近年、ICT分野において特に注目度が高まっているキーワードといえば「IoT」だろう。しかし、実際にビジネスとして活用するためには、技術面やコスト面において、さまざまなハードルが存在するのも事実である。 「そんな高いハードルも、みんなで力を合わせれば突破できる!」と高らかにうたいあげたのが、2017年5月26日 東京渋谷にて開催された「IT・WEBソリューションセミナー 特別編」(主催カゴヤ・ジャパン)だ。 当日は、「ビジネスパートナー懇親会」との二部構成だったこともあり、多くのパートナー企業が参加。その結果、今後に向けての決起集会のような活気溢れるセミナーとなった。 本記事では、IoTのビジネス活用についてさまざまな可能性が語られた、同セミナーの模様をレポートする。

IoT成功のポイントはエコシステムの実現

まず、最初のセッションに登壇したのは、IoT通信プラットフォームSORACOMを提供する、ソラコムの執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山 暁雄氏。IoTに特化した低価格の料金体系とWebブラウザやAPIによる操作性、セキュリティやクラウド連携のサービスをするMVNO(仮想移動体通信事業者)として大きな注目を集めるソラコム。片山氏によると、すでに数多くの企業が同社のシステムを利用してIoTをビジネスに活用しているとのことだ。

「なぜ今、IoTが盛り上がっているのか。それはクラウドやハードウェアの進化による影響が大きい」と片山氏は語る。

ソラコム 執行役員 片山 暁雄氏

IoTのビジネス活用には、アイデアをいろいろ試してみて、そこから仮説検証を回す、という流れが不可欠。だが不確定要素が多いIoTの仮説検証に、予算も人的リソースも簡単にはつぎ込めない。「IoTは、クラウド、デバイス、通信、セキュリティとさまざまな技術が関わるため、『テクノロジーの総合格闘技』のようなものです。それを一社だけでまかなうのは非常に難しく、その結果IoTは予算が潤沢で複数の独自技術を持つ、一部の大企業以外は手を出せない状態となっていました」(片山氏)

だが近年、クラウドの普及やハードウェアの進化によって、仮説検証を回しやすい環境が整いつつある。例えば、クラウドの普及によりスモールスタートが可能となり、小型で安価なPCの登場によりプロトタイピングも容易となった。そして、このように「失敗のコスト」が低くなれば、初期投資のハードルを越えられずIoT活用のアイディアに挑戦しづらかった中小・中堅企業や、まだ予算を確保できていない新規事業やスタートアップも、気軽にIoTのビジネス活用に挑戦しやすくなる。

「ソラコムでは、これまでに6,000を超えるお客様にIoT通信サービス基盤を提供してきました。ですが、私たちが提供できるものは、基本的に通信基盤だけです。そのほかの技術は、パートナー様によって提供されています。1社の技術だけでは難しくても、いくつかの企業が技術を持ち寄れば、さまざまな組み合わせが可能となります。その組み合わせの中には、大きなチャンスを掴むサービスが潜んでいるかもしれません。可能性は無限大にあります。是非、日本からグローバルに通じるたくさんのIoTプレイヤーが生まれることを願っています」と片山氏は締めくくった。

パートナーと共にIoTの海へ繰り出すための「IoTサービス支援基盤」

続いて登壇したのは、カゴヤ・ジャパン 企画部 チーフ・プランナーの鶴岡 謙吾氏である。 まず、鶴岡氏が紹介したのは、Japan IT Week春 2017(5月10日~12日)にて、「オフィスのIoT」をテーマに同社が展示した「来客対応システム」のデモだ。

カゴヤ・ジャパン 企画部チーフ・プランナー 鶴岡 謙吾氏

この来客対応システムは、受付にスマートフォンとタブレットPCを設置。顔認識によって来社履歴を検索して担当者のPCに来訪を通知する。もし来社履歴がない場合は名刺をスキャンして取り込み、顔写真と紐づけるという仕組みだ。 担当者側には「来客に紐づいた書類の表示」、来訪者側には「受付票記入の手間省略」という、双方にとってメリットのあるシステムであり、展示会場でも多くの人の注目を集めていた。

来客対応システムの仕組み(左)と当日のデモの様子(右)

ただ、鶴岡氏によると「展示の目的は来客対応システムをPRしたいから、ではない」という。 「来客対応システムは、あくまでも一例です。私たちの目的は、このような新しいIoTの仕組みを、パートナーの皆さんとともに生み出していくことであり、そのための基盤を提供することです」と同氏は語った。

カゴヤ・ジャパンが提供する「IoTサービス支援基盤」では、機械学習、音声・画像認識、自然言語処理など、IoTに必要とされるさまざまな技術が、それぞれ1つのパーツのように用意されている。それをブロックのように組み上げることで、簡単にIoTのサービスを構築できる。 ちなみに来客対応システムは、カゴヤ・ジャパンの技術スタッフが、わずか3日で作り上げたそうだ。一方で、パーツとなる技術の多くは、カゴヤ・ジャパン独自のものではなく、パートナー企業から提供されたものだ。

鶴岡氏は「IoTのビジネス活用には、アイデアを形にして試す仮説検証の実践が不可欠です。このIoTサービス支援基盤であれば、非常に簡単に、しかも自社が持たない技術も組み合わせた、サービスの構築が可能です」と講演をまとめた。

これまで、IoTの海を渡るには、さまざまな技術やサービス、そして資金力を持つ大企業でなければ難しいとされてきた。それはいわば、巨大な豪華客船のようなものである。小さな船では、荒波に揉まれて沈んでしまう可能性が高い。だが、小さな船であっても、それが船団であれば、互いに協力しあって海を渡ることも可能だ。セミナーで行われた両名の講演からは、そんなメッセージが感じ取れた。

なお、同セミナーでは、協業パートナーとともに生み出した、新たなサービスの紹介も行われた。それらについて下記にて簡単に紹介する。詳細については、それぞれのURLを参照していただきたい。

在庫管理クラウドサービス with 五感箱

フリービット株式会社との協業によるサービス。Wi-Fiで簡単に接続できるフリービット社のカメラ「五感箱」を用いて、クラウド上で画像認識を行う在庫管理サービスを提供。小規模店舗におけるバックヤードで商品の在庫が一定量を下回った場合に通知。


Forguncyクラウドサービス

グレープシティ株式会社との協業によるサービス。EXCEL資産を120%活かせるWebアプリ作成ツール「Forguncy」をクラウドにて提供。


Tibero RDBMSクラウドサービス

日本ティーマックスソフト株式会社との協業によるサービス。オラクル互換で、かつ料金に優位性があるRDBMSのクラウドサービスを提供。


[PR]提供:カゴヤ・ジャパン

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