主だった入力事項は選択式になっており、フリーハンドで「メモ」できる音声入力にも対応している。iPad・iPhoneで撮影した現場画像・動画を添付することも可能だ。

現場で入力されたデータはクラウドサーバに保存され、事務所・道路管制センターでも現場の最新の状況を確認できるようになっている。道路管制センターでは直接現場を確認することができないため、写真・動画で現場の状況を把握することができるようになり、より的確な指示を出すことが可能となっている。

「パトレコ」は、巡回車の乗務員が事務所に帰った後で行う作業にも活用されている。乗務員は巡回記録簿、業務日誌、運転日報、月次・年次の報告書などを作成する必要がある。これらの報告書には内容に多くの重複があるが、クラウドサーバに蓄積されたデータを呼び出して利用できることで、再入力の手間と時間が省け、転記ミスもなくなる。

「パトレコ」の活用により、現場業務の工数が大きく削減できる

事務作業のペーパーレス化を目指し、開発をスタート

NEXCOシステムズ 関連事業部長 井出 哲朗氏

実は「パトレコ」導入前は、報告書も現場でのメモもすべてが手書きで、パトロール隊の事務作業はかなり煩雑だったという。日報に一度書いたことを月報や年報に書き直したり、路上障害物一覧表に転記したりといった重複作業が必要なうえ、すべてが紙の帳票なので、管理者がデータ検索を行うこともできない状況だった。NEXCOシステムズはそこに注目した。同社 関連事業部長の井出 哲朗氏はこう語る。

「こうした課題をタブレットとクラウドで解消できるのではないかと考えたのが、『パトレコ』開発のきっかけです」(井出氏)

プロトタイプが完成したのは2013年。そこから現場のニーズに応えて改良を重ね、2014年5月に本格稼働を開始した。以降、上述の通り現場状況の即時把握、事務作業の効率化といった成果があがっているほか、蓄積されたデータから事故や落下物が多いエリアを割り出し、巡回重点地域を設定するのにも役立てられているという。

現在「パトレコ」アプリをインストールしたiPad・iPhoneは合計300台、2017年中には東日本・西日本エリア全域のパトロール隊で導入される予定だという。

「パトレコ」データを利用し、事故・落下物の多発エリアをヒートマップで可視化することもできる

セキュリティ確保や運用の効率化に必要なMDM

「タブレットを利用したシステムの開発にあたって、特に重視したのがセキュリティです。現場には情報の取り扱いに慣れていないスタッフもいますし、端末を落として紛失したり盗難に遭ったりした時のことも考慮しなければなりません。ですから『パトレコ』にMDMを追加することは必須事項でした」(井出氏)

数社のMDMツールを比較した結果、同社はインヴェンティットが開発・販売するSaaS型のMDMソリューション「MobiConnect」の採用を決めた。「MobiConnect」はiOS、Android、Windows、Mac OSの各種OSに対応し、国内MDM市場でトップクラスのシェア誇っている。その大きな特長は、セキュリティを実現する力だ。

たとえば「MobiConnect」には、MDMとして一般的なセキュリティ機能が搭載されているだけでなく、ユーザーが勝手に端末のMDM構成プロファイルを削除できないような独自設計が施されている。プロファイルが削除された端末はMDMの管理下から外れるため、不正利用されてもそれを防ぐことはできないが、「MobiConnect」にはそうしたリスクがない。万が一、紛失・盗難があった際には「紛失モード」が用意されており、遠隔操作で端末を強制的にロックしたり、位置情報を取得したりすることができる。

遠隔地のタブレットへの業務アプリ配信も効率化

MobiConnect導入によるメリットとして、まず『パトレコ』アプリを各モバイルに配信する際に使える機能があげられる。パトロール隊は24時間365日稼働しており、配信が緊急対応の邪魔になってしまうことは避けなければならない。MobiConnectは、端末のユーザーが意識することなく業務アプリの配信・アップデートを行えるサイレント方式と、通知をユーザーがタップするまでアップデートがはじまらないIVI MDM方式のどちらの配信方式も使用できる。同社ではIVI MDM方式を活用することで、管理の面でも安全確保の面でも、非常に役立っているという。加えて、同社の関連事業部 関連事業開発課 前田 高太郎氏はMobiConnectのさらなるメリットについてこう説明する。

NEXCOシステムズ 関連事業部 関連事業開発課 前田 高太郎氏

直感的に使え、運用者が多くても安心

「『パトレコ』アプリを導入した多くのタブレットを管理するには、パトロール会社それぞれの管理担当者にも権限を付与する必要がありますが、MobiConnectでは階層的に細かくポリシーを設定できるので、その点でも使い勝手がいいと感じました」(前田氏)

またUIの使いやすさも高評価のポイントだ。直感的に操作できるUIにより、設定につまずくところはなかったという。同社は以前、道路保全や調査の現場に直接出勤するスタッフの勤務管理にもiPadを導入し、その統制を他社のMDMで試してみたことがあるという。前田氏はその際の状況をこう語る。

「当時利用したMDMは、設定方法が分かりにくく、運用に多くの人が携わることを考えると学習コストが高くつく懸念がありました。そこで最終的には『パトレコ』で実績の出ていたMobiConnectを採用することにしました。今のところ、現場から使い方に関して問い合わせがくることはほとんどありません。誰でも簡単に使いこなせているということでしょう」

勤務管理に利用されているiPadは約60台(平成30年度に550台を想定)あるが、「MobiConnect」を通じて勤務管理アプリしか使えないよう一括設定されている(※)。これにより現場スタッフの情報リテラシーのレベルを考慮したり教育を行ったりしなくても、安心してタブレットを貸与できるというのも、管理側の大きなメリットだ。

(※)Single Appモード設定機能。監視モードのiOS端末に対してSingle App モード設定を 遠隔操作で適用し、単一アプリしか利用できないよう制御できるp>

蓄積したデータを未来の安全・安心へつなげていく

NEXCOシステムズでは、強固なセキュリティを実現する「MobiConnect」を利用し、これからも幅広い業務にモバイル端末を活用していく考えだという。最後に、今後の計画と抱負を聞いた。

「トンネルや橋梁の保守作業などには、音声やモーションで操作できる眼鏡型のウェアラブル端末の利用が考えられます。フリーハンドで入力したり、過去のデータをウェアラブル端末内で参照したりできるので、作業の安全性も効率も高まるでしょう。『パトレコ』では車載センサやIoTデバイスでコースの形状や路面状況などの情報を大量収集し、事故・落下物のデータと組み合わせてAIで分析、危険度を高めている要因を見つける仕組みづくりを検討しています」(井出氏)

蓄積したデータを未来の安全・安心につなげていくこと。NEXCOシステムズはグループ会社をITの力でサポートし、このミッション実現に向けて邁進している。

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