ITコミュニケーションツールの開発を手がけるネオジャパンが主宰となって、本年4月に発足したばかりの「めんどくさい研究所」は、一般参加型の労働環境改善活動サークルだ。

参考:
面倒くさい仕事は無くなるか? - オトナのサークルによる研究

公募で集まった研究メンバー(一般会社員)が、業務の面倒なこととその改善策・解決策を議論し、効率的・効果的な働き方を模索することを目的としている。 その「めんどくさい研究所」の第2回目となるオフライン・ミーティングが、6月某日、東京・代官山で開催された。

当日はミーティングに先立ち、「めんどくさい研究所」の特別研究員・木暮 太一氏(経済入門書作家・TVコメンテーター)とネオジャパンの山田 志貴氏、マイナビニュース 企業IT編集長 丸山による「研究所」創立記念トークセッションが行われた。本稿ではセッションおよびミーティングの概要をレポートする。

トークセッションは、マイナビニュース 企業IT編集長 丸山から質問を投げかける形式で進められた

「めんどくさい研究所」その目的と活動内容

株式会社ネオジャパン マーケティング統括部 プロダクトマーケティング マネージャー 山田 志貫氏

トークセッションでは、まず、ネオジャパンの山田氏から「めんどくさい研究所」起ち上げの背景と活動内容が紹介された。

「ある調査では、今の仕事にやり甲斐を感じつつ、働き方には不満を抱いている人が50%にも上るという結果が出ています。『割り込みで依頼される業務が多い』『社内に無駄なルールが多い』といったことが原因で、本来の仕事に集中できないというのが、その理由のようです。政府も働き方改革を打ち出していますが、企業に『社員の長時間労働を是正しなさい』と言っているだけ……という印象です。そんな中、現場の社員は、会社が働き方を変えてくれるのを待っているだけでいいのだろうか、何かできるのではないだろうかと考えて起ち上げたのが、『めんどくさい研究所』です」(山田氏)

研究メンバーへの応募に年齢制限はないが、現在の組織に入社・配属されて5年以内の一般社員」、つまり職場に染まりきっていない人であることを条件としている。面倒なことを、「うちの会社の文化だからしょうがない』と我慢するのではなく、きちんと考えて、変えることができないか悩んでみようというのが、同研究所の活動内容といえるだろう。具体的には、オンライン・チャットやオフラインでのミーティングを通して、特定の「めんどくさい」ことの解決策を模索し、後日、その実践結果をオンラインでメンバー同士がシェアするという流れで進められる。

まずは自分ひとり、簡単なことから始めてみる

経済入門書作家・TVコメンテーター木暮 太一氏

一般的に、働き方改革はトップダウンで進められることが多い。「効率化や生産性の向上など、働き方改革はトップダウンというイメージがありますが、(研究所で目指しているように)ボトムアップで改革を成功させるには、何から始めるのがいいのでしょう」との丸山氏の問いに、木暮氏は自身の経験を交えてこう語った。

「僕自身が会社員時代にやっていたのは、ゲーム感覚で目標をつくって、自分だけで働き方を変えるということです。例えば『30分早く帰ろう』という目標を決めたら、そのために何が削れるかを考えて実行し、まず自分が早く帰ってみせる。上手くいくようなら、部下や後輩にも同じことを指導していきます。それで部下も早く帰れるという結果が出たら、その仕事のやり方を勤務時間の短縮方法として上司に提案するわけです。個人で始めたことが、やがて組織全体を変えるかもしれないと考えると面白いですよね」

ではどんな業務が削る対象となりうるのだろうか。氏がかつて在籍していたサイバーエージェントでは、定期的に業務の見直しがトップダウンで行われていたという。定例会議や朝礼などが本当に必要なのかを考え直し、意味がなければ即座に廃止するのだ。

「これと同じことを自分の中でもやってみればいいのです。いつも送っているそのメールは本当に必要なのか、ここでコミュニケーションを取る時間が必要なのかなどを考え直す・・・・・・当たり前を疑うことが重要です」

「自社の当たり前」は、本当に当たり前?

木暮氏は当たり前を疑う方法として、他の会社の人と「自社での当たり前」を比較することを奨める。例えば「30分早く帰る」という目標を立てたにもかかわらず達成できなかった場合、その理由を他社の人に「言い訳」してみるのだ。こうすることで「言い訳」の中に潜む自社特有の無駄を指摘してもらえたり、より効率的な「他社の当たり前」を知ったりすることができる。「自分が常識と思っていることを疑うには、他社がやっていることを採り入れてみるのが一番分かりやすい方法だと思います」と木暮氏は語る。

山田氏からは、労働環境の改善活動を社内で浸透させるには、横のつながりを大切にして欲しいとのアドバイスがあった。

「会社組織は縦割りになっている場合が多く、各組織が自立するにつれ、横のつながりが弱くなってしまいます。自身で始めた働き方改革が上手くいったら、ぜひその成功体験を同僚や同期の人と共有してもらいたいですね。皆さんの世代から会社を変えていくきっかけとして、当研究所が役に立てれば嬉しく思います」

会議の目的を分類・定義する

トークセッションに続いて開催されたオフライン・ミーティングには、研究メンバー8名が参加、特別研究員の木暮氏を交え、「会議ってめんどくさい」をテーマに活発な意見交換が行われた。

オフライン・ミーティングの様子。参加者の業種、職種はさまざまで、中には「ユーザーのリアルな課題意識を知りたい」という意図で参加するIT部門の姿もあった

最初に、事前のオンライン・ミーティングで抽出された「会議のめんどくさい」が改めて発表された。特にメンバーたちの共感を集めたのが、「会議参加者の当事者意識が欠如している」「参加者の役割が明確でない」という意見だ。これらを回避する方法として、「あえて会議のための会議を企画して、反対派への対策を練る」「社内説得のための台本を用意する」などの策が採られているとの報告があり、綿密な下準備や普段からの意志共有があると、会議は効果的になるとの意見が出された。

普段、必要がないと判断した会議や打ち合わせには参加しないという木暮氏からは「会議を分類・定義すると、その目的が明確になる」とのアドバイスが出された。人が集まって話し合う場をすべて「会議」という認識でまとめてしまうのではなく、それが「報告会(情報の共有)」なのか「アイディアを出すブレストの場」なのか「決断の場」なのか定義して臨めば、自ずと進め方が見えてきて、まとまりのない「会議」が減るということだ。

それぞれが自分の役割を果たせば、会議はスムースに

同時に、会議で誰がどんな役割を果たすべきなのかも明らかにしておくべきだと、木暮氏は言う。氏はそれを裁判に例えて説明した。仮にA案かB案かの決断を下す会議の場合、出席者には「A案を推す検事」「B案を擁護する弁護士」「判決に必要な情報を持っている証人」「最終的に判決を下す裁判官」の役割が必要となる。

「各自が自分の役割だけを果たし、それ以外のことには口を出さないよう決めておけば、船頭が何人も出てきて会議が紛糾することもなくなるでしょう。また自分の果たす役割が見いだせない会議に呼ばれた時は、『役に立てないから』という理由で、出席を断ればいいのです」(木暮氏)

このアドバイスに研究メンバーは目から鱗が落ちたようで、「分かりやすい」「自分のスタンスをしっかり把握していれば、会議への参加も有意義になるし、逆に面倒な会議からは開放されそう」「裁判システムの会議を行えるような社内風土をつくっていきたい」と、実践への意欲が語られた。今後はそれぞれがこのアイディアを自社へ持ち帰り、実行するフェーズに入る。実行した結果は、引き続きオンライン・ミーティングでシェアされる予定だ。

製品開発も研究所設立も、目的は「現場のため」

このように現場からの働き方改革を推進している「めんどくさい研究所」だが、ITツールの開発企業であるネオジャパンが、人材の啓発という分野に踏み込んだ理由は何だろうか。ミーティング終了後、改めて山田氏に聞いた。

「『めんどくさい研究所』の目的は、現場の業務改善にあります。アプローチは違いますが、我々が開発・提供するITコミュニケーションツールも、現場を支援するという目的では同じなのです」

同社の直接的な顧客は情報システム部門が多いものの、常にその先にある現場のことを意識した開発が行われているという。例えば多くの企業で、コミュニケーションや各種申請を円滑にするためにグループウェアが採用されているが、ネオジャパンのグループウェア「desknet's NEO」は、現場主義を重視して開発されている。


ITが現場の効率化を妨げないために

ITを利用するうちに事業規模が拡大して、ユーザーや登録されたデバイス、現場で必要とされるアプリの種類などが増加する。その結果、情報システム部門など限られた人員ですべての運用・管理するのが困難になるというのは、しばしば耳にする話だ。そうなってしまうとシステム管理者としては自分たちの目が行き届くよう、ツールに厳しい利用統制を敷かざるをえなくなる。結果としてそのツールは現場にとって使いにくいものとなり、効率化を妨げる一因となってしまうことがある。

しかし、「自社で採用しているツールが窮屈だから」という理由で各部署が独自にクラウドサービスを契約したりLINEを利用し始めたりすれば、コスト面だけでなく、セキュリティ・リスクなど悪影響を生み出してしまう。

「こうした問題を避け、安全に現場の業務を支えるために、当社のソリューションには、"機能を切り分けて現場に貸す"ための仕組みを盛り込むようにしています」(山田氏)

氏の言う"切り分けて現場に貸す"とは、全権を情報システム部門で統制しつつ、各部署の部門長や特定の社員にも、一定の権限を委ねることを指す。同社が提供するグループウェア「desknet's NEO」や、ビジネスチャットツール「ChatLuck」は、柔軟にポリシーを設定できる機能を搭載することで、これを可能にしている。

「許可された範囲内で、それぞれの現場に最適な方法で自由にツールを活用できるようになるので、業務改善や働き方改革にお役立てていただけるでしょう。また細かい管理を各部署に任せることで、システムを管理する側の負担も軽減できます。当社のような製品を選定いただき、ぜひ、『うちのITは使えるね』とユーザーに感じていただけるIT部門を目指してほしいですね」(山田氏)

提供する製品だけでなく、「めんどくさい研究所」という角度からも「現場を支援する」という姿勢を一貫するネオジャパン。働き方改革が社会的ニーズとして大きくなりつつある中、同社の取り組みの重要性は今後大きく高まっていくだろう。

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